【アンケート調査】日本の学校教育に関する問題点・改善点を300名に調査
教育問題
2022/06/14
通信制高校ナビでは、日本全国の15歳~69歳までの男女1000名に対し、今の日本の小学校、中学校、高校の学校教育への問題意識を調査しました。
その結果、問題があると回答した10代~60代の各世代50名、合計300名を対象に、どのような点に疑問を感じているのか、また、どのような改善を期待するかを調査しました。
▼調査サマリー
- 日本の学校教育に問題があると感じている人は6割強
- 回答者の65%が「いじめ」問題に注目している
- 先生・校則について厳しい目線が向けられている
- 「社会に出てから必要となる学習」や、多様性への期待が高い
現在の学校教育に問題意識を持っている割合は63. 7%
現在の日本の小・中・高の学校教育について、問題があると回答したのは1000名のうち637名でした。6割超の方が現在の学校教育に問題意識を持っていることがわかりました。
多くの人が問題意識を持つ「いじめ・不登校」
社会の状況やニュースなどから、日本の小学校、中学校、高校の学校教育に対してどのようなところに問題点を感じている人が多いのでしょうか。結果は、「いじめ・不登校問題への対応」が65%と最も多くなりました。この項目は、10代~60代各世代すべてで60%を超えており、特に20代では74%が問題に感じていると答えました 。
次いで回答が多かったのは「先生の質」。こちらは世代別の回答に差異が大きく、一番多かった50代では62%で、一番少ない20代では28%にとどまりました。40代以上は学校の先生の質について疑問を抱いている方が多い結果となりました。
その他、「学校間での教育格差」も回答が多くなりました。こちらは50代が突出しているものの、全世代平均で見ても疑問を感じている人が多いようです。
なお、「校則や制服などのきまり」は、10代の回答者のうち58%が問題意識を持っているという結果となりました。
特に問題があると感じる点における、具体的な理由は以下のような意見が寄せられました。
「いじめ・不登校問題への対応」についての意見
『いじめ』というくくりにするのではなく、『犯罪』として学校の領分から分けた方が良いと思う。(18歳・女性)
いじめなどの問題に対し被害者の子供だけでなく加害者の子供の心のケアをするべき。(18歳・男性)
先生自らいじめを誘発させているケースもある。SNSでのいじめなどでは、多くの生徒が傍観という形で加害していることに対する学校の対応が遅れている。(48歳・女性)
いじめに関しては、若年層からは「スクールカースト」という言葉や「陰キャ・陽キャ」というような言葉が頻出し、それに基づいていじめが行われていたという内容が目立ちました。
「先生の質」についての意見
貧困家庭等の格差、評価基準の画一的な基準でしか生徒を見ていない教師、教師の評価基準、 等諸々の個人を見ない教育の在り方が蔓延している。(61歳・男性)
先生の質に大きな隔たりがあることが問題。学校には監査機能が無いと言っていいので、おかしな先生が教師として居続ける。外部から人をどんどん入れて委託部分を増やし、多様性を持って教育に対応していくべきだと思う。(39歳・女性)
教員の仕事が多すぎて、いじめや不登校の対応ができていない。 不適切指導が多すぎ。(19歳・女性)
教師の業務範囲が広すぎて対応が難しいのではないか、またモンスターペアレンツの存在により教育が難しいのではないか、など先生へ同情的な意見も多く見受けられました。
「学校間での教育格差」についての意見
公立は義務教育なので仕方ないところもあるとは思いますが、学力に差があっても、同じ内容の勉強をしている。ついていける生徒はいいと思いますが、学力別にクラス分けをするとか、対処すべきではないかなと思っています。(42歳・男性)
今一番子供たちが気の毒なのは、家庭環境・収入の差がそのまま教育の差に出てきていること。 その前に児童が学校で教育をきちんと受けているのかという気づきが教師にあるのか?と思う。(65歳・女性)
