女子高生がクラウドファンディングで63万円調達! 「西野亮廣独演会」を諦めなかったのはなぜ?

先輩に聞く

2017/07/06

北海道えりも町の風景

2017年4月29日、北海道えりも町でお笑い芸人の西野亮廣さん(キングコング)の独演会が行われた。

このイベントを開くために資金を集めたのは、当時北海道えりも町に住む女子高生だった村田明日佳さん。クラウドファンディングで179人の支援者を集め、63万円もの金額を調達した。

なぜ、村田さんは「西野亮廣独演会」を開催しようと思ったのか。クラウドファンディングという手段を選んだのはなぜ? 開催してみて現在の気持ちは? 村田さんに話を聞いてみた。
 

家族の反対とクラスメイトの冷たい視線


CAMPFIREの募集ページ。最終的に、目標金額の30万円を超えて、63万5000円が集まった
https://camp-fire.jp/projects/view/12055

――クラウドファンディングを行っていた当時は高校生だったんですよね。村田さんはどういう学校生活をすごしていましたか。

どうしても朝起きられなくて、学校はほとんど毎日遅刻してしまっていました。授業もほとんど眠ってしまって……。昼休みも眠くて眠くて、お弁当を食べられなくて。ADHD(発達障害)の診断を受けていたこともあり、人と同じペースで生活するのは難しかったです。

あと、生活面だけでなく、「みんなと同じペースで同じことをこなす」というのが苦手でした。指示されたことに納得しないと行動できなくて、よく先生と意見がぶつかってしまっていました。そんな学校生活でも、保育所から一緒の子もいるくらい同じメンバーで育つ環境だったので、仲の良い友達がいたのはよかったです。

――なぜ「西野亮廣独演会」を開催しようと思ったのでしょうか?

もともとテレビ番組の「はねるのトびら」(2001年~2012年放映)が大好きで、小学生のころ毎週欠かさず見ていたんです。中でもキングコングさんが好きで。でも、番組が終わってからは、そのことをすっかり忘れてしまっていました。

2015年の春、Twitterでたまたま回ってきた情報から、西野さんが絵本を作っていることや、独演会のチケットを手売りしていることを知ったんです。西野さんのTwitterとFacebookの投稿をさかのぼって見たら、西野さんの考え方にすごく共感できて。私はいままで周囲の人と意見が合わずに辛い思いをすることが多かったのですが、学校以外の世界には、自分と同じ意見が存在することもあるんだ、と知りました。

――そこから、どのように「西野亮廣独演会」やクラウドファンディングにつながったのでしょうか。

もともとは、西野さんがクラウドファンディングをしていたんです。制作した絵本『えんとつ町のプペル』の原画や設定資料を展示する個展を、入場無料で開催するために資金を集めていたんですね。

そのクラウドファンディングに、30万円支援のリターンとして、西野さんの独演会を開催できる権利がありました。それで、このリターンを支援する30万円を集めるために、私もクラウドファンディングをやろうと思いつきました。

――リターンを買って、西野さんに地元に来てもらおうと思ったんですね。

私が当時住んでいたのは、北海道えりも町という昆布漁が盛んな漁師町です。鉄道が通っておらず、札幌まではクルマで片道4時間かかります。好きなアーティストのイベントに行くのもとても大変でした。

私は当時、町全体に夢を語る人を叩く風潮があるように感じていました。将来の夢を話すと「目を覚ませ」「お前には無理だ」と言われることも多かったんです。高校卒業後の進路について「夢を叶えたいから上京する」と言うと、一部の先生からはバカにされたりして……。イベントを成功させることで自分に自信を持ちたかったし、もしも私みたいに進路を否定されて傷ついている人がいるなら、その人たちに「夢を語ってもいい」と伝えたかったんです。

――クラウドファンディングを始めるとき、家族や友人の反応はいかがでしたか?

私の父はいわゆる“頑固親父”タイプと言うのでしょうか、最初はすごく怒っていました。「イベントを他人の金でやるとか何馬鹿なこと言ってんだ!」「西野西野言ってんのはお前だけだ! 人集まるわけねぇべや!」と……。

でも最終的には「俺の許可とかいちいち取るな! 勝手にやれ!」と言ってくれたんです。母は一番の理解者として、見守ってくれましたね。父も最終的にはすごく協力してくれました。

通っていた高校の同級生たちの反応ですが、正直、馬鹿にされているような雰囲気も感じました。誰も私の企画が成功するとは思ってなかったと思います。同級生で応援してくれた友達は、2人だけでした。

――クラウドファンディングを立ち上げて、不安はありましたか?

