【22年度 高卒就職】企業の期待と高校生の希望を就活イベントで聞いてみました
生徒・先生の声
2021/08/31
高校生の就職活動を応援する求人情報サイト「ジョブドラフト」(株式会社ジンジブ運営)が、毎年主催している合同企業説明会「ジョブドラフトFes」。
ここでは、高校卒業後に就職という選択肢を考えている高校生たちが、出展する企業のブースで話を聞いたり、個人相談ブースで専門スタッフに就職に関する質問や悩み相談をしたりできます。
今回は、東京都新宿で7月12日に開催された「ジョブドラフトFes2021 in 東京」に潜入。
どんな企業が出展しているのか、高校生たちはどんな企業に注目しているのか、また今年度の就職戦線はどのような様子になっているのか、取材してきました!
会場には多種多様な72の企業ブースがずらり
この日は72の企業が出展し、会場内には相談コーナーや資料コーナーも設けられていました。また会場中央付近のステージではトークなどのイベントも催され、この日は「高校生あるある」でおなじみのお笑いコンビ・土佐兄弟が出演。「就活あるある」で盛り上がっていました。
出展している企業の業種はさまざま。建設、製造、スーパー、飲食、介護、警備といったところから、Web制作、芸能関係も。また警視庁や自衛隊のブースも出ていました。一覧によると、この日の業種の種類と数は以下のとおりです。
- 「電気工事・設備工事」 8
- 「販売」 7
- 「施工管理」「ホール・キッチン」「介護」 各6
- 「土木」「とび」各4
- 「警備員・監視員・交通誘導」 3
- 「インフラ整備」「ドライバー」「左官・内装・外装」「引越し」「自動車整備・メンテナンス」 各2
- 「イベント施工」「グラフィックデザイナー」「プログラマー」「営業」「家電・携帯販売」「公務員」「自衛隊」「芸能関係」「食品製造・販売」「清掃」「製造」「組み立て・加工」「倉庫・仕分け・商品管理」「造園」「測量・設計・CADオペレーター」「美容師」「酪農」「企画・営業」 各1
会場内は多くの高校生で賑わっていましたが、何人かのグループもあれば、一人で回っている人も。会場入口付近では、先生に付き添われてやってきたグループも多く見受けられました。服装も、制服が多めではありましたが、私服の人もちらほら。みんな入口で配布された紙袋に、各企業ブースなどでもらった資料を入れていて、多く回った人はその分袋が膨らんでいます。
各企業ブースでは、モニターで映像を流したり資料を掲示したりして自社のPRにつとめていて、詳しい話を聞きたい生徒には担当者が説明します。人気の企業では列ができているところもありました。
企業はどんな人材がほしい? 高卒採用への期待を聞きました
企業側はこのイベントでどういうことを期待し、どういう人材を採りたいと思っているのでしょうか。いくつかの企業の担当者の方に、採用について伺ったので紹介していきましょう。
【採用したいと思っているのはどんな人材?】
- 「明るく元気で、素直な人が一番です」(ハイディ日高《飲食》)
- 「チャレンジ精神のある人。当社は『正直を売る』という理念があり、目標に向かってチャレンジできる人、自分で考えて行動できる人を求めています」(Olympic《スーパー》)
- 「とにかくやる気がある人」(伊藤金属工業《土木》)
- 「興味を持ってさえくれれば、コミュニケーション能力などはまったく問いません」(ナレッジフロー《プログラマー》)
【高卒採用には力を入れていますか?】
- 「昨年から大卒と逆転し始めていて、今年は高卒採用のほうが多くなるかもしれません。役員も高卒就職が多いんです」(Olympic《スーパー》)
- 「若い人の力が必要なので、力を入れています。新しい考え方で柔軟に対応できるように、若い力を借りたいと思っています」(伊藤金属工業《土木》)
【高卒社員と大卒社員とでは、入社してからの違いはありますか?】
- 「4年早く働き始めるというところで、ハングリー精神が違うのかなと思っています。同期同士で比べると大卒のほうが大人っぽいですが、当社の役員には高卒のほうが多いので、上に行くぞという気概は高卒採用のほうが上かもしれないと思っています」(Olympic《スーパー》)
- 「大卒だから、高卒だからという見方はしていません。人として真面目に頑張れるか、一度やってダメでもまた頑張れるかということだけ。仕事に臨む姿勢が一番大事です」(伊藤金属工業《土木》)
【コロナの影響で、採用にも変化が出ていますか?】
- 「特に影響はありませんし、新卒の志望者が増えたという印象もありません。在宅ワークができない業種なので」(社会福祉法人奉優会《介護》)
- 「基本的に例年と変わらず、引き続き人は採ろうという方針です。ただ、同業他社が採用を控えるところがある影響で、志望者の数は増えています」(ハイディ日高《飲食》)
- 「去年から今年で倍ぐらい採用人数が増えていますね。そもそもコロナ前は業界自体があまり人気がなかったんです。でも、他業種に比べて売上は落ちていないし、大きな打撃も受けていないことから、安定性を求める学生が増えている印象です」(Olympic《スーパー》)
【経験がなくても働けますか?】
- 「工業高校卒のほうが入口は入りやすいかもしれませんが、経験があろうがなかろうが、大事なのはやる気と、仕事を覚えようとする姿勢だけです。今、当社にいる人間はみんな、道具の使い方もわからない素人からのスタートでした」(伊藤金属工業《土木》)
- 「福祉の学校を卒業していてもいなくても、入職してからの研修制度がしっかりしているので、経験がなくても大丈夫です。入職してから2週間は研修で、それから新卒は1ヵ月に1~2回、6年目まで研修のサポートがあります」(社会福祉法人奉優会《介護》)
- 「入社してから学べる制度を完備しているので、まったく問題ありません」(ナレッジフロー《プログラマー》)
【高校生就活者にメッセージ】
- 「当社は完全に人柄採用で、お店に立ったときにどうかを重視しています。イメージが湧くなら来てください。興味があったら、職場見学などにぜひ参加してください」(ハイディ日高《飲食》)
- 「当社は高卒でも大卒、短大、専門卒と同じスタートラインで仕事ができますし、今の世の中、学歴で人を見ることはそれほどないはずです。ぜひ自信を持って、就職活動してください」(Olympic《スーパー》)
- 「稼げる準備は整っているので、やる気を持って来てください。女性もぜひ!」(伊藤金属工業《土木》)
- 「当社は大卒も高卒もまったく同じ給料からスタートです。職歴や年齢に関係なくキャリアが積める業界なので、興味があるようでしたらこの業界の魅力をお伝えしたいと思います。まずはウェブからお問い合わせください」(社会福祉法人奉優会《介護》)
来場した高校生たちの就職イメージは?
