学生のうちに知っておきたい! 大人になったら払う税金・保険料のハナシ

専門家に聞く

2016/12/01

大人になると払うことになる税金や社会保険料。

企業に勤めれば、会社から支給される給与から税金などが天引きされるので、自分で納付の手続きをする必要は基本的にない。しかし、フリーターや個人事業主の場合は、得た収入から自分で税金や社会保険料を納付しなくてはならない。

社会に出るとどんな“お金”を払う必要があるのかを説明しよう。

支払うべき税金の種類は?

まずは納めるべき税金を見てみよう。大きく2つある。

■所得税

所得税とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた「所得」に対して課せられる税金のこと。働いて給与を得れば、何歳でも支払い義務がある。税率はその年の所得に応じて計算される。 会社員の場合は毎月の給与から概算で源泉徴収され、過不足は12月の給与を受け取るときに調整を行う(年末調整)。 フリーターや個人事業主の場合は、自分で1年間の所得税を計算し、その翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に納税する。これを「確定申告」という。確定申告をしないと、罰則として「延滞税」や「無申告加算税」と呼ばれる追徴金が課される。さらに、税務署からの催促に応じないでいると、財産を差し押さえられることもある。 なお、個人事業主やフリーランスで開業届けを出して事業所得を得ていて、「個人事業税」の課税対象の場合はそれも納付する。

■住民税

住民税は、その地域に住んでいる住民が負担する税金のことで、都道府県民税と市区町村民税を合わせた総称のこと。基本的に所得がある人は納付義務があり(未成年も一定以上の所得があれば課税される)、1月1日時点の住所地に納付する。 会社員の場合は、給与を支払う事業主がその年の6月から翌5月までの12回に分けて天引きする。基本的に社会人1年目は前年の給与がないため住民税が引かれることはないが、前年のアルバイト収入次第では引かれる可能性がある。 個人事業主やフリーランスの場合は、毎年6月に市町村・特別区から納税義務者に税額通知書(納付書)が送付される。この納付書で市区町村役場や金融機関、コンビニエンスストアなどで支払う。納付期間は6月、8月、10月、1月の年4回に分けて払うが、支払い月は各市区町村によって異なる場合があるので確認しよう。

社会保険料にはどんな種類がある?

次に、社会保険料だ。これは、企業に勤めているか否かで、種類が異なる。

<会社員>

■健康保険料
企業に所属すると、原則としてその会社が加入する全国健康保険協会か健康保険組合に加入する。健康保険料は、前者は会社と自分で半分ずつ負担し、後者は負担割合を自由に設定できる。給与明細には自己負担分が記載される。

■厚生年金
厚生年金は、主として会社員が加入する公的年金制度のこと。働いて給与を得る環境になれば、何歳でも加入義務が発生する。厚生年金加入者は、後述する国民年金にも自動的に加入することになる。費用は会社と折半。

■雇用保険料
雇用保険は、なんらかの理由で働けなくなった際、再就職するまでの一定期間、一定額のお金を受け取れる保険のこと。雇用保険料は業種によって異なり、会社と負担を分け合う。

※上記はすべて、給与から天引きされる。

<フリーターや個人事業主、フリーランスなど>

■国民健康保険料
国民健康保険は「国民皆保険制度」のため、企業に所属して健康保険料を払わない限り、強制加入だ。国民健康保険料は、家族の人数や前年の所得、住んでいる地域をもとに金額が決まる。国民健康保険料の納付は、「口座振替」「納付書での支払い」が一般的。

■国民年金
日本国内に居住する20歳以上60歳未満の人に支払い義務がある。20歳になると「国民年金第1号」の加入手続きを市区町村で行い、保険料を納める。納付方法は「口座振替」や「クレジットカード納付」「納付書での支払い」「電子納付」がある。

まとめ

なかなか難しく感じる税金や社会保険料。以下のモデルケースで、具体的に見てみよう。

学校を卒業して、フリーターに。同時に一人暮らしもスタートした場合。

・学生のうちは親など保護者の扶養に入っているはず。まずは親の勤務先で扶養を外れる手続きをしてもらおう。
・引越しをする場合は、自治体へ転居届が必要。役所に行こう。郵便局へ郵便の転送届も忘れずに(転居届を怠ると、自治体からの重要書類が届かなくなる場合も)。
・フリーター1年目は、給与から天引きされるのは基本的に所得税のみ(雇用保険が天引きされる場合も?)。
・アルバイト先の健康保険に加入できればそれが天引きされる(こちらの方が自分が支払う金額は安い)。
・アルバイト先の健康保険に加入できない場合は、国民健康保険の加入手続きをしに役所に行こう。
・働き始めて1年以上が経過し、20歳以上であれば住民税を支払う(納付書が送られてくる)。※未成年者の場合でも所得125万円超の場合は住民税を支払う。
・20歳以上の場合は、年金を支払おう(納付書が郵送されてくる)。
・わからないことは専門家に聞くべし。役所に足を運んで質問してみよう。

すべてを完璧に覚えられなくても、所得税を除けば納付書が郵送されるので、それに基づいて手続きをしよう。ただし、引っ越しなどで現住所を届け出ていない場合は納付書が手元に届かないなんてことも。何年分も滞納して、高額に膨れ上がった税金や保険料を一気に支払うのは大変だ。最悪の場合、財産差し押さえに発展することもある。

大人になったら支払うことになるさまざまなお金。自分で把握し、支払いや届け出などの手続きをきちんと進めることが大切だ。

(南澤悠佳/ノオト)

取材協力

株式会社エフアンドエム

中小企業と個人事業主向けに、会計や財務、労務、人事など、バックオフィスのコンサルティングサービスをリーズナブルな価格で提供。個人事業主キュレーションメディア「マルナゲ」を運営する。

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※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2016年12月1日)に掲載されたものです。

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