つらいときに逃げるのは悪いことじゃないーー家や教室以外の「居場所」

本などから学ぶ

2018/09/25

「死ぬほどつらいときは、逃げて」

いじめや暴力などで苦しむ子どもに向けたメッセージとして、しばしば見かけるこのフレーズ。家や学校以外に自由に行ける場所が少なく、ほかの選択肢を知らない子どもは少なくありません。彼らにとって、「逃げることは悪いことではない」と知ることは、自分を守る方法でもあります。

しかし、「どこに逃げればいいのかわからない」「『逃げろ』と言うなら、場所を用意するべき」といった声もあります。では、居場所がなくて辛い思いをしている子どもたちが安心できる場所はどこにあるのでしょうか。

学校の「保健室」はいつでも誰でも駆け込める場所

教室に居場所がないと感じたとき、まずは学校の保健室へ駆け込むのは選択肢のひとつです。保健室は怪我や病気のときに休む場所でもありますが、心のダメージをケアする場所でもあります。

保健室の先生は、正式には養護教諭と呼ばれ、教科指導を行う教諭とは異なる専門資格を取得しています。そのため、生徒の話を聞くことも保健室の先生の大切な役割。保健室へ行くことに罪悪感を感じる必要はなく、いつでも誰でも駆け込んでいい場所なのです。

学校の代わりに民間団体が運営する「フリースクール」へ通う

フリースクールは、なんらかの理由で学校に行かない子どもの学習支援を行うための民間施設です。フリースクール自体で卒業資格は得られないため、義務教育期間は小・中学校に在籍した状態でフリースクールに通います。また、在籍している学校長の許可を得ることで、フリースクールへの通学を在籍校の出席扱いにできるのもポイントです。なおほとんどの場合、学校長の許可は得られるといわれています。

フリースクールでは、行事や教育カリキュラムが用意されていることが多く、なかには全寮制のフリースクールも。また、不登校の経験がある大人や大学生が運営に携わっているスクールもあります。基本的には、学校以外の居場所を提供するために運営される場所ですが、学校復帰を目的としている施設もあるため、まずは気になったフリースクールの説明会に参加してみるのがおすすめです。

学校の代わりに行政が運営する「教育支援センター」へ通う

教育委員会などが運営する教育支援センターは、公的機関のため、無料で通える場所です。行政が運営していることもあり、フリースクールと比べると学校への復帰を促す傾向があるといわれています。

フリースクールと同様、学校に在籍した状態で通い、学校長の許可を得ることで、教育支援センターへの通学が在籍している学校への出席扱いにできます。なお、フリースクールと同様にほとんどの場合で、学校長の許可は得られるといわれています。また、教師経験者が働いているケースが多いため、経験者だからこその学校との関わり方や学習指導が望めるという特徴があります。

また、開室時間は施設により異なりますが、自分の判断で登校日や登校時間を決められるため、無理のない範囲で通えます。進路説明会や社会科見学などの行事もあり、同じ思いを持つ友達ができるチャンスも。

もし緊急だと感じたら、「児童相談所」へ

もし家族や友達、学校など誰にも相談ができない緊急のトラブルで居場所がなくなってしまったときには、各都道府県の児童相談所へ連絡するのも選択肢のひとつです。電話の相談窓口もあり、18歳以下の子ども自身からの連絡も受け付けています。自分の判断で行くことができるので、どうしても助けを必要としたときの連絡先として覚えておいてください。

話を聞いてくれるカウンセラーが常駐しており、漫画やゲームの置いてあるプレイルームがある児童相談所もあります。

逃げることは勇気が必要なことだけど

今回は一部を紹介しましたが、ほかにも民間企業やNPOが運営するスペース、図書館など、家や教室以外に居場所を探す子どもたちのために用意された場所はたくさんあります。

教室の中や自宅、どこにも味方がいないと感じてしまうとき、自分には居場所がないと思ってしまうかもしれません。生きる意味さえわからなくなるときもあるかもしれません。

しかし、すべてを理解されなくても、あなたの抱える悩みを理解しようとしてくれる人は必ずいます。他人に助けを求めることは、とても勇気がいることだと思いますが、「死ぬほど辛いときは、逃げて」は、そんなあなたへの大人からのメッセージであり、願いでもあるのです。

(執筆:橋本結花 編集:鬼頭佳代/ノオト)

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2018年9月25日)に掲載されたものです。

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