最初は深く考えず「やっちゃえばとりあえず集まるのかな」と気軽に思っていましたが、そんなに甘くなかったです。最初の1週間は支援金が全く集まらず、不安に押し潰されそうでした。

そんなとき、西野さんと絵本作家のぶみさんのニコ生(niconicoが提供するライブストリーミングを用いた動画配信サービス)を見て、その番組でたまたまクラウドファンディングが話題にのぼっていたんです。「資金が集まるプロジェクトと、集まらないプロジェクトの違いは、熱量の違いでしかない」という話をしていて、ハッとしました。私には、まだまだこの企画にかける熱量が足りないんだ、と。

そこで、Facebookにありのままの気持ちを投稿しました。「支援してください」というお願いではなく、なぜ西野さんが大好きなのかという気持ちを素直に書きました。そしたら、西野さんのファンの間でどんどんシェアが広がっていって、直接は知らないたくさんの人から「イベント開催を応援したい」という声と支援金が届きました。

――自分の気持を素直に伝えることで、多くの賛同者が得られたのですね。

そうですね。そこからどんどんと支援額が伸びて、目標としていた30万円の80%に到達しました。もともと80%に到達したら西野さんに報告しようと決めていたので、その日に西野さんのFacebookの投稿のコメント欄に「絶対に達成するので、ぜひえりもに来てください」と書いたんです。そのままその日は寝てしまい、朝起きたらびっくりしました。

スマホを操作できないくらいの勢いで、どんどん通知が来ているんです。もしかして、と思って西野さんのページを見ると、西野さんが私のイベントページをシェアしてくれていました。そのとき、クラウドファンディングのページを見たら、100パーセントに到達しているどころか、目標金額を超えて34万円に到達していました。

――最終的には63万5000円の資金が集まったんですよね。イベント当日はいかがでしたか?

小さい頃からよく知っている地元の会場のステージの上でトークをする西野さんを見て、なんだか不思議な感覚でした。地元の人たちが西野さんの話で笑っていて、絵本を手に取ってくれてうれしかったですね。開催できてよかったなと思います。

あとは、資金を回す苦労や音響や照明についてなど、イベント開催の裏方の事情も知ることが出来ました。今後何かのイベントに参加する場合は、純粋に楽しむだけではなくて運営や演出の部分にも注目して学んでいきたいです。

当日、終演後には西野さんと記念撮影も。無事イベントが終了してホッとしたそう

自分の信じる道を進んでいきたい

――現在は東京の文化服装学院の学生なんですね。どんな勉強をしていますか?

ファッション工科基礎科に通っていて、いまは服作りの基礎を勉強しています。作図して、パターンを作成、そして実際に服の制作。ファッションビジネスや素材論、デザイン画などの授業もあります。

小さい頃から服に強いこだわりを持っていて、2歳の時にはもう母が選んだ服を着ずに、自分で選びなおして着ていたそうです。自分は好きなことじゃないと続けられない性分なので、一番興味がある服飾を勉強することにしました。

――「学生だから」「田舎だから」「お金がないから」と夢を諦める人も多いと思います。そんな人たちにメッセージをお願いします。

やろうと思って行動に移せば、大体何だってできるんだ、とイベント開催を通じて実感しました。年齢なんて関係ないし、田舎でも工夫次第でやりたいことはちゃんとできるんだ、と。

やりたいことは、どんどん口に出した方がいいと思います。私の場合は、素直な気持ちを発信したら、自然とそれを叶えてくれる人や応援してくれる人がやってきてくれました。

以前「死にたい」と思っていたことがあるんです。そのときは、悪いことばかりが起きました。でも、明るく生きてみたら、こわいくらいに良いことばっかり起きるようになりました。「運」って、自分の気の持ちようなんだな、と。

――最後に、村田さんの現在の夢を教えてください。

ハリウッドスターのような有名人に会っても、ご機嫌取りに行くのではなく、向こうから「あの人と仲良くなりたいな」と思ってもらえるような、「何か」がある人になれたらいいなと思っています。

(松尾奈々絵/ノオト)

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2017年7月6日)に掲載されたものです。

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