【マンガ紹介】学校と家だけがあなたの「世界」ではない 『しまなみ誰そ彼(たそがれ)』
本などから学ぶ
2016/08/22
学校でも家でも過ごしにくく、心を許せる場所がない……。そんなふうに、自分の居場所がどこにもないと感じたことはないだろうか。そんなあなたにオススメなのが、マンガ『しまなみ誰そ彼』(鎌谷悠希/小学館)だ。
▼『しまなみ誰そ彼』(鎌谷悠希/小学館)既刊1巻(未完)
http://www.amazon.co.jp/dp/4091874193
ゲイであることを隠し、心を殺して
ゲイであることを隠してきた主人公のたすくは、ある日「ホモ動画」を観ていたことを同級生にからかわれる。焦ったたすくは自分が「ホモ」でないことを証明するために「ホモなんてきもい」と笑い飛ばしてしまう。
さらに自分の片思いの相手が「ホモは絶対無理」と言うのを耳にし、絶望したたすくは自殺を試みるが、その一歩前で不思議な女性「誰かさん」を偶然見かける。そして「誰かさん」に導かれるように訪れた「談話室」で次第に自分の心を開放していく。
学校でも家庭でもない“もうひとつの場所”
談話室に集う人たちは老若男女さまざま。本を読んだり音楽を聞いたり、思い思いの時間を過ごす。
この不思議な場所は作品の舞台である広島県尾道の空き家再生事業NPOメンバーの春子たちによって作られた「今、話したいことを今、話せる場所」、そして「否定されない場所」だ。
談話室では学校のように誰かと比べられることはない。また、家庭のようにつながりが深すぎて本音を言いにくいような場所でもない。
多様な人間がゆるやかに集まり、それぞれの距離感でいられる場所、それが談話室なのだ。
自分にとっての“談話室”を見つけよう
周囲から「どう見られるか」を気にするあまりに本音を押し殺すことは誰にでもあるだろう。しかし、本音を押し殺し続けていくと、やがて息苦しくなってくる。
そんな時にはたすくにとっての談話室のような“もうひとつの場所”に行けるといい。例えば自分が住む地域のコミュニティ活動(公民館で行われているボランティア活動や趣味の教室、図書館の朗読会など)も“もうひとつの場所”だ。あるいは仲が良かった小学校の先生や近所の駄菓子屋のお姉ちゃんなど、“普段会う人とは違う人”に会いに行くのもいいだろう。
学校や職場、家庭だけが「世界」ではないということを意識しよう。思い込みをなくし、視野を広く持てば、必ず自分が自分らしくいられる場所が見つかるはずだ。もしかしたら、そんな場所を見つけていくことこそが「人生」なのかもしれない。
(岩崎由美/マンガナイト+ノオト)
<記事で紹介したマンガ>
『しまなみ誰そ彼』(鎌谷悠希/小学館)既刊1巻(未完)
※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2016年8月22日)に掲載されたものです。