中高生向けインターンが増加中! 大学生インターンとはどう違う?
先輩に聞く
2024/06/18
大学生が就職活動の一環として企業が提供するインターンシッププログラムに参加することが一般的になってきた近年。今では中学生や高校生を対象にしたインターンシップを開催する企業も出てきています。
しかし、リアルに就職を意識しながら参加する大学生のインターンと、すぐに社会に出るわけではない中・高生のインターンには、どのような違いがあるのでしょうか? もちろん、高卒就職を考えてインターンを募集する企業もありますが、最近では「職業体験を通じて将来のキャリアを考えたい」という中・高生のニーズも高まってきているようです。
今回は、2019年から毎年、中・高生向けインターンシップ「THINK FLAT CAMP U-18」を開催している株式会社ネットプロテクションズを訪問し、企画者の赤木俊介さんに話を伺ってきました。
熱量を持って話せる仲間に出会える場
株式会社ネットプロテクションズは決済サービスを提供する企業で、10年以上前から新卒採用の一環として大学生向けのインターンシップを開催してきています。そんな中、中・高生向けインターンシップを新たに開催することにしたのには、どんな背景があったのでしょうか。
「インターンシップでは、学生たちに『自分たちが“つぎのアタリマエ”として実現したい社会に近付くための持続可能な仕組みを立案せよ』という課題を出し、5日間かけてチームで考え、プレゼンしてもらっています。その中で、参加した大学生から『人と本気で向き合い協創する難しさと素晴らしさを理解できた』といった感想が聞かれたのですが、熱量を持って周りと協力しながらアイデアを生み出すということなら、もっと早くから学べたほうが、次世代リーダーを増やせるのではないかな、と思ったんです」
そこで、大学生で年間3〜4ターム実施していたこのプログラムを、中・高生を対象とした「THINK FLAT CAMP U-18」として、夏休みに3ターム実施することに。参加者は毎年30〜50人ほどで、プレエントリーした300人ほどの中からエントリーシートによって選考されるそうです。
「応募してくる生徒は7〜8割が高校生、2〜3割が中学生です。エントリーシートでは小論文を書いてもらうのですが、文章力だけでなく、論理的思考ができるか、うまくいかないときにも乗り越えられるような熱量があるのかを見ています」
首都圏の学校に通う中・高生が大半ではあるものの、地方から応募してくる生徒や、キャリア教育が充実した通信制高校の生徒からもよく応募があるとのこと。
「多くの生徒が、エントリーシートではSDGsやさまざまな社会課題に取り組みたいと書いていますが、実際には学校では出会えないような熱量を持って話せる人に出会いたいとか、真剣に話せる環境がほしいというニーズもあるのではないかなと思っています」
学校の勉強や部活だけでなく、意欲的に取り組めることを求めている中・高生が多いようです。
学校とは違う人間関係の中で、どうチームに貢献するか
5日間のインターンシップでは、5人ずつのチームに分かれ、それぞれのチームでビジネスアイデアを出し合ってまとめていきます。プレゼンは2日目と5日目の2回。
「初日から2日目の午前までにある程度アイデアを固めてプレゼンをして、フィードバックを受けて5日目に向けて練り込んでいきます。企業側も時間や場所、人件費などのコストをかけて真剣に取り組んでいるので、生徒に対して厳しい指摘をすることもありますが、中・高生たちも懸命にアイデアを絞り出してきてくれます」
「就職活動に有利になるように」とか、「ビジネスとして稼げるか」という視点があまり入ってこない分、ピュアな発想が多くて面白いと赤木さん。
「親子ゲンカをより建設的にするアプリとか、選挙における若者の投票率を高めるためのアイデアなど、プレゼン内容はさまざま。プログラムは大学生向けのインターンシップと同じです。最初は中・高生向けにレベルを下げようかとも考えましたが、それは大人が中・高生をナメているようなもの。まずはやってみて、難しければレベルを下げればいいと思いスタートしました。実際にやってみたらレベルを下げる必要はまったくなく、知識量や経験が優れたアイデアを生むということはないんだなと、改めて気付かされることにもなりました」
また、短い期間ながらも、5人というチームの中でどのようなポジションをとるかを考えながら行動する中で、中・高生たちが成長する姿も見られると言います。
「学校ではリーダーのポジションにいる子も、もっと強いリーダーシップがとれる子がいたら、どう立ち回って貢献するかを考えなければいけません。普段の学校の仲間とは違う環境でどのように仲間と関わっていくか、のんびり様子をうかがっているとすぐに5日間が終わってしまいます。最初はおとなしくしていた子が急にホワイトボードの前でみんなの意見をまとめ始めるといった光景も見られて、その成長に驚かさることも多いです」
インターンシップが終わった後も継続してアイデアを磨き、ビジネスコンテストに参加するチームもあるのだとか。「学校では意欲が高すぎて浮いてしまうような子が、ここでは友達をつくれたと話してくれることもあります」と赤木さんが言うように、学校以外の広い世界に一歩踏み出してみることで、自分を受け止めてくれる場所があると気づけたり、自分ができることを新たに発見できたりするのかもしれません。
本気で中・高生とぶつかることで従業員も成長
では、インターンシップを受け入れる企業にとって、新卒採用と関係のない中・高生を対象にするメリットは何かあるのでしょうか。
「やってみて感じたのは、インターンシップに関わる従業員の成長です。生徒たちに5日間つきっきりで一緒に議論する時間も多いのですが、大学生と比べて知識や語彙力がまだ少ない中で、本気で取り組んでいる中・高生にどう説明していくか、かなり工夫が必要です。私たちにとっても、人に伝える力が試される場所になっているんですね。さらに、先ほども言ったように、知識量や語彙力、文章力など以外では、大学生も中高生も差がないことに気づけたのも大きいです。大卒のほうがいいという価値観が大きく変わりました」
就職を目的とした大学生向けだけでなく、自ら成長を求める中・高生向けのインターンシップが広がっていけば、もっとたくさんの次世代リーダーを育てていくことができるのではないかと赤木さんは言います。
「学校では生徒一人ひとりに個別化したキャリア教育を行うのは難しいので、社会全体で多角的に育てていくということが大切だと思っています。学校と連携してキャリア教育を手がけるNPOや工業高校などと提携する地方の企業は増えてきていますが、まだまだ都内の企業では少ないのが現状です。『THINK FLAT CAMP U-18』の見学に来られる学校の先生もいますが、学校と協業して子どもたちを育てていく企業が増えていったらいいなと思いますね」
インターンシップには社外の人がメンターとして参加することもあるそうで、興味のある企業や学校教員はぜひ連絡してほしいとのこと。
また、「THINK FLAT CAMP U-18」は毎年5月にプレエントリーが終わりますが、夏休み中に中・高生が参加できるインターンを開催している企業やNPOはいくつかあるので、検索してみてはいかがでしょうか。
取材協力
株式会社ネットプロテクションズ
採用総括責任者 赤木俊介さん
np_university@netprotections.co.jp
<取材・文/大西桃子>
この記事を書いたのは
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。