どうすれば苦手な人と上手に距離をとれる? 心理カウンセラー・石原加受子さんに聞く、しんどい人間関係から解放される方法

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2019/06/05

「あなたのためを思って」と干渉してくる親。
「なんとなく苦手だな」と感じるクラスメート。
「社会は甘くないぞ」と意見を押しつけてくる先生。

そんな苦手な人たちとは上手に距離をとりたいもの。そこで役に立つのは、他人に振り回されるのではなく、自分の気持ちや意志を優先させる考え方かもしれません。

今回はそんな「自分中心心理学」を提唱する心理カウンセラー・石原加受子(いしはら・かずこ)さんに、しんどい人間関係が生まれる原因や改善のコツを聞いてきました。

相手の「自由」を認めれば、対立はなくなる

――人間関係の悩みは、どの世代でもあると思います。そもそも、どうして「しんどい人間関係」は生まれるのでしょうか?

最大の原因は、お互いに相手の「自由」を認め合えていないことです。

そのため、相手を自分の思うままに従わせようと干渉したり、お節介を焼いたりしてしまう。そういう接し方をされると、相手は自由を侵害されたと感じ、反発します。

これが激しくなると、「どちらが正しいか」を争いはじめ、しんどい人間関係へ繋がります。

――なぜ、相手の自由を認め合えないのでしょうか?

同じ社会の中で生きている私たちは、つい他者も自分と同じことを考え、同じ捉え方をし、自分の予想通りの言動をすると思い込みがちです。しかし、育ってきた環境も価値観も人によって違います。

こうした差を考えられず、自分の基準で他者を捉えたとき、相手が間違っているように見える。

だから、それぞれが好きに振る舞う自由があるのに、相手を正そうと干渉してしまうんです。

「自由」の本当の意味は、なかなか理解できないんです。

――「相手が間違っている」と思っているから、対立してしまう、と。

この言動パターンの原型は、もっとも長い時間を過ごす家族関係によって作られます。なかでも影響が強いのは、「子どもは親に従うべき」という意識です。

親は自分の経験を正しいと思い込み、子どもにあれこれと押し付けようとします。一方、子ども側も「自分が正しい」と思い込んでいる。こうなると、相手を屈服させようとする争いが必然的に起こります。

実はこの争いが起きるのは、親子のやりとりのなかで、親側の「自分の意見に従ってほしい」という意識を、子ども側が学んでしまうからなんです。

つまり、お互いが「自分の意見に従ってほしい」と相手に願い、同意を要求してしまうからこそ、建設的なコミュニケーションが取れないわけです。

しんどい人間関係を改善するための3つのステップ

――石原さんの著書では、そうした親子関係から生まれる考え方を「他者中心」と呼んでいます。

「他者中心」とは、他者や一般常識などを基準に判断し行動すること。

そのため、他者の言動に対していちいち反応してしまうし、相手が間違っているなら打ち負かそうとしてしまいます。

その対極にある「自分中心」は、自分の気持ちや意志などを基準に判断し行動すること。

自分の気持ちや欲求に寄り添える選択を心掛けていけば、あらゆることが「自分を認めること」や「自分の自由」に繋がっていきます。

そして、自分中心の考え方は「私には私の自由があるように、相手にも相手の自由がある」が基本です。この考え方なら、相手に正しさを求めないので、干渉もなくなってきます。

『やっかいな人から賢く自分を守る技術』(三笠書房)では、しんどい人間関係を改善する技術が紹介されている

――自分中心で考えれば、相手の意見も尊重できるので、むやみに争わずにいられるんですね。この考え方をしんどい人間関係で生かすには、どうすればいいのでしょうか?

まず、これまで自分は他者中心で生きてきたと認識し、自分中心の生き方をすると決断することです。

ポイントは、小さな欲求を叶えるところから始めること。たとえば、ご飯の前だけど小腹が空いたら好きなお菓子を食べるとか、勉強し続けていて疲れたら一休みしてみるとか。そんな小さなことから、自分の気持ちを大切にする習慣作りをしていきます。

――急に大きく行動を変えようとしなくても、小さなことから始めていけばいいんですね。

そうですね。次に他者中心的な言動パターンを見直し、自分中心の表現をしていきましょう。

たとえば、夕飯前にお菓子を食べていて、親から「ご飯前にそんなもの食べるんじゃないよ」と注意されたとしましょう。ここで子どもが「わかっているよ! でも、ちょっとならいいでしょ!」と反発すると、言い争いが起きてしまう。

これは他者中心の典型的な言動パターンで、相手を言い負かすことに集中しています。

一方で、自分中心では、相手を不快にしているのが、自身の攻撃的な対応だと気づくんです。その結果、相手の意図を汲み取りつつ、自分の気持ちを効果的に伝えられるようになります。

たとえば、「ああ、そうだね。ご飯前だった。でも、どうしても食べたくなっちゃって。少しだけにしておくね」と伝えたらどうでしょうか。これなら親も「まぁ、少しだけならいいか」と納得してくれるでしょう。

――自分中心は自分のことだけを考えて行動するのではなく、自分を振り返り、相手と争わない行動をするんですね。

自分中心は単なる「ジコチュー」ではなく、自分と相手の両方を大切にできる考え方です。そして自分中心の表現をしつづければ、周囲の人々もその考え方や表現を自然と学んでいきます。

結果、それぞれの自由を尊重する人が周りに増え、対立的な人間関係が徐々になくなっていく。ですので、最後のステップとしては、自分中心の表現を根気強く続けていくことですね。

どうしてもしんどい場合は、争わずに距離をとる

――もし、なかなか関係性が改善されない人がいる場合はどうすればいいでしょうか?

