2025/03/05

eスポーツ専門の学校生活とは? 高校生NO.1チームにインタビュー

生徒・先生の声 

12月に開催されたNASEF JAPAN/ナセフジャパン(特定非営利活動法人国際教育eスポーツ連盟ネットワーク 日本本部)が主催する高校生の大会「第2回 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権」。全5部門のゲームタイトルで競うこの大会には、通信制高校のチームも数多く出場しています。

この5部門のうち、「Apex Legends(エーペックス レジェンズ)」と「ストリートファイター6」の部門で優勝したのが、eスポーツ高等学院のチームです。2022年4月に東京・渋谷で開校したeスポーツ高等学院は、中央高等学院を運営する株式会社ディー・エヌ・ケーと株式会社NTTe-Sportsが産学協同で創り上げた、日本初eスポーツ専門スクール(通信制サポート校)。
基礎授業は広域通信制高校の中央国際高等学校のカリキュラムで学び、同時にeスポーツの専門教育を受けられる高校で、ゲーム好きな生徒たちが多く集まり切磋琢磨しています。

今回は、この全日本高校eスポーツ選手権で優勝した2チームにお話を伺い、どのような高校生活を送っているのか教えてもらいました。

講師からのメンタル面の指導でも成長[おさかな天国]

まずは「Apex Legends」部門の優勝チーム、「おさかな天国」の3人にインタビュー。リーダーのkou_810さんは2年生。3年生のおさかなさんばさんと、1年生のugiugiiさんの3人で大会に出場しました。

左からugiugiiさん(1年)、おさかなさんばさん(3年)、kou_810さん(2年)

—— みなさんは、どうして進学先にeスポーツ高等学院を選んだのですか?

おさかなさんばさん:僕は当校の1期生になるんですが、進学先を考えているときにたまたまチラシを見て、ゲームが好きだったので入学したいと思いました。親も賛成してくれました。

kou_810さん:僕も広告を見て知り、入学を決めました。僕の場合は親が反対したのですが、やりたいことがゲームの他になかったので、親を説得して進学させてもらいました。

ugiugiiさん:同じく、ゲームが好きだったのでここを選びました。僕の場合はTikTokを見て知りましたね。

—— 入学してみて、実際の学校生活はいかがですか? 家でゲームをするのとは違うのでしょうか?

おさかなさんばさん:プロゲーマーの先生がいて、いろんな視点からゲームのアドバイスをもらえるので、上達すると思います。

—— 先生からは、具体的にどういったアドバイスをもらうのでしょうか。

ugiugiiさん:僕は大会に向けて、メンタル面で指摘されることが多かったですね。普段はとにかく前に前に進むスタイルなのですが、一度ミスなどをしてメンタルが落ちると、そのままとことん落ち続けてしまうんです。そこを先生に指摘されて、かなり改善できたと思います。

kou_810さん:僕もメンタル面ですね。試合中に、ついチームメンバーの士気を下げるネガティブな発言をしてしまうことが多く、よく注意されました。

おさかなさんばさん:僕は、他のメンバーの話をよく聞いてサポートしてあげてね、という感じでしたね。

—— 技術面よりも、チームの中でどう振る舞うかのアドバイスが多いんですね。社会に出てからも役立つアドバイスだと思います。普段の学校生活は、どんなスケジュールになっているのでしょうか?

おさかなさんばさん:朝からお昼までは中央国際高等学校の校舎で授業を受けます。その後、午後からeスポーツ高等学院の校舎のeスタジアムに移動して、2〜3時間ゲームをして終了です。

—— ゲームと両立しながら、基礎授業についていくのは大変ではないですか?

おさかなさんばさん:通信制高校ですが毎日通えますし、授業もわかりやすく、わからないところは聞けばその都度先生が教えてくれるので、勉強については安心です。僕は大学に進学する予定ですが、進路サポートも充実していますよ。

ugiugiiさん:丁寧にサポートしてもらえるので、授業はそんなに大変ではないと思います。僕は追試を受けましたが、進級は大丈夫です!

kou_810さん:カリキュラム含め、自分で何をするか決められることが多いので、学校は楽しいです。でも、一般的な高校の文化祭のようなキラキラしたイベントは少ないので、そういう高校生活を求めている人にはあまり向いていないかも……。

—— 文化祭がないんですか?

kou_810さん:あるんですが、教室に遅くまで残って、何日もみんなで準備をするといった青春っぽいものはないかなと……。1年生のときには臨海学校があって千葉の御宿(おんじゅく)に行ったのですが、それは楽しかったですね。でも、eスポーツ高等学院は一般的な高校生活を楽しみたい人よりも、ゲームが好きでゲームに集中したい人に向いているかなと思います。

ugiugiiさん:ゲームで強くなりたいという気持ちを強く持っていないと、やめてしまう人もいますよね。ゲームが本当に好きなら、楽しく通えると思います。

—— 強くなりたいというモチベーションがある生徒には、とてもいい環境だということですね。大会に出るに当たって、チームはどのように決められるのでしょうか。

おさかなさんばさん:実は3人とも、最初は大会に出るつもりはなかったんです。出るなら絶対に勝ちたいけれど、組む相手がいないと思っていて。

kou_810さん:このチームは夏の終わり頃に先生に提案されて決まって、すぐに10月の予選に出場することになりました。技術が突出しているオールラウンダーのおさかなさんばさんがリーダーシップをとってくれて、優勝することができてよかったです。

—— チーム結成についても先生方のサポートがあるんですね。今後の進路はどのようにイメージしていますか? おさかなさんばさんは大学に進学ですよね。

おさかなさんばさん:はい。推薦入試に合格して、大学進学が決まっています。その先のことはまだ決めていませんが、将来、就職してもゲームは続けていきたいです。

kou_810さん:僕も大学に進学したいですね。大学に通いながらゲームは続けたいですし、プロになりたい気持ちもあります。ただ、そんなに甘くないと思うので、もし他にやりたいことが見つかればそれを頑張るのもいいと思っています。

ugiugiiさん:まずは今年3月にもうひとつ大会があるので、そこで優勝したいです。卒業後は、大学に行けるなら行きたいですね。ゲームは続けます!

