「誰かより下な自分」が許せない そんな私が通信制高校を選んだ理由
通信制高校
不登校
2019/09/24
「通信制高校への入学は、かなりの決断でした」
現在、大学で学んだインドネシア語を生かして、現地で日本語教師のアシスタントなどを行っているmayoさんは、小学校高学年から不登校となり、その後中高一貫の私立女子中学へ進学するも再び不登校に。
中高一貫ゆえにそのまま全日制高校へ進学することもできましたが、高校は通信制高校を選択しました。
入学前は通信制高校に対しあまりいいイメージを持っていなかったため、その選択には大きな勇気が必要だったと言います。
それでも通信制高校を選んだ理由は? そしてどんな学校生活を過ごしたのでしょうか。
理由はないけど学校に行けない
── 最初に不登校になった時の話を教えてください。
小学校4年生で本当にちょっとした理由から仮病で休みはじめました。それで、お腹が痛いっていうと休めるんだってことに気づいて、クセになったんですね。
学校に行かないので基本的に家にいたんですけど、父親が突然帰ってきて学校に連れて行かれることもありました。
そうなると行かないわけにはいかないので、そういうときは別室登校をしていましたね。
── その後、私立の中高一貫校に進学されたんですよね。
はい。田舎なので中学から私立に行く子なんてほとんどいないんですが、とにかくプライドが高かったので誰かより下っていうのが嫌だったんです。あと、親としても環境を変えたら行けるんじゃないかなっていう期待もあったと思いますね。
99%が同じ中学校に進学する環境なので、それは登校するのはムリじゃないかって。
── たしかに自分の不登校を知ってる人ばかりだと行きにくいですよね。
はい、そう思って私立を選んだんですけど、入学から半年が過ぎたあたりで行けなくなっちゃいました。小学校の時はなんとなくだけど理由もあったのに、中学では本当に理由が無かったので自分でもよく分からなくて。焦りましたね…。
そこから塾に通ったり、カウンセリングを受けたり色々しましたが、たまに学校の図書館に行くくらいで結局中学時代はクラスには行けませんでした。
今の自分に合う場所って…?
── その後、なぜ中高一貫の高校ではなく、通信制高校に進学先を変えようと思ったのですか?
中学時代、学校は行かないけれど外に出ることを目的に大人も通うバレエ教室に通ってたんです。
でも最初はすっごく嫌で(笑)。
ただ、このままじゃダメだっていう気持ちと、家でずっと内省をし続けた結果、自分はなにかを我慢して乗り越えるっていう経験をすることが大事なんだと気づいたんです。それで選んだ場所がバレエ教室だったので、頑張って通っていました。
そしたら、徐々にみんなと仲良くなって、そこからは楽しく通えるようになったんです。
その体験があって、高校はレベルの高いところに行って頑張るんじゃなくて、今の自分に合う場所に入って、そこで頑張ろうっていう風に思えたんです。それで、あまりいいイメージはなかったけれど通信制高校がいいんじゃないかと思って、そこから学校を調べ始めました。
── バレエ教室での経験で考え方が変わったんですね。通信制高校はどのように選びましたか?
通信制高校の仕組みを調べるのも、学校選びも全部ネットですね。
最初は私が全部調べて、資料請求もガンガンして(笑)。それで「こういうのがあるらしいよ」って母親に資料を渡すと、それを読んでくれるんですよ。私以上にすごく真面目に読んでくれましたね。
それで、最終的に親と相談して4校くらい学校見学に行って決めました。
── 学校を選ぶ基準はありましたか?
