あなたに合う場所が世界のどこかにある! パリ在住日本人が伝える“自分の居場所の見つけ方”
先輩に聞く
2017/02/20
はじめまして。私はフランスに住んでいる36歳のライターです。
「ラブ・ジャーナリスト」という肩書で、日々パリの街にくり出しては、見知らぬパリジャンたちに愛についての突撃インタビューをしています。
今回紹介したいのは、私の体験談についてです。
私には、死にたいと思いながら毎日を過ごしていた時期があります。中学生の頃で、いじめにあっていました。
親に心配をかけたくないと思い、いじめにあっていることを隠していたのにバレてしまったり、助けを求めた先生も助けてくれずじまいだったり。それなのに無理して学校に通っていたら、その辛さで病気になってしまいました。
大人になった今振り返ってみると、いじめを我慢して無理して学校なんて行かずに逃げていればよかったなと思います。でも当時は、どこに、どんな風に逃げたらいいかわかりませんでした。「学校」と「家」という小さな世界しか知らなかったので、「いじめから逃げる=死ぬ」という選択肢しか思いつかなかったのです。
もし逃げて家にひきこもっても、その後の人生にとって大した問題じゃなかったでしょう。死ぬほど辛いことに比べたら、親に心配をかけるとか、学校を変えてもらうとか、引っ越しをすることなんて全然大したことじゃないと今ならわかります。もっと早く逃げて、もっと早く親に相談していれば病気なんてならなかったかもしれません。
このいじめは結局、自分のキャラクターを笑いにすることで脱することができました。なんとかいじめを乗り越えたその後、私は高校、大学へ進学し、憧れのテレビ業界へ就職します。テレビ局への就職はとんでもなく難関ですが、下請けのテレビ制作会社ならいくつもあって、そこでアルバイトのような形で仕事を始めたのです。
「テレビ業界は精神的にも、体力的にも大変だからやめた方がいい」と就職活動中に何人もの人にも言われた通り、本当に大変な仕事でした。
3カ月間休みがないことも当たり前。家に帰れないどころか、寝られない食べられないという、人間として扱ってもらえないような仕事環境でした。
3年間は我慢していたのですが、顔の周りにブツブツとニキビができて、職場でのあだ名が「ブツブツ」になり、これ以上いても身体を壊してしまうと思って辞めました。実際、働き過ぎて死んでしまったディレクターもいたので、辞めてよかったと思っています。
この時、仕事が大変だったとはいえ、その後の人生に役に立つことをたくさん体験できたのは感謝しています。今パリで道行く知らない人に突撃インタビューできたりするのも、このテレビ時代に色々な人に取材をした経験があったからでしょう。
仕事を辞めた後、ずっと憧れだったニューヨークで英語を勉強することにしました。20歳の頃に初めての海外旅行で行って、いつか住んでみたいと思っていた夢を叶えるためです。テレビ業界で働いていた頃のお給料は少なかったけれど、忙しすぎて使う暇がほとんどなかったので、留学するための資金はありました。
実際にニューヨークに住んでみると、 そこには拍子抜けするくらいたくさんの日本人がいました。私にとって「海外に住む」ということは、火星旅行に行くくらいとてつもないことだと思っていたのですが、お金とちょっとの勇気があれば、誰でも簡単に海外に住めるということ、また、日本の外には日本とは全く違う世界があり、色々な人がいるということを知りました。
一年間遊びながら英語を勉強し、あっというまにお金がなくなったので日本へ帰国。今度は東京で 雑誌やネットの編集の仕事をするようになりました。
毎日仕事をしていたら、気がついたら30歳は目前。それまで、30歳くらいになったら結婚しているんだろうな、と思っていたのに、現実はできていない。まわりはどんどん結婚するのに、自分は結婚できていないことに焦りだして婚活を頑張るようになりました。ところが、婚活をやればやるほど辛くなってしまったのです。
婚活していた頃は、中学生の時にいじめにあっていたのと同じくらい辛いと感じていました。このまま婚活を続けていたら、本当に死んでしまうんじゃないか、と感じたほどです。
そこで私は、我慢しないで海外へ逃げました。
日本での婚活をあきらめて、世界で婚活をすることにしたのです。すると、それまで「結婚しなければ」というプレッシャーで焦らせられていたのに、海外に出たことで、そんなプレッシャーが解けて消えて行くのがわかりました。
実際に海外の色々な国に行って、現地に住む人たちと話をする中で、色々な恋愛や結婚感があることも見えてきました。なかでも、フランスのパリを初めて訪問したときに衝撃を受けました。日本とは全く違って自由な恋愛や結婚スタイルがあったからです。
こうして私はパリに移り住むことを決めました。
もちろん、海外に住むことで大変だったり、面倒なこともあるけれど、フランスはとても自分に合っていて住みやすいと感じています。日本で感じていたプレッシャーから逃れられ、自分らしく生きられるからです。
それまで結婚できないと苦しんでいた私が、今のフランス人の旦那さんとも出会うことができました。そして、いままでにないほど平穏な気持ちでいられるようになったのです。
不思議なことに、フランスという自分らしく生きられる場所を見つけられたことで、今はまた日本に戻ってもどこでも、私はこの平穏な気持ちのまま生きられるようにも感じています。
こうなれたのは辛かった環境から一気に離れて、住む環境を変え、自分らしさを手にしたからに違いありません。
もし今いる場所が生きづらくなったら、逃げたらいい。逃げる場所は日本でも世界でも、その気になって探せば見つかるはず。
海外に行くなんてとんでもないことのように思う人が多いでしょうが、日本国内であっても、学校、会社、住む場所を変えるだけで、人生は劇的に変えられると思います。
死ぬほどつらいことがあれば、理由はなんであれ今の環境から逃げていい。自分が平安になれる場所は、今の場所から少し離れただけでも探せば見つかるはずです。もし、市内で見つからなければ、市外で。県内で見つからなければ県外で。日本国内で見つからなければ、世界で。世界にはたくさんの国があり、その中にいろんな地方があります。それくらい、逃げるところはたくさんあるということです。
逃げて自分に合う場所を探して、それを発見することができた今の私は、いじめにあった時も、婚活で死ぬほど辛かったときも、本当に死んでしまわなくてよかったなと思っています。
いじめにあっていた中学生の頃も婚活に苦しんでいた数年前も、まさか将来の自分がパリに住んでフランス人と結婚するなんて夢にも思っていませんでした。それくらい、生きのびて、自分で探して行動すれば、人生面白いことが体験できるものだと実感しています。
(中村綾花+ノオト)
※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2017年2月20日)に掲載されたものです。