現金の集め方から仲間集めまで。中学生、高校生のための起業入門――今井紀明(D×P)×中村多伽(taliki)×松江翔輝(Gashoo)トークイベント

先輩に聞く

2018/03/31

2018年3月24日(土)、京都・今出川の“25歳以下の起業家たちの活動を、より効果的にするためのサポートを行なう”スペース「タリキチ」で開催された中高生向けイベント「タリキチMeetup!」。

参加者は約20人。同イベントでは、登壇者の鼎談やワークショップ、交流会が行われた。本稿では、「学生の起業」をテーマにしたトークセッションの内容をお届けする。

●登壇者

中村多伽(なかむら・たか)

京都大学4年生。東京生まれ。2013年、京都大学総合人間学部に入学。非営利団体でカンボジアの2校の小学校建設と教育支援を行う。その後、ニューヨークのビジネススクールに通いながら、アシスタントプロデューサーとして報道局に勤務。帰国後は「学生団体taliki」を立ち上げ、2017年11月に株式会社として法人化。「ワクワクしながら社会課題を解決することが当たり前の社会」を目指す。

Twitter:https://twitter.com/kissmetk
Taliki:https://taliki.org/

今井紀明(いまい・のりあき)

認定NPO法人D×P(ディーピー)理事長。高校生の時、子どもたちのための医療支援NGOを設立し、当時紛争地域だったイラクへ渡航。現地の武装勢力に人質として拘束され、帰国後日本社会から大きなバッシングを受ける。その後、通信制高校や定時制高校の生徒が抱える課題に気づき、2012年にNPO法人D×Pを設立。

Twitter:https://twitter.com/NoriakiImai
認定NPO法人D×P:http://www.dreampossibility.com/

松江翔輝(まつえ・しょうき)

株式会社ガシュー代表取締役。大阪芸術大学建築学科卒業後、京都造形芸術大学大学院へ進学。大学卒業と同時に株式会社ガシューを設立。優秀なクリエイターが企業や社会と出会うことなく埋もれていく状況を解決するために、社会とクリエイターを結びつけるサービス「Gashoo」を立ち上げた。

Twitter:https://twitter.com/ev1217

中村:今日はタリキチに来てくれてありがとうございます。社会課題を解決しようとする人の応援活動をしている中村です。

今井:高校生支援をしている今井です。主に定時制高校、通信制高校の高校生たちの「人とのつながり」をつくり、仕事をつくる、就職までつなげる事業を展開しています。

松江:クリエイターの支援活動をしている松江です。よろしくお願いします。

中村:今日のテーマは、「起業」、そして「自分で仕事をつくる」というものなんだけど。

今井:起業ね。今日ここに集まっているみんなは、どんな感じなんだろう? 何が聞きたいのかな。

中村:今日の参加者は、中学生が1人と、あとは高校生と大学生が半々ずつと、学生じゃない人もいる感じだね。

松江:起業について、何がわからないのかな。やりたいことをどうやってビジネスにしたらいいかわからないという感じ?

今井:いや、たぶんそこまでいってない人もいるんじゃないかなぁ。自分のやりたいことが何なのかわからないとか、そもそも起業したいかどうか分からないとか。

中村:今日は、起業に「興味がある人向け」のイベントだからね。全員がすでに起業することを決めているわけではない。なんとなく話を聞いてみようと思って来てくれた子もいると思う。

起業ってハードル高かった?

今井:タカ(中村)と翔輝(松江)は、なんで起業しようと思ったの?

松江:僕はもともと経営シミュレーションゲームが好きで。『シムシティ』とか、『ザ・タワー』とか。

中村:ゲームでやっていた経営を、現実でもやっているんだ!?

松江:そう。だからあんまり、起業に対して気負いがないのかも。会社をつくってはたたみ、つくってはたたみ……。大学時代だけで2つ会社をたたんで、それ以外に人に譲った会社もあるし。

今井:起業のハードルが高くないんだね。

松江:だから、「起業したいけど……」という人を見ると、何がハードルになっているのかな、と不思議に感じています。合同会社だったら6万円くらい、株式会社だって20万円くらいでつくれる。6万とか20万なんて、バイトか何かで用意できる金額。手続きの方法がわからなければ税理士さんに依頼すればいいし、そしたら起業後の記帳とか決算、申告もまとめてお願いできるしね。「起業の仕方が分からない」という人は、心理的なハードルが高いのかな、と思います。

中村: SNSで「起業しました!」と宣言したらめちゃくちゃ活躍しないといけない、すごくかっこいい事業内容じゃないとダメ、みたいなハードルの高さを感じてしまっている側面もあるのかな。

今井:タカ(中村)はなんで起業したの?

中村:私は、自分がどこかの組織に入って働くのが向いていない、と感じていて。バイトの予定が入っているだけで、2日前からすごくユウウツになってしまった。だから、自分で会社をつくるしかないと思って、自然にそうなったというか。

今井:2人とも、起業のハードルが全然高くないんだね。俺は起業のハードル、めちゃくちゃ高かったなぁ。

以前は「一度ちゃんとした会社に入ってから起業すべき」と思っていたけど

今井:俺は一度商社マンになって、そのあと27歳のときに起業したんだけど、まず起業のために180万円貯めようとして、それがすごく大変だった。実際に起業してから1年間は、お金がなさすぎて「スーパー玉出」【※】で50円とか100円の弁当を買って食べる毎日だったよ。

