保育士、保育園経営者になるには? 藤沢市保育園「KIRA☆KIRA☆ROOM」園長・小林優歌さんインタビュー
専門家に聞く
2018/01/16
保護者が働く間などに子どもを預かる保育園。
保育士の仕事ってどんなこと? 保育園の経営って?
藤沢市で保育園「KIRA☆KIRA☆ROOM」を経営する園長の小林優歌さんに聞きました。
幼稚園の先生を退職、デパート勤務を経て保育園を経営するまで
――保育士の仕事はどんなものなのか、幼稚園教諭とは何が違うのか教えてください。
まず、保育園の先生には保育士資格、幼稚園の先生には幼稚園教諭免許という国家資格が必要です。国の管轄も、保育園は厚生労働省、幼稚園は文部科学省となり、その目的も保育園は「生活」、幼稚園は「教育」と異なります。
保育園は、0~6歳の未就学児が基本的な生活をする場所のため、保護者の仕事や介護などさまざまな理由で子育てにサポートが必要な環境の子どもの成長を助ける役割があります。標準保育時間は11時間、成長に必要なお昼寝やおやつの時間もあります。0~2歳の子どもたちを預かるには保育士資格が必須で、その資格があれば保育園の他にも託児施設の職員やベビーシッターとして働くこともできます。
幼稚園は、基本的に3~6歳の子どもを預かり、教育という目線で子どもたちの成長をサポートします。保育時間は4時間と保育園に比べて短く、幼稚園教諭免許は基本的に幼稚園で働くための免許となります。
近年は保護者のニーズによりルールも変化していて、預かる年齢や給食の有無などはそれぞれの幼稚園の方針によって異なります。
――保育士はどのようにしてなるものなのでしょうか。
通常、保育士の資格を取得するには、大学や専門学校の保育過程を修了するか保育士の国家試験に合格する必要があります。保育の国家資格の合格率は10%と言われていることからか受験者は少なく、学校で資格を取得する人がほとんどです。
保育士は、企業に勤めるのと同じく社員雇用されて働く月給制の仕事で、資格を持っていれば保育園・保育所などで働くことができます。
よりよい働き方を求めた結果が保育園を経営することだった
――小林さんが保育士になったきっかけを教えてください。
最初は幼稚園教諭を目指しました。幼稚園の頃から、近所の年下の友達と遊んだりお世話したりすることに喜びを感じていたのと、自分がひどい喘息持ちだったこともあり、幼稚園には半分くらいしか行けなかったのですが、先生が優しく接してくれたことも幼稚園の先生を目指したきっかけです。
そして、自分が園児だっら頃から、幼稚園の先生になるために必要な鍵盤楽器や習字を習い始めました。高校卒業後は幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を取得することができる専門学校に通って、まずは幼稚園に9年間勤めました。結婚して、夫婦の時間をとるために派遣社員として保育園に勤めたこともあります。
――小林さんが経営する「KIRA☆KIRA☆ROOM」は、どのような保育園ですか?
「KIRA☆KIRA☆ROOM」は、0~2歳の乳幼児5人を受け入れる認可保育園です。入園希望者の方には、見学に来ていただくことが必須条件となります。
もともとは神奈川県藤沢市の家庭的保育事業の施設でした。藤沢市の家庭的保育事業では、研修の受講などを経て市の認定を受けた家庭的保育者が、居宅などを保育室として使用して保育を行う場所で、保育士資格所有者が経営することや、市が定める条件を満たした場所であることが必須とされています。
現在は場所を移転し、国の定める認可保育園となり、自分を含めて保育士が5人、子どもたちも5人という小規模で経営しています。開園当時から同じメンバーです。元々同じ保育園で働いていた先生や、保育に興味のある友人をスカウトしたりして集めました。もちろんきちんと保育士資格と藤沢市の研修を受講したうえで働いてもらっています。また、藤沢市の運用ルールにより、市から保育士資格を所有した担当者2名が巡回に来てくれています。
――保育園を経営することになったきっかけを教えてください。
結婚を機に、これまで保育したことのない2歳未満児のことを知るために保育園で派遣社員として働いていたのですが、クラスリーダーを担当することになり、残業が増えて幼稚園に勤めていたときと同じ状態になってしまって。それでは意味がないと思って、子どもに関係する他の仕事を始めました。
でも、しばらくして、家庭の事情で神奈川から汐留まで通うことが難しくなってしまって。やはり自宅の近くで仕事をしたいと思っていた時に、たまたま見た藤沢市の広報誌がきっかけです。
広報誌では、0~2歳の子どもを預かる保育園の園長を募集していて。待機児童の問題が深刻化していることもあって、困っている人たちの助けにもなれたらという思いもありました。実は、自分が大きな事故や病気を経験した後だったので、「やりたいことはやれるときにやらなきゃ」と思ったのも大きな理由です。
――経営する側になることに戸惑いはなかったのでしょうか。
これまでに保育の経験はしてきましたが、経営の経験がないことはたしかに不安でしたね。市の職員の方などに保育園経営の話を聞きに行き、その後、大手デパートの総務課で短期の派遣社員として働きながら経理などを学ぶことにしました。期間満了までの1年間勤めて、これまでの経験も活かしてやっていける自信がついたので、もう一度、市に話をしに行きました。
――保育園の経営者としての業務は、どんなものがありますか?
保育士の給与支払いの手続きや園を運営するための経理、あらゆる契約の手続きなどもすべて園長の私が行っています。そういった業務は、子どもたちを迎える前や閉園後に行なっています。
卒園しても子どもたちが帰りたくなる場所にしていきたい
――小林さんの思う理想の園とはどんな場所ですか?
子どもたちが卒園してからも成長した姿を見せに来てくれたり、保護者がふらっと話をしに来たりできる場所になったらいいなと思っています。実際に、卒園した子どもたちや保護者が遊びに来てくれることもあります。
――保育園の経営は、大変なこともありますよね。
保護者とのコミュニケーションや、小さな子どもたちを預かっている責任など、大変なことはたくさんありますが、これまでやってきて一度も辞めたいと思ったことはありません。続けていることで大変さよりも勝つものが多くて、毎年あっという間に過ぎていきますね。子どもたちが笑顔でいてくれると、またがんばろうと思えます。
――近年問題視されている保育園不足、保育士不足についてはどう感じますか?
母校の専門学校の生徒数も20年前と比べて20%以下まで減っていると聞いて驚きました。全員に目が届く状態にしたいので、自分の園の受け入れ人数を増やすことはできないのですが、保育士の労働環境の整備や潜在保育士の復職など、保育士が働きやすい環境づくりにも力を入れていきたいと思っています。
――保育士を志す方へメッセージをお願いします。
大変なこともたくさんありますが、子どもの反応がダイレクトに返ってくる仕事なので、子どもから教わることも多く、成長を目の当たりにできるので喜びもたくさんあります。実習では初めての経験が多く戸惑うこともあるかもしれませんが、保育園によって雰囲気や指導方法もさまざまなので、自分にあった規模の園で、自分がなりたい保育士像を実現できる場所を見つけてほしいです。保育士に限らず言えることですが、とにかく「諦めない・挑戦してみる」を大切に、自分を信じて夢を実現させてほしいと思います。
(企画・取材・執筆:橋本結花 編集:田島里奈/ノオト)
取材先
小林優歌さん
KIRA☆KIRA☆ROOM園長。
※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2018年1月16日)に掲載されたものです。