参院選目前!10代の暮らしに関わる政策を比較しました!
教育問題
2022/07/06
第26回参議院議員通常選挙の投票日、7月10日(日)がまもなくやってきます!
選挙の結果、どのような候補者が議員に選ばれるかによって、私たちの暮らしは変化していきます。みなさん一人ひとりの生活や教育に関する政策も当然、選挙結果によって左右されていくことになります。
しかし、18歳になり投票権を得たけれど、どんな候補者に投票すべきなの? と悩んでいる人もいるでしょう。
そんな方にまず知って欲しいのは、投票は私たちが望む未来の暮らし、社会を実現するための行動だということ。自分の生活や価値観から、投票する人を選ぶのもひとつの方法なのです。
そこで今回は、10代の暮らしにかかわる政策を中心に、各党の政策を見比べてみたいと思います。
この記事の目次
<教育に関する政策>進学はどこまで支えられるのか?
10代にとって最も身近なテーマである「教育」。
高校卒業後、進学したくても経済的な理由で諦める人も少なくありません。また、経済状況の変化により進学しても卒業前に退学を余儀なくされる人もいます。
また、現在教育への公的支出において日本はOECD加盟国の中で比較可能な38か国の平均4.1%を下回り、下から2番目の順位となっています。
2021年度の大学進学率は54.9%、短期大学と専門学校を含む高等教育機関への進学率は83.8%となっていますが、これらの学費についての政策はどのように考えられているのでしょうか。
そして、教員の不足や働く環境の悪さが指摘されていたり、少人数学級の実現が求められていたりする中で、教育に関する予算は今後増やされていくのでしょうか。また、どのような点を重視して予算を使うのでしょうか。
▽高等教育(大学や短大、高等専門学校、専門学校など)の学費について
【自由民主党】
- 高等教育における、多子世帯等の中間所得層の修学支援を拡充
- 「出世払い」制度(日本版 HECS※)を大学院へ先行導入
【立憲民主党】
- 国公立大学の授業料を無償化
- 私立大学生や専門学校生に対しても国公立大学と同額程度の負担軽減を実施
- 奨学金制度の拡充で学生の生活費等についても支援
【日本共産党】
- 無償化に向けた学費負担軽減の第一歩として、大学予算を増やして、入学金を廃止
- 大学・専門学校の授業料をすみやかに半額にして段階的に無償化をはかる
- 「自宅4万円、自宅外8万円」の給付奨学金を75万人(現在の奨学金利用者の半数)が利用できる制度をつくり、拡充
- すべての奨学金を無利子にする
- 奨学金返済が困難になった場合の減免制度を作る
【社会民主党】
- 高等教育までの教育費の無償化を進め、国籍を問わずすべての子どもたちの学ぶ権利を等しく保障する
- 貸与型奨学金の返済を一部免除し、今後の奨学金は原則給付型にする
【日本維新の会】
- 義務教育の他、幼児教育、高校、大学など、教育の全過程について完全無償化を憲法上の原則として定める
【国民民主党】
- 大学や大学院等の高等教育の授業料を減免
- 返済不要の給付型奨学金を中所得世帯にも拡大
- 卒業生の奨学金債務も減免する
【公明党】
- 入学金の納付が困難な学生に対して、納付時期の猶予や減免を行うなど、各大学における弾力的な取り扱いを促進
- 給付型奨学金と授業料等減免(修学支援新制度)を、特に負担軽減の必要がある多子世帯や理工農系の学生などをはじめとして、中間所得世帯まで拡充する
【れいわ新選組】
- 「学ぶ気があれば借金をせずに大学院まで無料で行ける社会」を作る
- すでに奨学金で借金を負った人達には、「奨学金徳政令」で返済を免除
※HECS
オーストラリアで導入されている制度。一定の要件を満たした学生を対象として、大学在学中は授業料の支払いを免除し、卒業後に、所得金額に応じて一定割合(0~10%)を源泉徴収することで、授業料を徴収する仕組み。
▽教育への予算は増えるのか、どう使うのか?
