コスメの企画はキラキラじゃない!? 地道な作業でみんなのほしい化粧品を作るCANMAKE(キャンメイク)の舞台裏
先輩に聞く
2020/01/14
「コスメが好きなんだけど、仕事にできるのかな?」「化粧品の仕事ってなんだか難しそう……」
そんな疑問に答えてくれるのは、株式会社井田ラボラトリーズで、コスメブランド・CANMAKE(キャンメイク)の商品企画を手掛ける清水祐里奈(しみず・ゆりな)さん。現在までに、約20種類の新商品開発やリニューアルに携わってきました。
かわいらしく使いやすいのに、中高生でも手が届く価格帯の商品を多数展開し、幅広い世代からの支持を受けるCANMAKE。今回は、化粧品を企画する仕事のリアルな面白さや大変さ、楽しさについて清水さんに伺います。
新しいコスメの提案、商品管理まで。ゼロから新しい商品を生み出す企画職
――まず、清水さんが今どんなお仕事をしているかを教えてください。
入社1年目から、ベースメイクの商品企画をするチームに所属しています。主な業務内容は、新しいコスメや新色の開発、既存商品のリニューアルなどです。
CANMAKEでは1つの商品開発のすべてが1人の担当者に任されます。具体的には、化粧品のパッケージイメージやキャッチコピーから、市場で販売されるまでのスケジュールや化粧品の価格決定、お店で品切れしないための生産管理までですね。
1つのコスメが市場に出るまでには、商品の中身や外装を作ってくれるメーカーさんやパッケージイメージを形にしてくれるデザイナーさん、商品を市場へ流通させてくれる営業担当者など、さまざまな人の力が必要です。皆さんと連携を取りながら、新しい化粧品を世の中に生み出しています。
――お仕事の幅広さに驚きました。1日の流れがすごく気になります!
時期によって異なるのですが、午前中は各取引先企業さんとの連絡を中心です。
お願いされた対応が終わったら、ファッション誌や美容誌、口コミサイト、SNSなど幅広い情報を見て、「今、どんなコスメが求められているのか?」「どのような色が流行っているのか?」「発売した新商品へのお客様の声」など、トレンドや市場の状況を調べますね。
午後は、デザインの考案や関係者との納期調整、化粧品の中身をどう改良するかの検討など、新色や新商品の発売に向けたさまざまな準備をしています。
SNSから届く「リアルな思い」。商品改善や仕事のやる気につながるユーザーの声
――SNSなどで「CANMAKE」に向けたコメントなどが、清水さんたちの目に入ることもあるのでしょうか?
SNSはリアルな声が届く場ですから、いつもチェックしています! 入社して初めて担当した「シークレットビューティーパウダー」の発売時には、かなりSNSをチェックしましたね。「パッケージがかわいい」「夜でも安心して使えた!」などのコメントが届き、安心したことを覚えています。また、一から企画した「メルティールミナスルージュ」というリップは、SNSで話題になったことがきっかけで販売数が伸びたんです。皆さんのコメントを読みながら、「ここまで頑張ってきてよかったな」って強く思いました。
こうした皆さんの声は、発売後の商品ふり返りや新色開発の参考にしています。何よりも、消費者の皆さんの声は仕事へのやる気にもつながるんです。
――SNSの声が実際に商品を作っている人にまで届いていたのはびっくりです!
なかには「キャンメイクに届けー!」と添えて、発信してくださる方もいます。過去には、ブルーベース(青みよりの肌)向けのシェーディングパウダーなどSNSの声がきっかけで生まれた商品もありますよ!
一人ひとりへ返信できないのは本当に残念ですが、心の中で「届いてますよー!」って思いながら読んでいます。
何歳になっても、ブランドが好きでいられるか? 自分との対話で見つけた仕事
――どうしたら化粧品の企画の仕事に就けますか?
各化粧品ブランドを運営する企業の採用試験を受けることです。
化粧品パッケージの裏側には必ず発売元が記載されているので、気になる化粧品があったら、ぜひパッケージをよく読んでみてください。実は私も就活をするまでは、CANMAKEを作っているのが井田ラボラトリーズという会社だと知りませんでした(笑)。
――ちなみに、化学など専門知識は必要でしょうか?
企画職の場合、専門知識は特になくても大丈夫ですよ。私は大学でマーケティングを学び、コスメ開発の知識は入社後に仕事を通して学んでいきました。ただ企業によって異なるので、採用サイトなどで調べておく方が安心だと思います。
――清水さんは、なぜこのお仕事に就いたのですか?
もともと、「女性に関するマーケティング」に携わりたいと考えていました。それで、就職活動を始めたばかりの頃は、女性向けアパレルブランドの会社などもチェックしていたんです。
ある時進路に悩んだ私は、「何歳になっても、そのブランドが好きでいられるか?」と自身に問いかけたんです。そしたら、答えはNOでした。
理由は20代前半のときに自分が好きだと思えるブランドでも、30〜40代になって好みが変わると好きなままではいられないのかなって……。そこで、「流行に左右されず、何歳になっても楽しい仕事」と考えた結果、化粧品業界に絞りました。
その中でも、CANMAKEは好きなコスメブランドで。実は、私が中学生の時に初めて買った化粧品がCANMAKEのリップだったんです。初めて手に取った時のキラキラ感や驚きは、今でも覚えています。それで、私も「“かわいい”を一緒に作りたい」と思い、企画職を希望しました。
企画職のキラキラ感は幻想? 泥臭く地味な仕事の積み重ねでコスメは生まれる
――ここまでのお話から仕事の楽しさや想いが強く伝わってきました。逆に、これまでの仕事を通して、ギャップに感じたことや大変だなと思ったところはありますか?
一番大きなギャップは、地道で泥臭い仕事の多さです。化粧品をゼロから生み出すまでの仕事の大半は、調整やお願いなど地味な仕事。
化粧品ってどうしてもキラキラした印象を抱かれやすいのですが、「企画=キラキラした仕事」という想いは幻想でしたね(笑)。
採用説明会で大学生の皆さんにそう話すと、「全然、そんなイメージはなかった」という声が返ってきますよ。
――泥臭い仕事……。正直意外でした。では、この仕事にはどういった人が向いていると清水さんは思いますか?
「後回しにせず決断する力」「余裕を持ったスケジューリング力」を持っている人だと思います。
商品を作る仕事では、研究者から営業担当までさまざまな方と関わります。企画担当者の自分が判断できないと、他の人の仕事や契約が遅れてしまう可能性がある。そのため、すぐに決める力が必要となります。
また、多くの人が関わるからこそ問題は常に起こるんです。予定通り発売できるよう、トラブルが起こっても大丈夫なよう、余裕を持ったスケジュールを立てて実行する力が求められます。
――最後に、化粧品の商品企画に興味がある中高生へアドバイスをお願いします。
「好き」って気持ちを持つことを大切にしてほしいと思います。化粧品に関する知識は仕事を通して身につけられます。だからこそ、「自分が好きと思えること」、「楽しいと思うこと」にぜひ挑戦してほしいです。
(企画・取材・執筆:スギモトアイ 編集:鬼頭佳代/ノオト)
取材先
清水祐里奈(しみず ゆりな)さん
株式会社井田ラボラトリーズ キャンメイク部 企画所属。2015年に入社。これまでに、「シークレットビューティーパウダー」をはじめとする商品を多数担当。現在は、チームの中でもベテランとして後輩たちを引っ張るポジションに。ちなみに、初めて購入した化粧品はCANMAKEの「ステイオンバームルージュ」。
※本記事はWebメディア「クリスクぷらす」(2020年1月14日)に掲載されたものです。