どうしてユーチューバーになったの? YouTube【とある男が授業をしてみた】の葉一さんインタビュー
先輩に聞く
2017/01/19
勉強をする意味がわからなくなったり、学校を休んでいるうちに授業についていけなくなったり……ちょっとしたきっかけで勉強を苦手に感じてしまうことは少なくないだろう。自分だけではどうしていいかわからないけど、塾に行ったり家庭教師をつけてもらうのはお金もかかるし親に相談が必要だし……。
そんな君にオススメなのがYouTubeのチャンネル【とある男が授業をしてみた】だ。教育ユーチューバー葉一(はいち)さんが、小学3年生~高校生までの勉強内容の授業を動画で配信している。
「教え方がわかりやすい!」「私にとって家庭教師みたいな存在」と中高生に大人気だ。現在チャンネル登録者は20万人以上、視聴回数は7000万回を超えている(2017年1月現在)。
葉一さんはなぜYouTubeで授業を始めたのか? 話を聞いてきた。
学校や先生が嫌いだった中学生時代
――教育ユーチューバーとして、動画の投稿を始めたきっかけを教えてください。
塾講師の仕事をしていて気づいたのが、月謝が高くて通えない子が想像以上に多くいること。保護者の方から「楽しそうに勉強しているから続けたいけど、月謝が高くて……」という声もありました。家庭の所得格差によって、子どもが教育を受ける機会が失われてしまうことを実感したんです。
それならより多くの人が見ることができるYouTubeに授業を投稿しようと思ったのが、ユーチューバーになったきっかけ。YouTubeを選んだのは、僕自身YouTubeが大好きだから(笑)。その後、塾講師の仕事を辞めて、教育関係の比較的自由に働ける仕事に転職して、副業としてYouTubeに動画投稿をしています。
――塾の先生だったんですね。もともと先生になりたい思いは強かったんですか?
僕は高校に入るまで学校や教師が嫌いでした。中学生のときにいじめにあっていたからです。陰口を言われたり、聞こえるように悪口を言われたりしていたので、学校に行くのがしんどかった。先生も信頼していませんでしたね。
でも、高校に入学して素敵な先生に出会いました。口が悪くて怖い先生でしたが、ほかの表面を取り繕っているような先生たちと違い、生徒の話を真剣に聞いてくれて、正面から向き合ってくれる人でした。
そして、何より授業がとってもわかりやすかったんです。おかげで、数学の成績が伸びました。そのときに「この先生のようになりたい」と思って勉強を頑張り、教育学部に進学しました。
――大学卒業後、学校の先生にならなかったのはなぜですか?
教員免許は取得したんですが、教育実習に行ったときに、思っていた仕事内容と違うなと感じて。学校の先生の仕事は生徒と触れ合う時間以外の書類作成などの事務作業がたくさんあることを知ったんです。
僕は恩師に支えてもらったように、子どもたちを精神的にフォローしたかった。なので「学校の先生以外にも、それが叶えられる方法はあるんじゃないか」と考え、学校の教師とは違う道を進もうと決めました。
――大学卒業後はすぐに塾講師の仕事を始めたんですか?
いえ、卒業後はまず営業の飛び込みの仕事を始めました。生徒たちの精神的な支えになるためには、コミュニケーションのプロになる必要があるなと。営業の飛び込みは、コミュニケーションの能力を高めるのに最適だと思ったからです。その後塾の講師の仕事を始めました。
口コミやシェアでどんどん拡散
――どのような人に向けて動画を撮影していますか?
教科書の内容から動画をつくっているので、いろいろな用途で使ってもらっていますね。授業でつまづいてしまったときやテスト前の復習、受験勉強の補助として使ってもらっているようです。あとは学校に行きたくない、行けない子も見てくれています。
――初めて投稿したのが2012年とのことですが、4年経過して反響はいかがですか?
真剣にいいものを作れば、みんな見てくれるんだなと実感しています。僕は自分の動画の広告を出したことがないんです。見てくれた子や親御さんたちが、ネット上でシェアしてくれたり、学校で「この動画わかりやすいよ」と広めてくれたりして、再生数がどんどん上がっていきました。
――授業動画はだいたい10~20分のものが多いですが、どのくらい時間をかけて作っていますか?
準備を含めるとだいたい5~6時間かかりますね。言い間違えたら撮りなおしをしているので、収録後にはのどが痛いこともあります(笑)。
――授業の動画だけではなく、勉強している風景が流れる「一緒に勉強しようシリーズ」や悩みや質問に答える「はいちのだらだラジオ」なども投稿されていますね。まるで学校の休み時間のようだなと思います。
そうですね、勉強の手助けや息抜きになればと思います。勉強の悩みはもちろん、家族や友人関係の悩みを聞くことも多いです。最近はありがたいことに個別にもらうメッセージやメールの量が増えてきたのですが、すべてに返事ができなくなってしまって……それは申し訳ないですね。
――これまで相談を受けた中で、印象的な出来事はありましたか?
学校でいじめにあって登校拒否になり、相談のメールをよく送ってくれていた子がいました。しばらくメールのやり取りをしていましたが、だんだんと相談の頻度が少なくなっていったんです。
それは悪いことでは決してなくて。もらったメールを読んでいると「少しずつ登校できるようになって、学校が楽しくなってきた」というようなポジティブな内容が増えてきていました。
連絡がだんだんなくなっていくのは、実生活が楽しくなってきた証拠でもあるのでうれしかったですね。
――最後に一言お願いします。
僕は中学生のとき、いじめられてしんどくて学校も嫌いで、「なんで生きてるんだろう」と思っていました。みんなもそれぞれ悩みがあって、「死にたいほどつらい」と思うこともあると思う。
でも、人に出会ったり、環境が変わったりすることで、いつか笑える日は絶対に来ます。まずは目の前のことを頑張って、前に進んでいきましょう!
(松尾奈々絵/ノオト)
取材協力
葉一
YouTubeで授業動画をアップする教育ユーチューバー。登録者は20万人以上、視聴回数は7000万回を突破。授業動画のほかに、ゲーム実況動画の配信も。
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCzDd3Byvt91oyf3ggRlTb3A
※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2018年4月9日)に掲載されたものです。