学校によって生徒のレベルも異なるので、通知票の成績が絶対評価ではなく結果的に相対評価になってしまっていること。(17歳・男性)
私立と公立かによる教育格差や別項目にもなっている「地域による教育格差」に対する意見も多く見受けられました。
「校則や制服などのきまり」についての意見
意味のない、なくても問題が起きたりなどしない必要ない校則が多すぎる。 学校によって校則の度合いや内容に大きな差があるのも問題。 個性を尊重しのばす教育にしてほしい。(24歳・女性)
当然意味のない校則は廃止すべきであるが、規則を守ることが大事なのではなく、なぜその校則がある意味を考え教師側ももっと柔軟な対応が必要なのでは。(66歳・男性)
ブラック校則がある。もともと茶髪の人への指導や下着の色などを規制されること。(17歳・女性)
現代に即しない校則の存在と、その校則の存在理由を教師自身が説明できないことへの不満が多く寄せられました。
「授業のやり方・進度・レベル」についての意見
習得レベルをハッキリさせるさめ進級試験などをするべき。(55歳・男性)
授業のやり方・進度・レベル 先生の質との関係もあるかと思うが、差があるように思える。子ども達は出たとこ勝負の教諭陣のレベルで影響を受けると思うから。(57歳・男性)
日本の学校は普通過ぎる。 例えば、1から5の生徒がいるとしたら、3の生徒を大量に作ろうとしている。 特定の分野に特化させず、たくさんのことを普通にできるようにしている。 もう少し自由な教育を施してもらいたい。(17歳・男性)
学習の進度の差についての不満が多かったように見受けられました。また教師によって授業に差が大きくて授業に格差があったとの意見も目立ちました。
社会に出てから必要となる実学を求める声が多数、多様性を重視する声も
問題と感じられる部分はまだまだありそうですが、ではそんな日本の小学校・中学校、高校の学校教育をより良くするためには、何が大切だと考える人が多いのでしょうか。
結果は、「社会に出てから必要な学習(政治・経済など)」が最も多くの回答を集めました。こちら、10代・50代を除く世代の40%以上が選択しています。
次いで回答を集めたのが「個性を尊重する校則」で、こちらは当事者世代である10代の62%が選択しています。その他では、「興味がある内容の学習時間を増やす」、「担任の先生を選べる・変えられる」、「オンライン授業を受けられる」、「ディスカッション形式の授業を増やす」、「先生の成績表をつけられる」といったものが挙げられました。
「社会に出てから必要な学習(政治・経済など)」についての提案
大人になってから、「もっと早くに知りたかった」と思うことが多いので、実用的なことを習いたい。(34歳・女性)
実社会で役立つような事柄を新しい科目や単元として学習する機会を増やすべきだと思う。例えば、金融や保険、投資など。これらは実際に成人してからでないと触れる機会がないと思うので。(37歳・男性)
高校を卒業してからすぐに就職する方もいるので、生命保険について、社会保険について、クレジットカードについてなど、ただ単語を覚えさせるじゃなく、どう言ったものなのか、どういう時に役立つのか、そもそもの使い方、なぜ加入するのかなどもっともっと具体的に教えて欲しい。(27歳・女性)
大人になってから身近な存在となる経済や税金、政治などについて学びたいという前向きな声は世代を問わず非常に多く挙がりました。また社会と学校での勉強のつながりを知ることで学習に目的意識を持つことができる、などの声もありました。
「個性を尊重する校則」についての提案
みんなが通いやすく、社会に出てからも不自由しないような教育をしてほしい(21歳・女性)
後悔を生むのではなく、生まされるのがダメなんだと思う。 だからこそ個人を尊重してほしい。 心から願っている。(17歳・男性)
性別にとらわれず誰もが個性を生かせるように男女の髪型、制服、トイレなどジェンダーレスを促進した方がいいと思う。(16歳・女性)
若い世代から多く提案がありました。校則に限らず、ジェンダーへの配慮に関する声もありました。
「興味がある内容の学習時間を増やす」についての提案
