「自分でいいイメージに持っていけばいい」卒業生が語る通信制高校で学んだ考え方とは
生徒・先生の声
通信制高校
2017/06/26
左:山口さん 右:岸さん
『通信制高校』というと、どんなイメージを持ちますか?
「暗い人とか、人と接することが出来ない人が行く学校でしょ」
「入学も勉強も簡単だから、誰でも入れる分荒れてるんじゃないの」
「自分で勉強するだけじゃ、大学進学も出来ないんじゃない」
こういったイメージを持つ方は、まだまだ少なくないでしょう。
全日制高校から、通信制高校であるルネサンス高等学校(以降ルネ高)に転入した山口さんと岸さんも、最初は通信制に良いイメージを持っていなかったそう。しかし卒業式当日のインタビューでは「学校が通信制か全日制かどうかは関係ない」と話してくれました。
一体どのように考えが変わっていったのでしょうか?
夢のために転入 山口さん(女性/18歳)の場合
── 山口さんは、ルネ高に転入学されたんですよね。
山口さん「はい。もともと全日制の高校だったのですが、やりたいことに時間が自由に使える通信制高校がいいと思って、2年生の10月に転入ました」
── やりたいことというのは?
山口さん「将来、音楽関係の仕事につきたいので、音楽の勉強と資金稼ぎですね。前の学校でも、音楽を専門的に習っていたんですけど、実技の試験とか音楽の授業がいっぱいあって、自分のやりたい音楽に時間を使えなかったんです。
だけど、人生は1度しかないじゃないですか? だから自分がやりたい音楽に時間を費やせるように、学校を変えました」
──すごく目的意識をもって転入されたんですね。ちょっと気になるのですが、親御さんからは反対されませんでしたか?
山口さん「通信制ということで反対はありました。でも、私も意志が強かったので『みんなと同じ時期に卒業できるならやってみなさい』と最終的には認めてもらいました。反対を乗り越えたから、ちゃんと卒業しようと思ったし、必要なお金のためのアルバイトにも力が入ったので、いま思うと大事な出来事だったなって思います」
──山口さんの決意が親御さんに通じたんですね。通信制高校はたくさんあると思いますが、学校選びはどうしていましたか。
山口さん「私は通学がしたかったので、通学コースがあって、評判が良さそうなところをネットで探しました。最終的に5校くらいに絞って、個人相談や見学をしたら、ルネ高は自宅から通いやすいし、雰囲気が明るくて自分に合っていたので、ここに決めました」
──では、通信制高校に転入してみてどんな学校生活でしたか。
山口さん「みんなで過ごす放課後は、全日制と変わらず楽しかったです! 校内で卓球をやったりトランプやったり。クラスも分かれてないから、学年とか気にせず仲良くできるのは通信のいいところだな、と思います。
ただ、私は2年生の途中の転入だったので、レポートを短期間でやらないといけないのは大変でした。先生から『あと1週間だよ』って電話がきて、焦ってやったこともあります(笑) 後回しにしてると期限に間に合わないので、計画性は大事ですね」
──通信制高校では、レポート提出が単位取得のために必要ですもんね。全日制高校から通信制に転入する、という経験を経て、自分で変わったなと思うことはありますか?
山口さん「物事の捉え方が変わりました。通信制って、まだそんなにいいイメージはないと思うんですけど、私は通信制に転入してよかったなって思っています。
でもそれって捉え方次第なんですよね。何事も、いいイメージと悪いイメージがあって、それをいいイメージに持っていけばいいって考えるようになったら、人生が明るく見えてきました」
──通信制に転入する前は、あまり通信制をポジティブには捉えてはいなかった?
山口さん「そうですね。学校を途中で辞めるってことで、周りも『なんで?』ってなるじゃないですか。その反応が気になっていました。でも今は、私はやりたいことに人より多く時間をかけただけ。自分の夢のために自分でこの道を選んだんだ! って胸を張って言えるようになりました」
──すごい!かっこいいですね…! 高校卒業後は音楽活動をする予定ですか?
