ゲームディレクターになるには? 「スパイク・チュンソフト」打越鋼太郎さんインタビュー
先輩に聞く
2017/08/17
スマホゲームやテレビゲーム、PCゲームなど、世の中にはさまざまなデジタルゲームが流通している。そうしたゲームの制作において、全般的な指揮を執るのが、ゲームディレクターだ。
ゲームディレクターとは、どんな仕事なのか? どうすればなれるのだろうか?
ゲームの企画・開発・販売を行う「スパイク・チュンソフト」のゲームディレクターで、テレビゲーム「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」「Punchline」「Ever17」や、リアル脱出ゲーム「アイドルは100万回死ぬ」などのシナリオライターでもある打越鋼太郎さんに話を聞いた。
ゲームディレクターはどんな仕事をする? プロデューサーとの違いは?
――まず、ゲームディレクターはどんな仕事をするのか教えてください。
ゲームディレクターは、ゲームの制作指揮を担当します。
ゲーム制作現場の指揮系統の体制としては、まずトップにいるのがプロデューサー。資金集めやメンバー集め、宣伝施策などを考えます。ディレクターはその下で、ゲームの制作を統括する役割です。
ストーリー・世界観を考えるシナリオライターや、キャラクターや背景などのビジュアルを作り出すイラストレーター、CGクリエイター、ゲームを動かすためのプログラムを組むゲームプログラマーなど、さまざまな専門家が携わって、ひとつのゲームが生み出されるのですが、それぞれに適切な指示を出すのがディレクターの仕事と言えるでしょう。
――ゲームのテーマやコンセプトは、誰が発案するのでしょうか?
その時々で違いますが、プロデューサーかディレクターが発案することが多いと思います。たとえば、「ZERO ESCAPEシリーズ」はディレクターとして僕がゲームのコンセプトを考えました。
――ゲーム制作の流れを教えてください。
僕の場合は、シナリオライターを兼務しています。そこで、まずゲームのおおまかな全体像を決めて、外部の複数人のシナリオライターさんにもお願いしつつ、自分もシナリオを執筆します。それと並行して、グラフィックやプログラミングなどのチームを組んで、制作を進行していきます。
制作を進める上でグラフィックやゲームシステムが、最初に決めた世界観とマッチしているかどうかを確認したり、プロジェクトの予算やスケジュールなどをプロデューサーとすり合わせたりするのもディレクターの僕の仕事です。
大学中退、ヨーロッパで一人旅の後、フリーター生活。打越さんがゲームディレクターになるまで
――打越さん自身の経歴を教えてください。
僕は、紆余曲折あって、なぜかゲーム業界に流れ着いたという感じですね。まず、大学に入学してすぐに、なんだか周りの人たちと合わないな、と感じて。なんとなく居心地が悪かったんです。
それで、1年目で休学してしまい、3カ月ほどヨーロッパで一人旅をしていました。次の年には一応復学したのですが、「何か大学に通う理由が欲しいな」と思い、高校時代にもやっていたラグビー部に入部したんです。3年間ラグビーをやっていた時は充実していたのですが、部活の引退と同時に、大学に通う理由を見いだせなくなって、思い切って辞めてしまいました。
大学は実家から通っていたので、中退と同時に家を出ることに。両親からは半分勘当みたいな感じでしたね。僕は海が好きなので、海岸の近くに引っ越して、ガストでアルバイトしながらふらふらと刹那的な毎日を繰り返して、「ああ、このままこうやって一生を終えていくのかなぁ」なんて。
でも、そんな生活が1年続いたところで、再び親と話せるようになったんです。「何か勉強したいことがあればお金は出すから」と言ってもらったとき、子どもの頃からゲームが好きだったこともあり、シナリオライティングやプログラミング、CGなど、全体的なゲーム制作のイロハを学んで、企画も出せるようになる1年制の学校に通うことにしました。
それで、学校を卒業して24歳のときにゲーム会社に就職しました。50~60人くらいの規模の会社ですね。当初は企画職として入社しましたが、あるとき社長に「シナリオって書ける?」と聞かれたのがシナリオライターになったきっけかです。初めて書いたのは「メモリーズオフ」というギャルゲーでした。
その後、フリーランス時代を5年ほど経て、スパイク・チュンソフトに入社。この頃からシナリオライターだけでなく、ディレクターも兼任するようになりました。
――ゲームディレクターは、どのようにしてなるのが一般的なのでしょうか?
現在ゲームディレクターとして活動している人の経歴はさまざまだと思いますが、まずは、ゲーム制作の専門学校などに行って知識や技術を学び、ゲーム会社に入社することだと思います。
悩んでも大丈夫、その葛藤が役立つ時が来る。打越さんが中高生に伝えたいこと
――進路や生き方に悩んでいる人に、メッセージをお願いします。
伝えたいのは、「挫折を経験している人のほうが魅力がある」ということ。
いろいろな葛藤を抱えて、物事を深く考え抜いて、苦しんできた人のほうが、絶対におもしろいものを作れる。
モノづくりに携わりたい人のなかで、悩みごとが多く困っている人は安心してください。将来、その悩みが役立つ時が来ますから。
(企画・取材・文:田島里奈/ノオト 編集:杉山大祐/ノオト)
取材協力
打越鋼太郎
株式会社スパイク・チュンソフト 第二開発グループ プランニングセクション ディレクター。担当ゲームは、「Punchline」、「Ever17」、「アイドルは100万回死ぬ」(リアル脱出ゲーム)など。
Twitter:https://twitter.com/uchikoshi
※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2017年8月17日)に掲載されたものです。