夏休みもSNSいじめ(ネットいじめ)の危険が 子どものSOSをどう見抜く?
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いじめ問題
2019/08/05
夏休み。学校生活に馴染めなかったり、クラスの人間関係に悩んでいたりする子どもも、気分をリセットできるいい機会……というのは、実はひと昔前の話。
子どものスマホ所持率は、中学生で58.1%。高校生では95.9%です(平成29年度、内閣府調査)。
子どもたちの間でSNSでのコミュニケーションが一般化する今、長期休暇の間も気が抜けなくなっているのです。
夏休みにSNSいじめは加速する?
2018年8月、東京都八王子市で中学2年の女子生徒が自殺を図り、半月後に亡くなる事件が起こりました。両親は後に、部活動の中でSNSいじめが起こっていたことを公表、このいじめは前年の8月頃から始まったとされています。
この事件から見ても、夏休み中でも生徒がいじめから逃げられなかったことがわかります。
SNSの浸透により、子どもたちは学校から帰ってきても、週末も、さらに夏休みのような長期休暇であっても、学校の人間関係から常に逃げられない状態になっているのです。
「夏休み、子どもたちのSNSの使い方にはより注意が必要になる」と、全国webカウンセリング協議会の青山真理さんは言います。
「日常と違う長期の休暇では、クラス活動もなく、連絡は一部の友人のみに留まります。限られたメンバーのみとのやりとりに集中してしまうことで、冷静で客観的な判断力が弱くなってしまうのです」
「いつでもつながれる」からこそ、逃げ場をなくす子どもたち
昨今では地域活動など、学校以外のコミュニティに参加するような機会も少なくなっており、子どもたちはより狭い世界の中で人間関係を何とか維持していかなくてはならない状況にあります。
そこに、いつでもどこでもつながれるSNSが存在することで、クラスや部活などの狭い世界の人間関係に、常に縛られることになってしまうのです。青山さんは、そこには子どもだけのルールが存在することを指摘します。
「大人はLINEで既読がついても“都合のよいときに返事をしてくれればいい”という感覚でやりとりしますが、若者は“常につながっている”ことに意味を持つ傾向にあります。
グループに招待しても参加しなかったり、既読無視をしたりすることで、その子を外した別のグループができあがり、そこで悪口を言い合い盛り上がる。こうして裏グループができると、外された子は居場所を失っていきます。ツイッター上に“公開処刑”として、画像を流されるなど見過ごせないケースも」
こうして裏グループができると、外された子は居場所を失っていきます。ツイッター上に“公開処刑”として、画像を流されるなど見過ごせないケースも」
こうしたことが夏休みに起こり、夏休み明けから不登校になってしまう子どもも最近は少なくありません。
いじめの現場が、学校の教室からSNSに拡大している今。夏休みだからといって安心できるわけではないのです。
子どもがスマホに縛られないために
では、わが子がこうしたSNSいじめに巻き込まれないように、親はどのように対応をしたらいいのでしょうか。
青山さんは、普段から親子で話す時間をしっかり持つ事が大切だとしたうえで、そのためにも子どもがSNS上の人間関係に四六時中追い回されない工夫が必要だと言います。
「子どもにだけルールを強いるのではなく、食事中など一緒にいるときには全員がスマホを見ないといった親子共通のルールを作っておくとよいでしょう。
たとえば、充電器はリビングに置く、スマホを使うのはリビングだけにするなど、家族みんなのルールとすることが大切です」
さらに、親自身がSNSの使い方を見直す必要もあるとのことです。
「ツイッター上で他人を攻撃したり、親同士のLINEで周りの親や先生の悪口を言い合っていたり。そういう親を見た子どもは、それを当たり前のことと思い込んでしまいます。これがSNSいじめを助長してしまうのです」
子どもにばかりスマホやSNSの使い方を注意していても、自分ができていなければ子どもは聞く耳を持ってくれなくなり、何かトラブルが起きたときにも相談をしてくれなくなってしまいます。
もしもSNSいじめが発覚したら……
親としてはまず、学校でもSNS上でも、何かあったらいつでも話してほしいと普段から伝えておくこと、一人で苦しまなくてもいいと安心感を得てもらうことが大切。
そのうえで、もしも子どもがSNSいじめの被害にあっていることが発覚したら、どうしたらいいのでしょう。
「いじめが起こっている画面の画像などの証拠を揃えて、すぐに学校に相談すること。学校が対応しなければ、警察に被害届を出すことを学校に伝えて実施すべきです」
青山さんは、子どものいじめは、一度起こると大人が思っている以上に過剰にエスカレートしていく傾向があると警告します。
「警察まで?と思うかもしれませんが、子どもの命を守るためにも、親は対応を誤ってはいけません」
子どもが安心して学校に通えるためにも、「子ども同士のことだから」と甘く見ず、しっかりした対応が必要だと心得ておきましょう。
(取材・文/大西桃子)
この記事を書いたのは
大西桃子
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。