【自由民主党】
- 人への投資を促進し、学び直しを通じたキャリアアップや、大学と企業の共同講座を支援するとともに、兼業・副業・起業を促進
- 大学・高等専門学校等の再編促進や機能強化を進めるための基金の設置、「GIGAスクール構想※」に基づく、教育分野のデジタル化を強力に進める
【立憲民主党】
- 教職員定数の充実や、スタッフ職の増員、非常勤教職員の環境改善を推進し、教員が子どもとしっかりと向き合う時間を確保するとともに、教員不足に対応する
- 給特法(教育職員の給与に関する法律)の廃止を含めて教職員の処遇改善を行う
- 部活については地域社会への移行など抜本的な見直しを行い、教職員の長時間労働を是正
- デジタル人材の育成や、大学を活用した社会人の学び直しなど、生涯を通じての学び、リカレント教育(社会人の学び直し)を支援する
【日本共産党】
- 国の制度として、学校給食費や教材費など義務教育にかかる費用を無料にする
- 教員の異常な長時間労働を解決するため、授業数に見合った教員の定数増、残業代支給制度の確立、部活顧問の強制禁止などを進める
- 30人以下の少人数学級を早期に実現する
- 私立高校の無償化を拡充
【社会民主党】
- 教育にかける予算は無理をしてでも捻出するべきであり、GDP5%水準程度まで拡充をはかる必要がある
【日本維新の会】
- 給食の無償化と大学改革を併せて進めながら国に関連法の立法と恒久的な予算措置を義務付ける
- 教育バウチャー(塾代バウチャー)制度の導入・普及に努め、教育機会を拡大する
- 多様なプレイヤーの競い合いによる教育の質と学力の向上を目指す
【国民民主党】
- 0〜2歳の幼児教育・保育無償化の所得制限を撤廃するとともに、義務教育を3歳からとし、高校までの教育を完全無償化
- 学校給食や教材費、修学旅行費を無償化
- 塾代等の民間教育費を特定支出控除の対象とする「教育費控除」を創設
- 財政法を改正して、教育や人づくりへの支出を公債発行対象経費とする「教育国債」を発行。毎年5兆円発行し、教育・科学技術予算を年間10兆円規模に倍増させる
【公明党】
- 子育て支援・教育を国家戦略として位置づけ、子ども・若者支援の抜本的拡充や、学びの機会の確保など誰も取り残されない「教育立国」を目指す
【れいわ新選組】
- 高等教育への公財政支出については、最低でもOECD平均の4.0%を上回る規模を確保するため、財政支出(国債発行)で支援する
- 学校教員が1人1人の子どもに向き合い、インクルーシブ教育(障害の有無に関わらず、すべての子どもを受け入れる教育)を推進するために、教員の数を大幅に増加させ、一層の少人数学級を目指す
- 教員の多忙・長時間労働を解消し、教員が本来業務に専念できるようにするために正規教員、スクールソーシャルワーカー、スクールサポーター、部活指導員等を増員
- 教員の長時間労働の緩和、少人数学級が実現できる体制を整える
<お金に関する政策>お金の心配なく暮らせる?
2019年、消費税が8%から10%に引き上げられました(軽減税率8%)。しかし現在、多くのものが値上がりし、生活が逼迫(ひっぱく)している家庭も増えています。生徒・学生においても勉強にかかるお金や暮らしのお金が苦しいと感じる人は多いでしょう。
また、高校生以上になると、アルバイトを始める人も多いと思います。その多くが最低賃金で働いていますが、最低賃金は都道府県ごとに金額が決められており、現在の全国平均は時給930円です。これを「もっと上げるべきだ」という声や、「全国一律にするべきだ」という声があります。
私たちの生活に関わるお金の問題について、各政党はどう考えているのでしょうか。
▽消費税は今後どうなる?
【自由民主党】
公約・政策には特に記載なし。
【立憲民主党】
税率5%への時限的な消費税減税を実施する
- これにより生じる地方自治体の減収については国が補填(ほてん)する
【日本共産党】
- 将来的には廃止することを目指しつつ、当面の緊急対策として、消費税の税率を、自公政権が二度にわたって増税する前の5%に引き下げる
【社会民主党】
- 消費税の3年間ゼロ税率を提案する
【日本維新の会】
- 消費税の軽減税率を現行の8%から段階的に3%(状況により0%)に引き下げ、現下の物価高騰に対応する
- その後は消費税本体を2年を目安に5%に引き下げ、日本経済の長期低迷とコロナ禍を打破する
【国民民主党】
- 賃金上昇率が物価+2%に達するまでの間、消費税減税(10%→5%)を行う
【公明党】
- 公約・政策には特に記載なし
【れいわ新選組】
- 消費税は廃止
- 同時に消費税の導入以降に引き下げられてきた法人税をもとに戻し、さらに累進課税を導入する
▽最低賃金は引き上げられる?