【※】スーパー玉出:大阪で展開する激安スーパー。

中村:そうだったんだ。

今井:以前の自分にとって、起業はすごくハードルの高いことだったなぁ。あと、その時は「一度はきちんとした会社に入ってから起業すべき」と思っていた。

松江:へぇ。

今井:今はそう思わないけどね。早ければ早いほど、起業なり、自分で仕事を作るなり、やればいいと思う。もっとハードルが低くてもよくて、アルバイト以外でお金を稼ぐとか。どのタイミングでも、やりたいと思ったらやればいい。考え方は変わったね。

中村:起業をしたいと思ったら、まず何からすればいいのかな。

今井:まずは単純な物の売り買いやクラウドファンディングなどで、現金を集めることにチャレンジしてみたらどうかな。

中村:いいね。起業に興味があったら、まず現金を集めることにチャレンジしてみる。そういえば、のりさん(今井)のやっているNPOは、個人からの寄付をメインにお金を集めているんだよね。

今井:そう。2017年度の個人からのご寄付は約5,000万。

中村:助成金とかではなく、個人からの寄付で運営しているのは、何か理由があるの?

今井:個人からの寄付は、行動に縛りがないから。行政や団体からお金をもらうと、自由に動けない場面も出てくるんだよね。行政や企業ができないことをやれるのが、NPOの一番面白いところだと思っていて。行政とか企業が全然関心がない、ターゲットにできないところに事業展開して課題解決できるってものすごく価値があることだと思う。だから、お金の出どころは大事にしている。以前は収入の半分は学校や企業からの事業収入だったけど、今はほとんど個人や企業の方からの寄付収入だね。

どうやって仲間を集めているの?

今井:今回、タカ(中村)と翔輝(松江)に聞いてみたかったことがあって。それが「仲間集め」について。タカはどうやって、一緒に活動してくれるメンバーを集めているの?

中村:私は、SNSなどでやりとりした時に「一度タリキチに遊びにおいでよ!」って誘ってる。それで実際に来てくれたら、そこから自然に一緒に活動するようになったり、やりたいことを聞いて、「それ、うちで一緒にやろうよ!」って言ったり。

今井:本当は脅しているんじゃないの?(笑)

中村:「talikiで一緒に活動しないと……」って?(笑)

今井:そうそう(笑)。それは冗談だけど、タカ(中村)にはリーダーシップがあるよね。いい意味で巻き込み能力が高い。翔輝(松江)はどうやってメンバー集めをしているの?

松江:僕は、今回の会社については、そもそもメンバーが集まらないと会社にしないつもりでした。

今井:おお、そうなんだ。

松江:仲間集めについてひとつ言っておきたいのは、「必ずしも自分が先陣を切らなくてもよくない?」ということ。面白いことをやっている人のところに行って、自分が「メンバーに選ばれる側」になるのもアリ。

中村:確かに。「自分が中心になって起業する」という考えに囚われなくてもいいよね。のりさん(今井)は、どうやって仲間を集めたの?

今井:俺は北海道の出身で、いまD×Pがある大阪には、誰も知り合いがいなかった。だから、どうやって人と知り合えばいいのか考えて、家をゲストハウスにしたんだよね。

松江:え?

中村:どういうこと?(笑)

今井:「友達の友達までだったら、誰が来てもいいよ」って宣言したの。だから、俺が家に帰ると飲み会やっていて、その中の誰一人として俺のこと知らなかったりして。

中村:じゃあ、その場にいる人たちは、「この人、誰?」って状態なんだ(笑)。

今井:そうそう。「家主ですけど」って(笑)。

イベントに参加してみてどうだった?

トークイベントが終わり、ワークショップと交流会の時間へ。

参加者に感想を聞いてみた。

「今日のイベントは、タカさんのFacebook投稿で見つけて来ました。talikiのイベントに参加するのは2回目です。私は途上国で、助産師に関係する活動をやっていきたいと思っていて。イベントに参加して、同じ年くらいのみんながいろいろなことを考えているのを知ると、すごく刺激になります」(佐藤芙優子・18歳)

「愛知県から来ました。私は『胸の大きい女の子向けの下着をつくる』という目標に向かって活動しています。今日イベントに参加して、もっと社会貢献とか、社会課題の解決になるようなことにも興味が出てきました」(益山永遠・15歳)

登壇者にも感想を聞いた。

「今回のイベントは、D×Pの事業として通信・定時制高校の子たちに関わっていて、高校中退や不登校の経験、経済的な厳しさなどさまざまな経験をしている子たちは、独立したい率が高いと感じていたため企画しました。今回のイベントに参加してくれた子たちも、不登校経験者だったり、何かがあったりして、社会に疑問を持ち自分の頭で考えている。本当に才能がある子達がたくさんいると感じるけれど、日本社会はそれを潰していないのか。起業したい、仕事をつくりたい子たちを特異な目でみるのではなく、大人が応援した方がいい。僕は今回のイベントでそう思いました」(今井紀明)

(取材・執筆:田島里奈 編集:ノオト)

●取材場所

タリキチ

タリキチは京都大学と同志社大学付近に位置する、100平米ほどの“秘密基地”。 25歳以下の起業家たちの活動を、より効果的にするためのサポートを行なうスペース。

地下鉄今出川駅から徒歩0分、同志社大学から徒歩0分、京都大学から徒歩15分、ダッシュで5分ほど。

Wi-Fi、エアコン、その他さまざまなファシリティを完備、メンター、エンジニアが常駐。ミーティングルームではメンターや投資家との壁打ち、ライブラリーでは参考になる書物に囲まれながら、静かに読書・作業ができる。

https://www.talikichi.com/

※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2018年3月31日)に掲載されたものです。

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