繊細でも鈍感でも生きづらい――自分の感受性を大切にするためのヒント本5選
本などから学ぶ
2019/06/27
感受性とは、誰もが持つ「外界の刺激・印象を受けいれる能力」や「物を感じとる能力」のこと。しかし、その強弱は人によって違うもの。それが生きづらさにつながっている場合があります。
自分の感受性を大切にしながら生きる……。その手助けをしてくれる本を5冊選んでみました。
『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』(武田友紀/飛鳥新社)
HSP(Highly sensitive person、とても敏感な人)専門カウンセラーで、自身もHSPである著者が、HSPの簡単な診断、HSPの特徴やよく感じる悩み、HSPが生きづらい理由と対処法までまとめた1冊。
HSPとは、アメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念で、生まれつき刺激に敏感で、周りからの刺激を過度に受け取ってしまう人を指します。本書では、HSPを「繊細さん」と親しみを込めて呼んでいます。
寝室にはなるべく物を置かない、性能のいい耳栓をするといった刺激を物理的に防ぐコツや、本当になんの予定もない休日をつくるなど心身を休ませる方法など、疲れやすい繊細さんをラクにしてくれる実践的なアドバイスがいっぱい。
「もしかしたらHSPなのかな?」「感受性が強くて生きづらい」という人はぜひ本書を手に取ってみてください。
▼『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4864106266/
『生きやすい』(菊池真理子/秋田書店[2019年])
人と会うと疲れる。初対面よりも“二度目に会ったとき”の距離感がわからない。そんな漠然とした「生きづらさ」を、著者自身の日常を通して描くコミックエッセイ。コマ割りや文字のバランスが絶妙で、絵もかわいらしく読みやすい作品です。
思わず二度見したくなるほどポジティブなタイトルですが、目次には「眠れない」「悲しいニュースに敏感すぎる」「服を買うのが苦手」「拒絶されると心が死ぬ」など、後ろ向きになりがちなテーマがこれでもかと並んでいます。
本作の最大の特徴は、根本的な「生きづらさ」が作中でほとんど解消されないところ。だからこそ、「自分だけじゃないんだ」と似た葛藤を抱えている自分を肯定されたような安心感が残ります。
生きづらさを受け入れて生きていく。その気づきこそが「生きやすさ」につながるのかもしれませんね。
▼『生きやすい』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4253107419/
『見えない違い 私はアスペルガー』(著・ジュリー・ダシェ、訳・原正人/花伝社)
自身も、アスペルガー症候群であるフランス人著者による、自伝的バンド・デシネ(フランス語圏の漫画)。
主人公は27歳の女性・マルグリット。自分の決めた習慣を守れないと居心地が悪くなるし、予想外の出来事が起こるとパニックになってしまいます。空気が読めず、相手に合わせるのが苦手で、職場の人間関係や恋人との関係もギクシャクしがち。感覚過敏の傾向があり、騒音に耐えられず、身につける衣服にも細心の注意を払わなければなりません。
そんな生きづらさを抱えたマルグリットがアスペルガー症候群と診断され、自分らしさを獲得していくまでの3年間を描いています。
他人の足音やキーボードの音、おしゃべりの声など、マルグリットにはさまざまな音がどう聞こえているのか。まさに「見えない感覚」を、背景の色や台詞の配置で的確に表現しています。アスペルガー症候群を、「知る」だけでなく「感じられる」作品です。
▼『見えない違い 私はアスペルガー』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4763408658/
『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(著・姫野桂、監修・五十嵐良雄/イースト・プレス)
自身も発達障害であるかもしれないと感じている著者が、22人の発達障害当事者に取材し、リアルな生きづらさを収録したルポルタージュ。
相手の気持ちを考えられず思ったことを口に出しまう青年、雑談が苦手で職場の人とのコミュニケーションがうまくいかず何度も転職を繰り返す女性など、さまざまな「生きづらさ」を抱えた当事者が登場。当事者たちの感受性が極端に敏感、または鈍感である様子がリアルに描かれています。
集団にうまくなじめない、組織で働くことに適応できない……。日常の中でそんな「生きづらさ」を抱えている人たちがいることを理解する・尊重するきっかけを与えてくれる1冊です。
▼『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/478161700X/
『上手な心の守り方 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント』(枡野俊明/三笠書房)
禅僧であり、庭園デザイナーでもある著者による、99個の禅的「心のセルフケア法」。見開き1ページで1フレーズとその解釈を紹介しています。他の著書に比べ、禅独特の専門用語をあまり使わず、わかりやすく書かれているのも本書の特長です。
心の上手な守り方は、心を「強く」するのではなく、状況や相手に応じて自由自在に変わっていけるよう「柔軟に」することだと著者は言います。禅では、そういう心のありようを「柔軟心」と呼ぶそうです。
目次には、「自分を『全否定』しない」「不完全でよしとする」「まとまった休みをつくる」など、心がふわりと軽く、柔らかくなるヒントが並んでいます。感情コントロールが難しいときや、心がすり減っていると感じるときに、ピンとくるページを読んでみてください。
▼『上手な心の守り方 不安、悩み、怒りをこじらせない、99のヒント』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4837985874/
自分の「生きづらさ」を知る
目には見えなくても感じる「生きづらさ」や、自分をうまくコントロールできないもどかしさ。感受性の強い人ほど、多いのではないでしょうか。
自分はどのような特性を持っているのか、どんなことが得意で苦手なのか、困りごとにはどう対処すればよいのか。さまざまな生きづらさを知り、自分自身への理解を深めるヒントにしてみてくださいね。
(企画・選書・執筆:水本このむ 編集:鬼頭佳代/ノオト)
※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2019年6月27日)に掲載されたものです。