—— みなさんゲームへのモチベーションが高く、まだまだ成長していけそうですね。ありがとうございました。

帰宅後もゲームをしながら電話でおしゃべり[あしゅまるの伝説]

次は、「ストリートファイター6」部門で優勝した「あしゅまるの伝説」の3人です。大将は3年生のあしゅまるさん、中堅を同じく3年生のmituemaさん、先鋒を2年生のokenochiさんが務めました。

左からokenochiさん(2年)、あしゅまるさん(3年)、mituemaさん(3年)

—— まずは、高校進学をどのように決めたのか教えてください。

あしゅまるさん:中学生のときにちょうどeスポーツが注目され始めていて、親がいろいろ調べてくれた中にeスポーツ高等学院がありました。以前からゲームが大好きだったので、ここがいいのでは? と勧めてくれたんです。それで学校説明会に行ってみたところ、そのときの面談で「君みたいな子を待ってたんだよ!」と言われて、進学を決めました。

mituemaさん:僕も親が勧めてくれましたね。ずっとゲームに熱中していたので、「いいんじゃない?」と。

okenochiさん:僕は群馬県に住んでいるのですが、実は地元の高校を受験して合格していたんです。でも合格後にこの学校を見つけてしまって、「ここに行きたい!」と思って親に頼み込んで進路変更しました。

—— では、群馬から通っているのですか?

okenochiさん:はい、片道2時間半くらいかけて通っています。でも授業が始まる時間が一般的な全日制の高校よりも少し遅いので、そんなに早朝に出発しなくてもいいんですよ。

あしゅまるさん: okenochiは授業が終わったらすぐ帰るんです。僕たちは授業後にeスタジアムで2〜3時間ゲームをしてから帰るので、ちょうど帰宅する時間が同じになって、お互いに家でゲームをしながら電話したりしています。

—— 仲がいいんですね!

okenochiさん:学校ではFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)をする生徒が多くて、大会で勝つにはライバルがすごく多いんです。どうしようかなと思っていたときに、端っこで「ストリートファイター6」をしている人がいて、その中にいたのがこの2人でした。

mituemaさん:僕もFPSをずっとプレイしていたんですが、あまり伸びなくて、このまま続けても大会は難しいかなと思っていたんです。それで、前からストリートファイター5をやっていたこともあって、ストリートファイター6をメインに挑戦してみようと考えるようになりました。

—— 「Apex Legends」のようなFPSと、格闘ゲームとでは、チームの考え方が違うんでしょうか。

あしゅまるさん:FPSは完全にチームプレイということもあって、うまくいかないときに他責思考になってしまうことも多いんです。でも格闘ゲームはそれぞれ個人で戦って、最後に大将が勝てるかどうかでチームの勝敗が決まります。負けても自分の責任でしかないというのが、違うところだと思います。

mituemaさん:先鋒、中堅は自分が勝つのは大前提として、大将を信じてバトンタッチするだけです。

—— 大将戦の前に勝たなくてはいけないというプレッシャーもありますよね?

okenochiさん:僕たちのチームは校内の上位3人で組んでいて、実力的には負けない自信はありました。でも、緊張はしましたね。

あしゅまるさん:大会のときには先生がついてきてくれて、セコンドとしてたくさんアドバイスをくれたんです。客観的な視点で「もっとこうしたほうがいい」と言ってくれて、助けになりました。

—— 先生のサポートが厚いんですね。普段の学校生活はどうでしょう。進学を考えている中学生におすすめのポイントはありますか?

あしゅまるさん:学校でゲームができる分、夜の睡眠時間がしっかりとれますし、プロの講師陣に教えてもらえることで、ゲーム関係のいろいろな人脈もできます。ゲームでプロの道を考えている人にはよい環境だと思います。

mituemaさん:他の高校を知らないので何とも言えないですが、そんなに提出物に追われることもなくゲームに集中できる環境です。ただ、ゲーム以外の勉強の時間は少ないと思うので、勉強よりもゲームに価値があると本気で考えている生徒に向いているのではないでしょうか。

okenochiさん:各ゲームにプロの講師がついてくれるのは、大きなアドバンテージですよね。他の高校と比べて規則にもあまり縛られませんし、自分のペースで通えるのがよいと思います。

—— みなさん、この先の進路についてはどうイメージしていますか?

あしゅまるさん:僕はまだ進路が決まっていないのですが、プロライセンスはとりたいと思っています。

mituemaさん:推薦入試で大学進学が決まっています。大学に行きながらでもプロは目指せるし、大学に行かない理由はないと考えて進学することを決めました。

okenochiさん:まだあまり考えていないですね。大学は行かないかもしれません。ゲームは続けたいなと思っています。

—— 進学するにしても、プロの道を目指すにしても、学校のサポートがしっかりしているのは安心ですね。ありがとうございました。

取材協力

eスポーツ高等学院
https://esports-hs.com/

<取材・文/大西桃子>

この記事を書いたのは

大西桃子
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。
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