その場合は、距離をとりましょう。

他者中心の人は、「苦手な人に好かれるための行動」をよくとります。

たとえば、本当は怖いなと思う人がいても、「ちょっといい顔していれば、自分を攻撃しないだろう」と相手のごきげんを取ってしまう。でも、相手には自分の思惑が伝わるので、余計に攻撃されてしまうんですよね。

――相手にとっては、格好の標的となっているわけですね。自分中心では、どうやって相手と上手に距離を取っていくのでしょうか?

大きく分けて3つあります。

1つ目は、「相手はそういう人なんだ」と割り切ることです。相手がどんな人でも、自分が干渉できることは何もありません。ですので、相手を分析したりして、あることないこと妄想するのはやめましょう。相手に意識が奪われて、無駄に振り回されてしまうだけなので。

2つ目は、堂々とすること。自分が反抗したり、おびえたりするほど、相手はより威圧的な態度をとり、いじめようとします。逆に自分が毅然としていれば、相手はどう対応すればよいか分からず、ひるんでいきます。

3つ目は、具体的、論理的に話すこと。相手の目的は自分を攻撃すること。なので、多くの場合、あまり深く考えていません。だから、こちら側が具体的な提案を出したり、論理的な説明をしたりすると、相手は責めてこなくなります。

この3つを意識して行動すれば、相手から自分と距離をとろうとするでしょう。

子どもとの関係に悩む大人は、何を意識すればいい?

――ここまで子どもの視点から質問してきました。次に、子どもとの関係が上手く築けずに悩んでいる親や先生は、何を意識すればいいでしょうか?

基本的なアプローチの仕方は、子どもと同じです。ただ特に意識しておくと良いのは、大人は上下関係を築こうとする傾向があること。

多くの大人は「子どもよりも優位に立っていないと、自分の言うことを聞いてもらえない」という恐怖を無意識的に感じています。

その結果、子どもの行動に干渉して自由を奪い、「大人がいないと何もできない」という意識を子どもに植え付けてしまいます。これが過保護・過干渉な大人の典型的な言動です。

――他者中心に囚われている大人は、子どもの自立を妨げている、と。

なので、自分が恐怖を感じていると認め、子どもと対等な関係を築く必要があります。そこで大切なのは、相手の意見に耳を傾けることです。

たとえば、ある校則について生徒から「理不尽だから廃止してほしい」と指摘を受けたとしましょう。そのとき、「これは決まったルールだから、守らなくてはならない」と頭ごなしに押し付けるのか、「確かに理不尽だよな。今度の職員会議で話してみるよ」と寄り添うのかでは全く印象が変わりますよね。

たとえ職員会議で、その校則が変わらなかったとしても、「全体で決めることなので、なかなか1人の意見で校則を変えることは難しい。これから先生も努力するから、悪いけど今は校則を守ってほしい」と言われたらどうでしょう?

生徒は「先生も努力してくれているし、今は仕方ないかな」と理解を示してくれるかもしれません。

――最後にしんどい人間関係に悩んでいる中高生に向けて、メッセージをお願いします。

自分が抱えている、しんどさにもっと気づいてほしいです。「本当にもうダメだ!」と思う時って、多分しんどいことが100個くらい積み重なった状態なんです。

そこまで行くと解決にすごく時間がかかってしまう。だから、1個目のしんどさに気づいて、対処していきましょう。

そこで大切になるのは、やはり自分中心の考え方です。親や先生、クラスメートから嫌だなと思う対応をされた時、我慢するんじゃなくて素直に自分の気持ちを伝えてみる。

自分の欲求を大切にしていけば自己肯定感も育まれますし、建設的な話し合いができれば解決策が見つかる可能性もあります。

いきなり大きなことから変えなくてもいいので、少しずつ自分自身を育て続けてください。いずれ、社会にも良い影響を与えることができ、上手くいくことが増えていきますよ。

(企画・取材・執筆:野阪拓海/ノオト  編集:鬼頭佳代/ノオト)

取材先

石原加受子(いしはらかずこ)さん

心理カウンセラー。「自分を愛し、自分を解放し、もっとラクに生きること」を目指す「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。著書に『「なりたい未来」を引き寄せる方法』(サンマーク出版)、『傷つくのが怖くなくなる本』(PHP文庫)、『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』(あさ出版)、『「何をやっても長続きしない人」の悩みがなくなる本』(イースト・ブレス)ほか多数ある。

https://allisone-jp.com/

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2019年6月5日)に掲載されたものです。

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