【自由民主党】
- 同一労働同一賃金、男女間賃金格差解消、最低賃金引き上げ、賃上げ税制、取引関係の適正化、公的価格の見直し、非財務情報の開示などを進める
【立憲民主党】
- 時給1500円を将来的な目標に、中小・零細企業を中心に公的助成をしながら、最低賃金を段階的に引き上げる
【日本共産党】
- 最低賃金を時給1500円に引き上げ、全国一律最低賃金制を確立
- 最低賃金の引き上げにあたって、中小企業への支援を抜本的に強化する
【社会民主党】
- 大都市一極集中を見直し、地域経済を活性化するために最低賃金制を現在の地域別から全国一律に転換すべき
- 時給1000円を実現し、さらに安定した生活を確保できるよう時給1500円を目指す
- あわせて中小・零細企業に対して社会保険料負担を軽減するなど支援策を検討
【日本維新の会】
- 公約・政策には特に記載なし
【国民民主党】
- 最低賃金を引き上げ、「全国どこでも時給1150円以上」を早期に実現する
- そのための中小企業支援を強化する
【公明党】
- 最低賃金を年率3%以上をメドとして着実に引き上げ
- 2020年代前半には全国加重平均で1000円超に、2020年代半ばには47都道府県の半数以上で1000円以上へと引き上げ、地域間格差を是正する
- 中小企業の取引条件の改善に向けた取り組みを進める。
【れいわ新選組】
- 最低賃金は全国一律1500円にする
- 中小・零細企業に対して国が賃上げ分を補償
<性に関する政策>自分の身体を大切に生きられる?
最後に、国民の権利・自由を守る役割を持つ、国家の基本法である「憲法」についても確認しておきたいと思います。
「憲法改正」という言葉を聞いたことのある人も多いと思いますが、さまざまな条文がある中で、改正が必要だと考えている党は、どこを直すべきだと言っているのでしょうか。
昨今では、10代の心と体の健康をどう守るかも、よく議論されています。とりわけ、これまでタブー視されてきた性の問題に、注目が集まっています。
文部科学省では現在、自分の身体を大切にし、性暴力に対する正しい知識を身につけるための教育プログラム「生命の安全教育」を推進しています。しかし、性交や妊娠経過については教えないという「はどめ規定」によって、不十分な内容になっているという声もあります。
さらに、性交に同意する能力があるとされる「性交同意年齢」については、日本では明治時代以降、13歳からとされています。しかし、13歳で十分な性の知識を持ったうえで性的行為に同意することができるでしょうか。
こうした問題に各党がどう向き合っているかも見てみましょう。
▽性教育は今後どうなる?
【自由民主党】
- 公約・政策には特に記載なし
【立憲民主党】
- 若年期からの包括的性教育を充実し、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)を尊重する
【日本共産党】
- 子どもの年齢・発達に即した、科学的な「包括的性教育」を公教育に導入
【社会民主党】
- 平等・人権の視点を入れた包括的な性教育の推進が不可欠
- 幼児、子ども、若者をエンパワーメントする(力づける)性教育を実施
- 若者が性や身体について気軽に相談したり支援を受けられたりするユースクリニック(10代、20代の若い世代が無料、または低価格で体やメンタルについて相談できる医療機関)の創設に取り組む
【日本維新の会】
- 公約・政策には特に記載なし
【国民民主党】
- 公約・政策には特に記載なし
【公明党】
- 公約・政策には特に記載なし
【れいわ新選組】
- 現行の性教育には含まれない、オーガズム・性交・多様な避妊方法・生理・中絶といった性に関する事象を発達段階に即して教育する
- 健康な人間関係を築くための情報収集の仕方・意見形成や意思決定の仕方・他者(の価値観)の尊重等を教育する
▽性交同意年齢は13歳からでいいの?