教師が子供の管理を楽にしようとする「能力を平準化する企み」をやめ、個性を伸ばす教育をすべきだ。(67歳・男性)
興味がある内容の学習を増やすことで学習意欲の向上に繋がると思う。(19歳・男性)
個性を伸ばす教育については、若年層だけでなく、多くの世代から要望が挙がりました。
「担任の先生を選べる・変えられる」についての提案
授業の質を生徒側から選べたら塾だけに頼る子供も減ると思う。(49歳・女性)
人間は合う合わないがあるので、うまく付き合える先生を選ぶのが好ましい。(19歳・男性)
学校へ登校するモチベーションとして担任の先生の存在は大きく、選べるようにしてほしいという声が多く挙がりました。また別項目になるものの、クラス制度の廃止を求める意見も同時に見受けられました。
「オンライン授業を受けられる」についての提案
様々な理由から学校に通うのがつらい子もいると思うので、オンラインでの授業が選択できると良いと思います。(38歳・女性)
受験に必要なことは、塾でも学べるが、社会に出て必要なことは学校でしか学べない。オンラインだと物理的に難しかったいろいろな先生や授業を受けることができ、選択肢が広がる。(53歳・女性)
コロナ禍によって実施されるようになったオンライン授業。実際に行われるようになって、肯定的な意見も多く挙がるようになったようです。不登校への対策として、という声も多かったです。
「ディスカッション形式の授業を増やす」についての提案についての提案
人前で話すのが苦手な子なら最初はカメラで撮ったものを持参するなど、自由な形で自分の意見を人に聞いてもらうこと、聴く方は、そうは思わないことでもしっかりと傾聴し相手を尊重することなどを学ぶことが大事だと思う。 (39歳・女性)
知識のインプットだけではなく思考のアウトプットが求められる時代になっていると思うため、ディスカッションが重要だと考える。(19歳・女性)
「社会に出てから必要となる学習」と合わせて回答している方の多かった項目でした。日本人にはディスカッションが苦手な人が多いという認識に基づいているようです。
「先生の成績表をつけられる」についての提案
生徒から見た教師の駄目なところ、直して欲しいところなど話し合う機会を設けたら良いと思う。(35歳・男性)
先生によっては、生徒指導をされたくないような先生方もいらっしゃるので、先生に対するコメントができる機会があるといいと思う。(26歳・女性)
先生に対して、評価できるのがいいが、モンスターペアレンツや単なるクレームなどの問題も考える必要がある。(49歳・男性)
学校の先生にとっては少々辛辣な内容が多かったですが、実際の回答の割合を考えると非常に多くの提案が出された項目でした。問題点として多く挙がっていた「先生の質」を向上させるための対策として有効と考えた人が多かったようです。
いじめ問題の解消と学校制度のアップデートに期待
今回の調査では、特にいじめ・不登校問題などをはじめとした諸問題に対する学校や先生に対しての厳しい声が目立ちました。
しかし、政治・経済の教育や生徒の心のケア、いじめの対応など、担任教員個人だけで対応するのは難しくなっており、外部の専門家の協力や、学校教育自体の変化が必要との声も多くありました。ただ多くの学校は要望に対応しきれていないのが現状です。
近年、通信制高校が多くの子どもたちに選ばれていますが、「個性の尊重」や「興味のあるものを学習したい」、「担任の先生を選べる」、「オンライン授業」などに対応していることが理由のひとつと言えそうです。
今の日本の学校教育に問題を感じる方、不向きであると考える方は、通信制高校についても一度調べてみるとよいかもしれません。
「日本の学校教育についての意識調査」概要
- 調査対象:全国の15歳以上、69歳以下の300名(10代~60代まで各年代50名ずつ)
- 調査期間:2022年4月22日
- 調査方法:インターネットでのアンケート調査
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この記事を書いたのは
通信制高校ナビ編集部