「ありのままでいい」と簡単に言わないで――見た目コンプレックスヒント本5選
本などから学ぶ
2019/08/29
自分の目や鼻の形、容姿を好きになれない。どうしても気になり、沈んだ気持ちになってしまう。
そんなとき、周りの人から「そんなに気にしなくてもいいのに」「ありのままのあなたで大丈夫」と言われても、言葉通りに受け止められず、困惑することも……。
今回は、見た目のコンプレックスに悩んだら手に取ってほしい5冊を紹介します。気にしなくていいのに――そんな呪文から心が解き放たれるかもしれません。
『顔ニモマケズ ―どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語』(水野敬也/文響社)
生まれつき、または事故や病気で、外見に傷やアザなどの症状がある。そんな彼ら・彼女らが「見た目」を理由に差別や偏見を受け、就職や人間関係などで困難に直面することを「見た目問題」といいます。
本書は、顔や外見に症状を持つ当事者9名が登場する、「見た目問題」のルポルタージュです。耳馴染みのない言葉も、それぞれが分かりやすく語ってくれます。
リンパ管腫や動静脈奇形、トリーチャーコリンズ症候群などにより、人とは違う見た目に悩みぬいてきた9人の言葉には、「ポジティブ」という言葉では言い表せない深みがあります。
著者の問いかけと、読み手が抱くであろう疑問が見事にリンクしていて、まるで自分が実際にインタビューしているかのように読み進められます。
「悩み続けてもいい」「悩みはあってもいい」と、そっと背中を押してくれるはず。見た目にコンプレックスを持つ人だけでなく、いじめに悩んでいる人や他者とのコミュニケーションが苦手な人、生きる勇気を持ちたいと願う人に強くおすすめしたい一冊です。
▼『顔ニモマケズ ―どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4905073642/
『こんな私が大嫌い!』(中村うさぎ/イースト・プレス)
「自分嫌いのプロ」と称する著者の体験談に基づくエッセイ。そんな著者が提案する「自分嫌いじゃなくなる方法」は、「自分好きになるのではなく、自分を好きでも嫌いでもなくなる」こと。その理由を、拒食症で命を落とした歌手のカレン・カーペンターや、美容整形を受けた著者自身を例に教えてくれます。
コンプレックスに悩む読者に寄り添うようなフランクな語り口調の本書は、綺麗事なんて聞きたくない、という中高生に手に取ってほしい一冊。また、ほとんどの漢字にふりがなが振られているので、自分について考え始めた小学生にもおすすめです。
「あなたが自分をイジメなければ、あなたはきっと幸せになれる」「あなたの『自分嫌い』にも、いつか絶対に『出口』の見える日が来る」など、勇気づけられる数々の言葉に出合えるはず。
▼『こんな私が大嫌い!』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4781690165/
『ブスの自信の持ち方』(山崎ナオコーラ/誠文堂新光社)
容姿差別に対し、真正面から向き合うエッセイ。キャッチ―なタイトルにどきりとしますが、著者の真摯な姿勢と、「社会を変えたい」という思いが伝わる作品です。
「容姿によって生きづらさが生じるのは、本人の問題ではなく、社会の問題だ」「自分で決めた目標に向かって、自分らしい努力をこつこつやる以外に、生きている間にすべきことはない」など、心に響く言葉が散りばめられています。人を問題にするのではなく、問題を問題視する。その上で、現代社会にはびこる差別や生きづらさについて考えることが大切なのだと気付かされます。
コンプレックスに悩んでいる。生きづらさに押しつぶされそうになる。本書は、そんな時に前を向く勇気をくれる、あるいは重たい心を軽くしてくれる、“お守り”のような存在になってくれることでしょう。
▼『ブスの自信の持ち方』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4416519567/
『鏡の前で会いましょう』(坂井恵理/講談社)
「不動明王に似ている」とからかわれ、ブスと言われながらも明るく前向きに生きている明子(あきこ)と、美人だけど内向的で人付き合いが苦手な愛美(まなみ)。学生時代からの友達である2人の人格がひょんなことから入れ替わってしまう漫画です。
絵柄がかわいく、どこか身近に感じられるキャラクターたちが登場する本作。見た目に紐づく性格や恋愛、友人、家族関係まで描かれ、ストーリーが進むほど深く考えさせられます。
美醜にとらわれずに生きるのが難しいこの世の中で、自分を好きになること、自分のペースで生きることをやさしく説いてくれる作品。エンターテインメントとしても楽しく読めるので、ぜひ気軽に手に取ってみてください。
▼『鏡の前で会いましょう(1)』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4063804968/
『見た目でわかる外見心理学 図解雑学』(齊藤勇/ナツメ社)
人間の心理と外見の関係について、イラストや図版を使い、心理学の観点からわかりやすく教えてくれる本書。「見た目」で人を判断してしまう心理学的根拠から、自己評価と他者からの評価の違い、衣服やメイクによる効果まで、「見た目」や「外見」が持つ力が解説されています。
「見た目で人を判断してはいけない」と頭では分かっていても、見た目の第一印象は大きいもの。実は、人間の五感のうち、一番情報量が多いのが視覚で、その割合は約9割だそう。しかし、「話し方や振る舞い、表情で第一印象を覆すことも可能」と著者は述べます。
知っていて損はない知識を得られる一冊。見た目コンプレックスについて客観的に考えたいときに手にするとよいでしょう。見開きで、1テーマを解説しているので、気になるところだけ読むのもおすすめです。
▼『見た目でわかる外見心理学 図解雑学』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4816345876/
折り合いをつけられたらそれでいい
「ありのままのあなたで大丈夫」と言われても、それができたら心を痛めるほど悩んだり、苦労したりしませんよね。
今回紹介した5冊は、コンプレックスを受け入れる方法ではなく、どう折り合いをつけていくかを教えてくれるものです。他の誰でもない、あなたの生き方と出合うためのヒントを本から見つけてみてください。
(企画・選書・執筆:水本このむ 編集:鬼頭佳代/ノオト)
※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2019年8月29日)に掲載されたものです。