【自由民主党】
- 公約・政策には特に記載なし
【立憲民主党】
- 2021年6月、刑法が定める性交同意年齢を今の13歳以上から16歳以上に引き上げるよう法務大臣に申し入れ
【日本共産党】
- 性交同意年齢を16歳に引き上げ、子どもへの性暴力は罪を加重する
- 子どもが性暴力の被害者の場合は時効を停止するなどの見直しを行う
【社会民主党】
- 性行同意年齢16歳への引き上げ等を実現
【日本維新の会】
- 公約・政策には特に記載なし
【国民民主党】
- 公約・政策には特に記載なし
【公明党】
- 性交同意年齢の引き上げ、公訴時効の在り方などについて、刑事法の改正に向けた取り組みを進める
【れいわ新選組】
- 刑法性犯罪規定の改正を進め、性同意年齢を16歳に引き上げる
<憲法に関する政策>改正しないと日本は守れない?
最後に、国民の権利・自由を守る役割を持つ、国家の基本法である「憲法」についても確認しておきたいと思います。
「憲法改正」という言葉を聞いたことのある人も多いと思いますが、さまざまな条文がある中で、改正が必要だと考えている党は、どこを直すべきだと言っているのでしょうか。
【自由民主党】
- 「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つの基本原理は堅持
- 改正の条文イメージとして、①自衛隊の明記、②緊急事態対応、③合区解消・地方公共団体、④教育充実の 4 項目を提示
【立憲民主党】
- 現行憲法の基本理念と立憲主義に基づき「論憲」を進める
- 憲法に関する議論は、ステレオタイプな「護憲論」、「改憲論」によることなく、この立憲主義をより進化・徹底させる観点から進める
- 論理的整合性・法的安定性に欠ける恣意的・便宜的な憲法解釈の変更は認めない
【日本共産党】
- 憲法9条改憲に反対。「敵基地攻撃能力」の保有など、「専守防衛」を投げ捨て、日本を「戦争する国」にする逆行を許さない
- 日本国憲法の前文を含む全条項を守り、特に平和的民主的諸条項の完全実施を目指す
【社会民主党】
- 今憲法を変える必要はない
- 憲法違反の法律である安保法制(戦争法)、秘密保護法、共謀罪法、重要土地調査規制法を廃止
【日本維新の会】
- 憲法改正原案3項目である「教育の無償化」「統治機構改革」「憲法裁判所の設置」に加えて、「憲法第9条の改正」「緊急事態条項の創設」の実現を目指す
- 憲法第9条については、平和主義・戦争放棄を堅持した上で、自衛隊を明確に規定する
- 他国による武力攻撃、内乱・テロ、大規模自然災害、および感染症の蔓延などの緊急事態に対応するための緊急事態条項を憲法に創設する
【国民民主党】
- 人権分野では、憲法制定時には予測できなかった時代の変化に対応するため、人権保障のアップデートが必要
- 緊急時における行政府の権限を統制するための緊急事態条項を創設
- 憲法9条については、①自衛権の行使の範囲、②自衛隊の保持・統制に関するルール、③戦力不保持・交戦権の否認を規定した憲法9条2項との関係の3つの論点から具体的な議論を進める
【公明党】
- 憲法9条1項、2項は、今後とも堅持
- わが国を大災害が襲うなど国家の危機といえる事態に、国会機能を維持することは極めて重要。緊急の立法措置や必要な予算を速やかに成立させ、行政を監視することは、国会の責務
- 憲法上、国及び国民の地球環境保全の責務等を規定することについて、議論を深めていく
【れいわ新選組】
- 「自衛隊の明記」「緊急事態条項」「合区の解消」「教育無償化」は、現行法の運用や改正で実施できる
- 憲法改正を検討する前に、現行法や法改正でできることを最大限実行する
以上、7つのトピックスについて各党の公約・政策を調査してみました。
なお、今回は主な政党が公式サイトなどに掲載している公約・政策を参考に紹介しましたが、候補者によってもさまざまな考え方があります。自身の選挙区からどのような候補者が出ていて、どのようなことを主張しているかもチェックしてみてくださいね。
<文/大西桃子>
この記事を書いたのは
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。