山口さん「音楽をやるためにアルバイトをして、20歳までに韓国かアメリカに海外留学したいです。日本だけに留まっててもつまらないので、若いうちだからできることをやりきりたいと思っています!」
──がんばってください! 最後に、学校や将来のことで悩んでいる後輩たちにメッセージをお願いします。
山口さん「悩んでるだけでは、何も変わらないので行動してみて欲しいです。学校見学に行くなり、人に相談してみるなり、できることはあるはず。通信制だからダメとかじゃなくって、良くするのも悪くするのも自分次第だから、自分が決めたことをまっすぐに進んでください」
一般入試で大学進学 岸さん(女性/18歳)の場合
──通信制高校へ転入したきっかけは親御さんの転勤と伺いました。
岸さん「はい、前は全日制だったんですけど、高校から高校への転入って難しくて。試験も必要だけど、そもそも定員が空いてないと入れないので、通信制にしようかなと思いました」
──そうだったんですね。その中でもルネ高を選んだ理由はどんなところですか?
岸さん「最初は、とりあえず通学できる学校ということで探していて。そこで母が、ここはどうかってパンフレットを見せてくれたのがルネ高でした。大学進学希望だったので、勉強できる学校が良かったのですが、自習室もあるし先生が熱心に教えてくれそうだと思って、ここにしました」
──入学してみて、想像と違ったことはありませんでしたか?
岸さん「思っていた以上に明るい人たちが多くて、すぐに友達ができたのが意外でした。通信制には、人見知りとか暗い感じの子が多いイメージがあって……仲良くなれる子なんていないだろうからずっと1人でいよう、と思っていたんです。
でも、生徒はみんな明るいし、先生も『一緒にごはん買いに行ったら?』みたいな感じで、前からいる子と話せるようにサポートしてくれました。それで、1日目からもう大丈夫だって思えましたね」
── それは嬉しい誤算ですね。
岸さん「そうですね。でも、通学コースってそんなに人数がいないし、みんな個人個人でやりたいことをやってるから、一人でもあまり気にならなかったとは思います」
──では、大変だったことはどうですか?
岸さん「前の学校は、進学校だったので課題がすごく多かったんです。でも通信制は、課題は出してくれても成績がつくわけじゃない。だから、通信制へ転入してから半年間くらいは、前の学校と比較にならないくらい勉強しなくなっちゃったんです。
でも、自分で焦ったらやるようになるんですよね。
そこからは計画立ててやるようにしていました。自分で考えてやらないといけないっていうのは難しかったけど、でも大学に入ったらそうなるわけだし、自主性を高められて良かったと思います」
── 自発的に取り組めるようになったんですね。では、転入という経験で他に何か自分が変わったなと思うことはありますか?
岸さん「視野が広がりましたね。偏差値で学校を選ぶと、勉強して進学するっていう同じような考えの子が集まると思うんですけど、ルネ高にはいろんな子がいるので、山口さんみたいに進学じゃない方に進む人とか、自由な考えを持ってる人もいるし、全日制にいたら会えなかった人に社会に出る前に会えて、いい経験になったと思います」
──ありがとうございます! それでは最後に、通信制高校を選ぶかどうか悩んでいる後輩にメッセージをお願いします。
岸さん「通信制に行ったからといって、勉強ができなくなるわけじゃない。私も大学に一般受験で進学できているし、勉強も先生がいくらでもサポートしてくれると思います。私自身、入る前はプライドもあって通信制を嫌だな、という気持ちがありましたが、入ってみたら不安に思うようなことは全然なかったですよ」
編集後記
それぞれの事情から、通信制高校への転入を選んだ山口さんと岸さん。インタビューでは前向きに学校生活を話してくれた2人ですが、最初は通信制高校への不安や劣等感を持っていたそう。
通信制高校という存在を知らない人もまだまだ多いと思います。しかし、人は分からないものには不安を感じやすいもの。不安が大きい、という方は、まずは通信制高校という選択について調べてみてはいかがでしょうか。
取材協力
ルネサンス高等学校
この記事を書いたのは
株式会社クリスク ライター
北海道出身。中学時代に約2年間いじめにあい不登校になりかける。上京してはじめて、学校以外の居場所や立場の違う人と接し、コミュニケーションについて考えるように。現在は自分の経験を活かし、子供の悩みや進学に関する悩みについての記事を執筆。