私はどうしても、普通の生活に戻りたかったんです。だから登校回数が月に2回とかだと、それって結局家に居ることになるし、私には別に家で仕事があるとか、やりたいことがあるとかいうわけじゃなかったので、通信制だけど登校できるところで探しました。大学も行きたかったので、そのサポートがありそうなところっていうのも重要でしたね。
後は通学できるところかどうかと、先生や生徒の雰囲気で選んだと思います。
最終的には、普通の高校生活を体験できるんじゃないか、って思って、クラス制がある通信制高校に週5で通うことにしました。
―― なるほど。でも週5って、結構な負荷なような気がするのですが……。
私は週3回くらいの頻度で学校に行ってた時が、一番行きづらくて。そのイメージがあったので週3は考えていませんでした。最初に週5のコースを選択しても、次の年から登校頻度を減らすこともできたので、少し気が楽な部分もありましたね。
あとは「まあ、やってみよう」の精神っていうか。自分の中では通信制高校に行くっていうだけで、ハードルをすごく落としたんですよ。上ばっかり見てたので、週5で通うのも全然ハードルが低く思えたんですよね。
週5でも頑張れた理由
―― 実際通信制高校に入ってみてどうでしたか?
高校1年生の最初の頃はきつかったですね。すごい荒れてる人と、コミュニケーションが苦手な人が多くて。
でも、文化祭みたいなイベントがあった時に、卒業式とか始業式とか生徒が主体でする学校だったので、そのグループに入って先輩たちと仲良くなったり、途中から友達になれそうなタイプの子たちが転校してきたりして、だんだん過ごしやすくなっていった感じですね。
―― 通信制高校って、最初は良いイメージが無かったと思うんですけど、入ってみて変わりましたか?
はい、私はすごく通信制高校で良かったと思ってます。特に良かったのが水曜日がほぼ文化学習だったところですね。
それがあったから通えてたかもしれないです。月・火頑張って、文化学習は全学年が一緒だったので好きな子たちと一緒に居られるし、教室のあの狭い空間に閉じ込められなくていい。
閉所恐怖症でもないんですけど結構苦痛なんですよ、ビルの中で窓も開けられないって。だから最初のころはお昼ご飯も食べられませんでした。
── それは大変でしたね。緊張してたり、ストレスがあったりすると食欲も沸かないですよね。
はい。あとは文化学習自体も良かったです。FMのラジオ局に行ってCMを作ったり、単純に卓球とか10キロウォーキングしたりとかもしましたね。
ウォーキングは嫌でも歩かないと帰れないから辛いんですけど、それをきっかけにクラスの人とちょっと仲良くなるみたいなことがあって。そういう経験ができたのもよかったですね。
大学に行けたのは通信制高校だったから
―― では勉強面で良かったことはありますか?
通信制ってテストもレポートの中から出るんですよね。ほぼ100%。勉強さえすればちゃんと100点取れるんですよ。だから私、内申点が全日制に行ってたら絶対に取れないくらい良かったんです。
その内申点と学校生活でやったお祭りの司会とか留学経験とかのおかげで、一般入試で行こうと思っていた大学にもAO入試で入れました。
── それはすごいですね。
通信制っていうこと以上に、色んなこと頑張ってるのにこの子勉強もちゃんとやってるじゃん、と思ってもらえたんだと思います。
大学進学する子も少ないんで、高校からのサポートも大きくて、推薦書とかもかなり熱入れて書いてくれたと思うんですよね。そういう事も含めて、私は通信制高校に行って本当にすごくよかったです。
── 学力の面で、通信制高校やAO入試について不安を持つ人もいると思うんですが、そこはどうでしょう?
私いま26歳で、同年代の子たちは99%が普通に受験してるけど、一緒に働いていてAOとか一般とかで差があるようには感じないですね。
私は、高校3年間はとにかく通うことが一番で、勉強したかったら大学入ってからでもできるって思っていたんですよ。ちゃんと勉強するほど体力も気力も追いつかなかったからなんですけど。それでも大学に行けたのは通信制高校だったからだと思っています。
── ありがとうございました。
(取材・文 北澤愛子/クリスク)
この記事を書いたのは
通信制高校ナビ 編集長
中学時代のいじめ経験から、学校のシステムに疑問を持つ。株式会社クリスクにて不登校経験者や通信制高校への取材・コンテンツ発信を行う他、朝日新聞主催イベントへの登壇、AbemaTV「Wの悲喜劇」などにも出演。