vol.1:通信制高校のシステムを利用した「まったく新しい高校」(後篇)

生徒・先生の声

通信制高校

2016/01/27

●お話を伺った人

N高等学校校長。30年以上教育業界に身を置く。小学校教諭から塾講師、通信制高校までと、その業績は多肢に渡っている。特に17年前より携わる通信制高校の分野では、時代のニーズに合わせた数々の立ち上げを先頭に立って行ってきた。2014年よりN高等学校の立ち上げに参画。

N高等学校校長 奥平博一さん

「普通の高校生になって将来どうするの?」という強烈なキャッチフレーズで打ちだす、KADOKAWAが立ちあげたネットの高校「N高等学校」。

時代の先端に立つ企業からの発信ということで、その斬新さばかりに目がいってしまいがちだが、根底にあるのは「教育の本質とは何か」ということ。「いまを生きる子どもたちの将来のために、大人がしてあげられること」がたくさん詰まったこの学校について、奥平博一校長にお話を伺った。

溢れかえる情報のなかから適切なものを選び、生徒に提示するのが教師の新しい在り方

いまの学校は携帯電話の持ち込みを禁止していたりします。誰もネットやSNSツールの正しい使い方は教えずに、持ち込み禁止という方法で昔の性教育と同じように臭いものに蓋をしているように感じます。でも本来は現実に即してそういったことを教えてくれる授業が今の学校には必要なのではないでしょうか?

一歩社会に出たら携帯電話を使って仕事をしなければならない。N高等学校は、ネットやSNSツールの正しい使い方、溢れている情報の中からどれを取捨選択すればいいのかということを教えていきたいと考えています。

昔、学校というのはテレビをはじめとして時代の新しい物が集まっている場所でしたよね。でも、いまの学校はITの面において、子どもたちの生活環境でいちばん「古い」場所になっているんではないでしょうか? やはり学校というのは時代に合わせて変化し、いつでも子どもたちの好奇心を満たしてくれる場所であって欲しいと思っています。

自分が小学校の教員をしていた経験を元にすると、先生って次の日にやることを一生懸命予習して教えるんですね。だけど、もし授業をしている時にポロっと大事なことが抜け落ちてしまったら、子どもたちには伝わりませんよね。今はオンライン上にたくさんの良質の授業があります。だったらそれを活用すればいいのではないでしょうか?

「映像で勉強ができるんですか?」とよく聞かれるんですが、私は映像のほうが絶対に勉強が進むと思います。必要なところは繰り返し何度でも見返すことができますし、映像での授業は情報が抜け落ちることなく網羅的に作られています。オンライン上には教育の地域格差もない。

こういった状況を考えると、学校だけでなく教師の在り方も時代に合わせなければならないと思うんです。教師は世の中の動きに常に敏感であり、生徒に対して「こんなものがあるよ」とか「これを見てこうしてみよう」といった提案ができる存在になったほうがいいんじゃないか。情報を引っ張ってくるだけなら、子どもでもできます。大事なのは、その情報をどう使うか、どれと組み合わせてより効果的に用いるかということです。

これからの教師は、あまたある情報から適切なものを選んで紹介する「コーディネーター」の要素が必要なんじゃないでしょうか?頭の中にある知識を教えることには、もう、限界がきているんじゃないかと思いますよ。

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ネットだったら最新で良質な教育がどこでも受けられる

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インタビューした学校

学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校

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