高校生でもバイト以外で稼げる? すでに仕事をはじめている先輩に聞いてみた
生徒・先生の声
2019/11/13
いい高校、いい大学に進学して、いい会社に就職すれば幸せな一生を送ることができる。そんなふうに思われていた時代がもう古くなりつつある今。「いい学校って何?」「いい会社って何?」と考えも、その答えは一つではありません。価値観は多様化し、「自分らしく生きる」「自分のやりたいことを仕事にする」ことを目指す人も多くなりました。
そんな中で、学生のうちから事業をおこし、卒業後もどこかの会社に就職するのではなく、自分のつくったの事業で稼いでいくという学生起業家も増えてきています。近年では、メディアで高校生起業家が紹介されることも。
ただ、「起業といっても誰もができるわけではないし、そこまでの力はまだない」と感じている人や、「何かをやりたいけれど、それが何かを決められない」という人も多いはず。
それでも、自分の好きなことを仕事にして生きていけたらいいな……。そんなふうに考えている人は、高校生の間に一歩世界を広げてみるのもよいかもしれません。
今回は、ただお金を稼ぐために時給でアルバイトをするのではなく、高校生でも自分の好きなことで稼ぐことができるのかを、考えてみたいと思います。
やりたいことで稼ぐ高校生 その実態は?
実際に高校生で稼ぎを得ている人に話を伺うため、まずはすでに仕事を受けている高校生数人をSNS上で探し、話を聞いてみました。
webデザインやアプリケーション開発を手掛けている高校生たちに、
「具体的にどんなお仕事をしていて、いくら稼いでいますか?」
そんな質問を投げかけてみました。
しかし、残念ながら全員が
「今は必要な経費(サーバー代や必要な機材など)をお小遣いから出していて、実際にお金をいただくところまではたどり着けていない」
という返信でした。
ただ、全員が口を揃えて「将来はその仕事に就きたいと思っているので、続けながら腕を磨いていきたい」と話していました。
やはり、高校生が社会人と同じように仕事を請け負うというのは、難しいのが現実なのでしょうか。技術面で優れていたとしても、営業ができなかったり、知名度を高められなかったりということもネックになっているのかもしれません。
やりたいことで稼ごうにも、準備資金の不足が壁になってしまうこともありそうです。
自分で仕事をとれる子は一握り でも……
高校生のキャリア支援を行っている一般社団法人アスバシの毛受芳高代表理事にお話を伺っても、
「起業やフリーランスで仕事をとってこられるような高校生はまだ少ないです。モデルやタレントなどを子どもの頃からやっていて、自分で仕事をとれる子もいますが、ごく一部の限られた人ですね。そもそもアルバイトなどお金を稼ぐことを禁止している高校もあり、簡単には勧められない現状です」
と、その難しさを教えてくれました。
ただ、
「アルバイトをするなら、バイト代の多い少ないではなく、将来につながる“学び”があるかという視点で選ぶなど、働く姿勢を変えるようアドバイスをしています」
ともおっしゃっていました。
確かに、ただ漫然とアルバイトをするのではなく、何か技術を身につけよう、知識を得ようという気持ちで働くことによって、その先の職業や働き方も変わってくることもあるはずです。
でも、本題は「バイト以外で稼ぐ」ことでしたね。
そんな高校生はいないものか……と探していると、一人の専門学校生に話を聞くことができました。
自分の絵で稼げた人は、どう一歩を踏み出した?
お話を伺ったのは「高校時代、ネットや展示会などで自分の漫画やイラストを販売して、多少ですがお金を手にすることができました」という、よしのよしおさん。2019年に高校を卒業し、現在は専門学校の1年生です。
「小さい頃から絵を描くのが好きで、高校に進学してからすぐ、展示会や同人誌即売会で自分の作品を販売したり、コミッションサイトに登録して仕事依頼を受けたりしていました」
よしのさんが言うコミッションサイトとは、イラストや占い、文章などのスキルを売り買いできるサイトのこと。仕事を依頼したい人と、受けたい人をマッチングするサービスです(※注)。
「知名度が低いので、なかなか受注するのは難しかったですが……」とのことですが、
「とにかく、家で一人で絵を描いているのではなく、一歩踏み出すことが大切だと思ったんです」と話してくれました。
こうして積極的に外に踏み出していく中で、高校もよしのさんを応援してくれたといいます。
「イラストバトルコンテストというイベントへの出演が、学校の紹介で決まったんです。観衆の前でテーマに沿ったイラストを20分間で描き、審査員の判定のもと勝ち抜いていくというバトルなんですが、そこでプロのイラストレーターと勝負することができました。残念ながらプロには敗退してしまいましたが、出演料として謝金もいただけましたし、自信につながりました」
作品を多くの人に届けようと積極的に動けば、さらに機会は増えていくはずだとよしのさんは言います。
※注……自分のスキルを登録して仕事を受注できるクラウドソーシングサイトは多くありますが、そのほとんどが18才未満の登録は規制されています。活用する場合は利用規約をよく読んでください。
お金以上に得るものはたくさん!
最後に、よしのさんは中高生のみなさんにこんなメッセージをくれました。
「お金を稼ごうと思ったら、アルバイトをするほうがいいかもしれません。私もコンビニのアルバイトのほうが稼げていましたし。でも、自分のスキルを世の中に出していくことで気づけることは本当に多いんです。
スキルを売るという世界では、高校生だからというのは関係ありません。満足できる収入を得るのは厳しいですが、年齢や立場に関係なく仲間が増えたり、他の人のすごいところを見て学んだりすることができます。本当にお金以上に得るものが多いんです。だから、行動するということに意味があると私は思っています」
プログラミングやアクセサリーづくりなど、何かに興味がある人、趣味を持っている人は、それを足がかりに少しでも動いてみてほしいとよしのさん。
「今すぐにお金にならなくてもいいし、それを将来ずっとやり続けなくてはいけないわけでもありません。でも、今やりたいことで動くという経験は絶対に自分の強みになるし、将来に影響を与えていくはずです」
高校生だからできない、ではなく、高校生だから自由にチャレンジできる。そんな気持ちで一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
<取材・文/大西桃子>
この記事を書いたのは
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。