会場に来ていた高校生にも話を聞いてみました。みなさん、どのように就職をイメージしていて、今回はどんな企業のブースを回ってきたのでしょうか。
「まだ職種は絞っていないのですが、建設など2社の話を聞きました。面白くて、若干興味が出ました。就職活動を始めたばかりで、面接などに不安はあるんですが、このイベントに来て少し安心しました。これから就職活動を頑張っていけそうです」(3年生男子)
「飲食のアルバイトをしていて作るのが楽しいなと思えたので、就職も飲食系が希望です。4社回って話を聞いて、今まで考えていなかった分野の職種もいいなと思えました。興味が出たのは、株式会社ジンジブさん(企画・運営)です。学校でも夏休みに登校して、就活準備をします。ずっと続けられる仕事がいいなと思っています」(3年生女子)
「私も飲食系が希望です。まだどういう仕事が自分に合っているのかわかっていないので、もっといろんなところの話を聞いて決めていきたいと思っています。普通科ですが、就職するのはクラスに1~2人程度ですね。大学、専門学校への進学希望が多いです。仕事をするなら楽しくやりたいので、明るい先輩がいる職場に行きたいです」(3年生女子・上記と同グループ)
7月上旬ということもあって、就職活動を始めたばかりでまだほとんどビジョンがないという生徒から、アルバイト先や学校の先輩の話を聞いて、ある程度のイメージや希望を持っている人まで、就活への取り組みはさまざまでした。
ただ、多様な業種のブースが立ち並ぶこのイベントで、考えたこともなかった職種に興味を持つ人や、何となく敬遠していた職種が面白そうだと思えたという人も。
多様な企業を知って「考える」きっかけに!
最後にこの「ジョブドラフトFes」について、主催する株式会社ジンジブの取締役社長室室長・新田圭さんにお話を伺いました。
── コロナにかかわらず、昨今の高卒就職はどのような状況にあるのでしょうか。
「今は大卒が採りにくいので、若手をどう埋めるかということで高卒がフィーチャーされる傾向があります。ただ高校生が『これをやりたい』と強い思いを持って就活できているかというと、そうでもないんです。何となく学校経由でマッチングされていく感じで、各個人の希望が通っていないことが多いと感じています。だからこそ、私たちがこのイベントを、これからどんどん全国に展開していくことが重要だと感じています。何しろ、高校生を対象とした就職イベントは私たちしかやってないので」
── 高卒採用の仕組みや、企業や学校の取り組み方には、まだまだ課題があるということでしょうか。
「新卒社員は企業にとって赤ちゃんであり希望であるはずなんですが、企業がそれを採れないということは、先の希望が見えないということになります。今、日本企業に閉塞感が漂っているのは、そういうところにあると思うんですね。私たちは高校生たちを、もっと希望を持って社会に出してあげたいんです。高卒採用市場はもっと自由度高く、高校生が考えるきっかけがたくさんあるといいなと思っています。そんなきっかけを増やすためにも、イベントにもっといろんな業種の企業に参入してもらうことが必要です」
── ジョブドラフトFesは10月にも東京・福岡・大阪で開催予定となっています。今後どのようなイベントになっていくのでしょう。
「業種・職種にはもっとバラエティーがあっていいと思っています。さまざまな業種の方とコミュニケーションをとることが、高校生にとって考える材料となります。考えて考えて、『こういう仕事がしたい』『こんな形で世の中の役に立ちたい』と思って社会に出られれば、もっと日本に希望が溢れるはずなんです。高卒採用市場もそうあってほしいし、そのためのお手伝いをこのイベントでやっていければと思っています」
希望の職種を聞かれても、まだイメージが湧かない……と思っている高校生も、イベントで多くの企業に触れることによって、意外なきっかけも見つかるかもしれません。
学校からの就職斡旋も活用しつつ、ジョブドラフトのような企業や、自治体の就活イベントも活用してみてくださいね。
※ジョブドラフトFesはオンラインでも開催されています
取材協力
<取材・文/高崎計三>
この記事を書いたのは
高崎計三
1970年、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年に有限会社ソリタリオを設立。編集・ライターとして幅広い分野で活動中。