【書籍紹介】高校生の寮暮らし、同居人は幽霊!? 『妖怪アパートの幽雅な日常』

本などから学ぶ

2016/12/05

『妖怪アパートの幽雅な日常 (講談社文庫) 』香月日輪/講談社

保護者と離れ、寮で暮らす……こんな状況になんとなく憧れる人もいるかもしれない。でも、もしも入った寮が、幽霊だらけだったら? 『妖怪アパートの幽雅な日常』は、そんな不思議な日常を描いた小説だ。

▼妖怪アパートの幽雅な日常 1(香月日輪/講談社)
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主人公は両親を亡くした高校生

主人公の稲葉夕士は、13歳の時両親を事故で亡くし、親戚の家に居候。高校進学をきっかけに寮のある高校を選んだが、入るはずの寮が火事で焼けてしまう。どうしても家を出たい彼が見つけ出したのは不思議なアパート。なんと幽霊たちが住み着いているのだ。

幽霊も料理を作り、会社で働く!?

本を読むだけでよだれが出そうなほど美味しそうなご飯を作る、手だけの幽霊・るり子さん。幽霊の託児所で働く美人でナイスバディなまり子さん。かわいい子どものおばけ・クリに犬のおばけ・シロ。幽霊なのに会社員として働く佐藤さんのほか、ほかにも数えきれないほどのキャラクターが登場する。

もちろん、寮には人間だって住んでいる。ちょっと変わった詩人・一色黎明や女子高生除霊師(の卵)・久賀秋音、暴走族にしか見えない画家・深瀬明に、ミステリアスな霊能力者・龍さん。幽霊だけでも多彩なのに、人間たちもかなり個性豊かだ。

みんな愉快に生きているように見えるが、ふとした瞬間にそれぞれの思いや事情をのぞかせる。夕士は寮で過ごすうちに多様な生き方に触れ、世界が徐々に広がっていく。

あなたが見ている世界は真実か?

人は、自分に見えている世界だけを信じてしまいがちだ。自分に見えていないものがあるかもしれないことや、同じ出来事にも違う解釈があることをつい忘れてしまう。

最初は不思議な存在を信じられなかった主人公の価値観の変化、視野が広がっていく様子に注目。おばけなんて、幽霊なんて、妖怪なんているわけない。そんな人にこそ読んでほしい作品だ。

(ミノシマタカコ+ノオト)

<記事で紹介した本>

▼妖怪アパートの幽雅な日常 1(香月日輪/講談社)

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※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2016年12月5日)に掲載されたものです。

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