高校の学費が払えないかも… 不安なあなたにFPが紹介する支援金・給付金制度

教育問題

専門家に聞く

2021/02/10

2020年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響、とりわけ緊急事態宣言下における飲食店を中心とした時短営業要請などによって、家計への影響が出ている家庭も多いことでしょう。
店舗や運営会社に対する政府や自治体からの補償・給付の制度は、2020年の緊急事態宣言時よりもやや細かくなってはいるものの、まだまだ十分とは言えません。

そうした中で受験、進学のシーズンを迎えることもあり、子どもの学費に関する心配が再び大きくなっている家庭もあることと思います。
そこで今回は、学費など教育に関して受けられる支援金について、ファイナンシャルプランナーに伺い、まとめてみました。

高校生向けの代表的支援はこの2つ

今回、お話を伺ったのはファイナンシャルプランナーの前田菜緒さん。ご自身の子育て経験も生かし、子育て世代向けの相談、セミナー、執筆などで活動されています。

まず、通信制高校も含んだ高校生等への支援として代表的なものとして真っ先に教えてくださったのが、「高等学校等就学支援金」と、「高校生等奨学給付金」です。
どんなものなのか、それぞれ説明して頂きましょう。

高等学校等就学支援金制度

高等学校等就学支援金は公立高校無償化の政策が発展して現在の制度になったもので、基本的には授業料の支援という形になります。
国から都道府県を通じて学校設置者(公立なら自治体、私立なら学校法人など)に就学支援金が支給され、授業料に充てられることになります。返済の必要はありません。

「家庭の所得に応じて支援金額が変わること、そして支援金は家庭に直接支給されるものではないという点には注意が必要です。なお、授業料が支給限度額に達しない場合には、授業料を限度として就学支援金が支給されます。
私立高校の場合は先に自分で授業料を立て替えて、後から還付を受け取る流れになる場合があります。入学時などには学校からも案内がありますが、わからない場合は学校に問い合わせてください」

他の制度にも言えることですが、申請にあたってはマイナンバーカードがあると手続きがスムーズになるとのことです。まだ発行していない場合は、早めに作っておきましょう。

参考)高等学校等就学支援金制度:文部科学省
【2020年度】高等学校等就学支援金で授業料が無料!? 所得制限や支給額、学費以外の費用に使える支援も

高校生等就学給付金

高校生等奨学給付金は授業料以外の教育費(教科書費、教材費、学用品費、修学旅行費など)の負担を軽減するための給付金で、給付対象は生活保護受給世帯、住民税非課税世帯に限定されています。こちらも返済の必要はありません。

「たとえば生活保護受給世帯の子どもの場合、国公立高校等なら年額32,300円、私立高校等なら年額52,600円の支給となります(全日制等、通信制ともに)。令和2年度には、新型コロナウイルスの影響を考慮し、家計急変世帯への支援やオンライン学習に係る通信費の加算支給も実施されています」

各都道府県において制度の詳細は異なるので、給付要件、給付額、手続等については、「高校生等奨学給付金のお問い合わせ先一覧」で確認のうえ、お住まいの都道府県にお問合せください。

参考)
高校生等奨学給付金:文部科学省
高校生等奨学給付金のお問合せ先一覧:文部科学省

奨学金や受験生向けの支援金も活用しよう

前田さんからは「給付型奨学金」と、東京都が行っている「受験生チャレンジ支援」についてもご紹介いただきました。

「奨学金制度には自治体や民間が主催のものなど、すごくたくさんの種類があります。条件に合うものは積極的に利用しましょう」

給付型奨学金の一例を紹介してしたいと思います。

日本教育公務員弘済会 給付奨学金

就学意欲がありながら、学資金の支払いが特に困難だという場合に、志望者が在学する学校の長の推薦を受けて申請し、選考委員会の審議を経て決定される奨学金です。給付を受けた者は学校卒業後、学習成果報告を提出する必要があります。

条件や手続きなどについては、参考リンクをご参照ください。同ページには主に大学生対象ですが無利子の貸与型奨学金も紹介されています。

参考)教育振興事業|日教弘

受験生チャレンジ支援貸付事業

東京都福祉保健局の管轄で、学習塾、受験対策講座、大学受験料のための資金を無利子で貸し付けており、高校・大学に入学した場合には返済が免除されるという制度です。中途退学した方の再チャレンジも対象となっています。

上限額や利用条件、手続きについては参考リンクをご参照ください。

「また、高校生にとっては卒業後の進路も大きな問題です。大学進学への負担を軽減するために、2020年4月から、授業料・入学金の免除、減額と給付型奨学金の支給を一体化した国の新制度が始まっています」

こちらは日本学生支援機構(JASSO)のサイトにまとめられていますので、高校3年生は今のうちに確認しておきましょう。

参考)独立行政法人日本学生支援機構
東京都社会福祉協議会 受験生チャレンジ支援貸付事業

国や自治体の支援制度は、状況に応じた変更や新制度の創設も随時検討されていると前田さん。新型コロナウイルスの影響で家計が急変するなど厳しい状況になっても、みなさんの学びを支援する仕組みはたくさんありますので、まずは諦めずに学校などに相談してみてください。

取材協力

前田菜緒さん

FPオフィス And Asset 代表/1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者/2019年FP協会広報スタッフ

nmaeda – FP相談ねっと認定FP 前田 菜緒

<取材・文/高崎計三 >

この記事をシェアする

この記事を書いたのは

高崎計三
1970年、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年に有限会社ソリタリオを設立。編集・ライターとして幅広い分野で活動中。