お笑い芸人グランジ・遠山の学生時代は? 未来の鍵(LOCK)を握るラジオの学校「SCHOOL OF LOCK!」

先輩に聞く

2017/03/28

「起立」「礼」「叫べ―!」の号令で、平日22時に“開校”するラジオの学校「SCHOOL OF LOCK!(以下SOL)」。TOKYO FMとJFN38局ネットで放送中の10代向け人気番組だ。2005年に始まり今年で12年目を迎える。

番組は「とーやま校長」ことお笑いトリオ・グランジの遠山さんと、「あしざわ教頭」ことお笑いタレント・パップコーンの芦沢ムネトさんがパーソナリティーを務め、毎回人気アーティストがゲストで登場。生放送授業では、番組掲示板に書き込んだリスナーと電話で会話も行う。毎回授業テーマが変わり、音楽の話や学校での悩み、選挙権の話など、さまざまな内容を10代のリスナーに届けている。

番組のコンセプトは「未来の鍵を握る学校」。今回は、校長の遠山さんに学生時代を振り返ってもらいながら、10代で見つけた「未来の鍵」は何だったのか、話を聞いてきた。

友達としゃべりに行くイメージでラジオに向かいます

――今年の3月で、校長に就任してから7年経つんですね。

歴代パーソナリティーの中で、いつの間にか自分が歴代最長になっちゃいました。自分としては校長を死ぬまで続けたい。歳とって校長って呼ばれたら、本当の校長先生みたいですね(笑)。

――10代のリスナーからは、悩み相談を受けることも多いと思います。相談を受けるときに大切にしていることはありますか?

悩み相談などで答える人って、何でも知っているすごい人と思うかもしれないけど、僕は偉い人でもないし、すばらしい答えも持っていない。だから「相談に乗ろう」という心構えじゃなくて、友達としゃべりに行く感覚でラジオに向かっています。

リスナーが困っているというより「友達が困ってるから話を聞こう」という感じ。普通の友達と同じで、立場も経験も違うから、話を聞いても悩みがいまいちピンとこないこともありますよ。そういうときは、想像力を働かせて、自分がその立場ならどう思うのかを考えます。

悩みを聞いて「こうすればいいんじゃないか」って、未来につながるきっかけを一緒に見つけることはできるかもしれない。でも、最終的にどうするかの選択は、本人しかできないんですよね。未来につながるドアの鍵を見つけても、ドアを開けるタイミングも、どれくらい開けるのかも、全部本人が決めること。僕らは後ろで見守ることしかできないと思っています。

劣等感と挫折を味わった10代

Twitterアイコンは、中学1年生当時の遠山さん本人の写真

――10代の頃は、特に進路に迷ったり、自分の理想に追いつけずに苦しむこともありますよね。遠山さん自身は、10代の頃に悩んでいることはありましたか?

小学生の頃は、ださいメガネをかけている自分が本当に嫌でしたね。当時まだ、メガネはおしゃれアイテムじゃなかったんですよ。例えば好きな女の子に告白しようと思っても「告白してOKもらえたら、僕の一番好きな女の子の隣にださいメガネ野郎が並ぶんだな」と思うと、告白すらできない。このメガネに合った洋服を着るから、おしゃれもできないし。

――今聞いたらほほえましいようなエピソードですけど、10代にとって、外見は重要な問題ですよね。

自意識過剰だったんですよね。周りの目を気にしすぎていました。目が悪いことを親にあたって、親の前で眼鏡を投げたんですけど、丈夫なメガネを買ってもらっていたから、それでも壊れなくて(笑)。結局、高校3年生までそのメガネをかけつづけました。

ほかにつらかったのは、野球で挫折したときですね。僕は小学生のとき、硬式の野球チームに所属して、ピッチャーをやっていたんです。周りに比べて成長が早かったので、小学校6年生で身長が170センチあって。コントロールの良い球が投げれたら、周りは誰も打てないような状態でした。

でも、周囲の子が成長するにつれ、身体的にも技術的にも追い抜かれてきたんです。気持ちもだんだん折れてきて、中学2年生のときに野球を辞めてしまいました。けれど、高校に入学するときに「このまま中途半端に野球を辞めたら、ほかのことも中途半端にしかできない人になるんじゃないか」って思って。大好きな奥田民生さんを真似して伸ばしていた髪を坊主にして、野球部に入部しました。

結果、全然ダメで。ブランクもあるから思い通りに身体を動かせないし、昔より下手くそになっているし。昔は「みんなより俺の方がすげえ」っていう自信があったんだけど、それが完全に無くなりました。自分の力の無さを自覚して……。自分の本当のレベルに気づいた時はしんどかったです。部活に行きたくなくなりました。

――学校に行きたくなくなることはなかったですか?

それはなかったですね。高校入学して3カ月たって、「部活楽しくないな」と感じているときに、タイミングよく文化祭があったんです。小さいころからお笑いが好きだったので、自分でネタを考えて、ステージに立ってライブをしました。そしたら、最優秀賞をもらって。文化祭の閉会式にも登壇して、ものすごくウケたんです。人前で笑いをとれるのって、めちゃくちゃ楽しいなって感動しました。

次の日に野球部の先輩が「めっちゃ面白かったなぁ」ってほめてくれたのですが、野球部の監督からは「出しゃばりすぎだ」って怒られて。そのときに「部活はもういいや」って思えたんです。監督が嫌いになったとかではなく、「俺はお笑いがやりたいんだな」と気づきました。それで、退部届を出したんです。

好きなことに夢中なら、劣等感なんてどうでもよくなる

――遠山さんにとって、劣等感を抜け出す鍵はお笑いだったんですね。

そうですね。でも、劣等感はいまだにありますよ。吉本の会社に入るのに、顔パスじゃなくて、受付でパスをもらわなきゃ入れないこととか(笑)。でも、お笑いとか音楽とか、好きなことに夢中になっているときって、劣等感なんてどうでもよくなるんですよ。だから、僕にとっての鍵は「好きなもの」なんだと思います。

10代のみんなにも、好きなものはずっと好きでいてほしい。好きなものが将来仕事になる可能性ってめちゃめちゃ高いと思うんです。僕は結局、中学校と高校のときに出会った「お笑い」「音楽」「ラジオ」がいま仕事になっているので。

――最後に一言お願いします。

今ちょっとしんどいなって思っている子には、まだまだ世の中にはたくさん楽しい場所があることを伝えたい。大人は自分で働いてお金稼げるから、好きなもんを買えるし、好きな時間に寝れるし、好きなところに行ける! もうちょっと踏ん張ればそういう世界も待っているから。はやくこっち来いよ!

(松尾奈々絵/ノオト)

取材協力

グランジ 遠山大輔

お笑いトリオ・グランジのボケ担当。FMラジオ「SCHOOL OF LOCK!」ではパーソナリティーを務める。DVD「グランジ BEST NETA LIVE」ユニットコントライブDVD「できる7人」発売中。

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2017年3月28日)に掲載されたものです。

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