学校の雰囲気や特徴は? 保護者の目で見た定時制高校

先輩に聞く

2016/10/17

多くの保護者にとって馴染みのない定時制高校。登校や学習スタイルの違いなど、わかりにくいことも多いだろう。

今回は、定時制高校に進学した子どもを持つ3名の保護者に、実際に感じたことを伺った。

定時制高校は選択肢のひとつ

(2015年入学~)

正直なところ「えー!? どうして?」と思いましたよ、子どもから定時制高校に行きたいと言われた時は。4人姉妹の末っ子で、自分の意思で決断するということがどちらかというと不得手な子だという印象でした。進路を決めるときも、しまいには「お母さん決めて」なんて言い出す始末。自分で決めなさいと選択をさせた結果でしたが、かなりショックでした。本人としては自由な校風が決め手だったようです。でも、自由にはそれなりの責任が伴うと言い聞かせましたし、すべて自分で管理できるの? と不安でもありました。

上の子たちにもまれて育ったせいか、同学年の子たちよりも冷めていて、物言いも表情もきつめだったことで、中学時代は損をすることが多かったようです。先生からも誤解されることが多く、居心地は悪かった様子でした。だから、同じような環境に身を置くのは嫌だと思ったことも定時制高校を選んだ理由のひとつだったのかと思います。

学校に関しては、「単位制である」「3年卒業、4年卒業が選べる」など最低限のことしかわからないまま入学しました。とりあえず行ってみて、本人に合わないようならその時点で考えようと飛び込んだ感じです。

まずは、授業の組み方に戸惑いました。シラバス(授業計画表)を前に親子で四苦八苦しましたよ。その時点で卒業後の進路も視野に入れた考え方で決めていきます。一般科目のほかにも、市民講座と連動の授業などもあり、食、農業、福祉、経理と多岐に渡った分野のことを学ぶことができることも知りました。提出してから先生の指導が入り、ようやく計画が決定します。

また、うちの子どもが通っている学校は、指導方針として、常に外の世界に目を向け、ひとりひとりが社会人として自立していくことを目指しています。勉強が出来ればOK、偏差値の高い学校に合格すればよいというのではなく、その子どもが社会に出てどう生きていくか。そのために、今、必要なことは何かをきめ細かく一緒に考えてくれます。

定時制高校に対して、私自身も偏見の気持ちがあったのは確かです。何か特別な事情のある子どもが行くところなのでは? 私の子どもがなぜそこへ? と。しかし、知れば知るほどマイナスイメージがプラスに転換されました。本人も学校での居心地はよいようですし。子どもに合ったところが一番良い学校。全日制高校、通信制高校、定時制高校、どこを選ぶのも正しい。選択肢のひとつなのだなと今は思っています。

子どもたちの頑張りが私の力になっています

(2015年入学~)

私の子どもが定時制高校に進学したのは、病気のためでした。Ⅰ型糖尿病と起立性調節障害をもっていて、朝決まった時間に起きて登校するのがむずかしかったからです。その結論に至るまで子ども、私たち親とも大きな葛藤がありました。子どもは目の前にある中学校にも通えないのに、交通機関を使って高校に通えるのだろうかと不安を抱き、通信制高校でもいいかなと言うこともありました。しかし、父親が友達との関わりはもった方がよいという理由で定時制高校ではどうか? と勧めました。私は、願書の出願時期ギリギリまで、やはり全日制の高校に行けないものかと悩みました。

どういう学校なのかがわからないことも大きな不安でした。開校して間もない高校だったこともあり、中学校の進路指導の先生も、その学校のウェブサイト上の情報くらいしかわからないとのことでした。「お母さん、ウェブサイトの情報を頻繁に見ておいてください」と言われるほどで。そんな不安を抱えたまま、まずは受験しました。入学してみて合わなかったらその時はあらためて考えようと。

入ってみてわかったのは、学習面も含めていろいろな活動を積極的に勧めている学校であるということ。そして、何より子どもたちの雰囲気が和やかで元気でした。私の想像では、もっと荒れていたり、暗い子が多いのかな、などと思ってましたから。すごい偏見ですよね。今でも、子どもが中学時代の友達と会った際に「馬鹿ばっかりの学校なんでしょう?」などと心無いことを言われることもあるそうです。そんなこと全くないのですが。本人は「オレ、この学校好きだから!」と言い返してきたらしいです。実際に通ってみて自分に合った学校だということがわかっていますから。

定時制であれ全日制であれ通信制であれ、そこに通う子どもたちはそれぞれのペースで頑張っています。もっと、どんなことをしている学校で、子どもたちがどれだけ頑張っているかを知ってもらいたい。その気持ちから、PTA広報誌の発行や校外への情報発信などのお手伝いをするようになりました。子どもたちの姿が私自身の頑張りの原動力になっています。知ってもらったうえで、そこに通う子どもたちを見る周りの目が変わっていってくれたらうれしい。子どもたちがもっと気持ちよく自分に合った学び方を選ぶことができるようになるといいなと思っています。

親の価値観より子どもの気持ち

(2011年入学~2015年卒業)

普段あまり自己主張しない子どもから「この学校以外は行きたくない」と言われたのが定時制高校でした。学校見学に行って即決だったのです。これは思うようにさせたほうがいいなと直感し、進学を決めました。

自分の世界観がはっきりしている子で、小学校中学校とも同級生たちとなじめない様子はありました。不登校ではありませんでしたが、学校生活が楽しそうでないのは感じていました。高校に入って落ち着いたころ、それまで全く触れなかった小・中学校でのつらかったことなどを話すようになりました。「友達なんかいらないから、一人で過ごしても平気そうな学校だなと思って(ここを)選んだんだよね」と子どもから聞いたときは涙が出ましたね。そんな理由で選んでいたのだと。

ところが、入学後は本人の思惑に反して、友達がたくさんでき、部活動の後輩にも慕われ、部長を務めるまでになりました。人と関わることを避けようと選択したところで全く正反対の学校生活を送ることとなったのです。先生方も、子どもたちを自立した大人として扱ってくれるので、自分を曲げることなく、自然に周りと調和をとっていくことができるようになっていったのかと思います。

4年間、さまざまな分野の授業を受けて充実した高校生活を満喫した後、たっての希望だった動物に関わる仕事に就きました。思いがけず家を離れて独立することとなりましたが、元気に働いています。

子どもがこの高校で! と言ったとき、私の価値観で否定していたら、今頃こんな姿は見られなかっただろうと思うとゾっとすることがあります。子どもの気持ちをあの時、くんでやれてよかったなと思っています。

(わたなべひろみ+ノオト)

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2016年10月17日)に掲載されたものです。

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