少子化が進み、高等学校の数が全国的に減少する中、年々増え続けている通信制高校の学校数や生徒数。2024年12月18日に文部科学省が公開した学校基本調査(令和6年度)によると、2024年度の通信制高校の学校数は、独立校で135校と、前年から4校増加。併設校(全日制あるいは定時制に通信制課程を併設した高校)は168校で前年より10校増加しています。
また、通信制高校の在籍生徒数は約29万人となり、高校生全体の9.1%が通信制高校を選択していることがわかりました。
通信制高校が増加する背景としては、近年では発達に特性のある生徒や、不登校を経験した生徒も学びやすい環境として注目されていることが挙げられます。
加えて、私立の通信制高校ではeスポーツやアート、ゲームなど興味のあることが学べたり、プログラミングや料理、美容系などの資格がとれたりスキルが身についたりすることから、やりたいことが決まっている生徒も選択肢として考えるように。
このように年々注目度が高まる通信制高校ですが、世間のイメージはどのように変わってきているのでしょうか。
当社では2021年から毎年、全国の15歳以上、69歳以下の300名(10代~60代まで各年代50名ずつ)を対象に「通信制高校に対するイメージ」についてアンケート調査を行っています。
今回は2024年の結果を詳しくご紹介していきます。
【アンケート調査】通信制高校のイメージは? 年代別に調査(2021年版)
【アンケート調査】通信制高校のイメージは? 年代別に調査(2022年版)
【アンケート調査】通信制高校のイメージは? 年代別に調査(2023年版)
調査サマリー
- 10代の過半数が「身近に通信制高校生がいる」と回答
- 通信制高校へのポジティブなイメージが年々増加、30代で大きく上昇
- 勉強や学費への不安の声も依然として存在
身近に通信制高校に通う人がいる10代は半数以上に
Q1の質問「あなた自身やあなたの周りに通信制高校に通っている・通っていた人はいますか?」に対しては、「いる」と答えた人が20.67%となりました。前年は21%で、ほぼ変わらず5人に1人が周りに通信制高校に在籍している・在籍していた人がいるようです。
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しかし、年代別では10代の52%が「いる」と答えており、これは前年から10%アップ。当調査の開始以来、初めて半数を超える結果となっています。
次に多いのが20代の26%で、若い世代の間では通信制高校という選択肢が浸透してきていることが伺えます。
通信制高校に通っている・通っていた人が「いる」の年代別割合(前年比)
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通信制高校に好イメージを持つ30代が増加
Q2では、「 通信制高校のイメージについて」聞きました。
「とても良い」「良い」と答えた人は全体の49.67%となり、こちらも全体としては前年の48.67%とほぼ変わらずという結果に。
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年代別で見ると、「とても良い」「良い」の合計割合が最も高かったのは30代で60%。10代と50代以上も50%を上回っていました。
過去のアンケートでは、通信制高校に良イメージを持っている世代は10〜20代の若年層と60代以上の高年齢層となっていたところ、今回は30代が急上昇。最近では通信制高校に関する情報がインターネット上にも増えており、高校生の保護者世代ではない社会人も目にする機会が増えているのかもしれません。また、ビジネス的目線で通信制高校が注目されている可能性もありそうです。
通信制高校のイメージが「とても良い」・「良い」の年代別割合(過去比較)
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高年齢層では働きながら学ぶイメージが現在も定着
Q3では、「通信制高校にはどんな生徒がいるイメージか」を尋ねました。
最も回答の多かったのは、「仕事やアルバイトをしている」(63.76%)で、4年連続でトップ回答数に。30代以上の年代ではこの選択肢を選ぶ人が多く、60代以上では88%の人が選んでいる一方で、10〜20代は50%に満たず、年代によってイメージが違うことがわかります。
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「仕事やアルバイトをしている」の年代別割合
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同じように年齢が高いほど選ばれていた選択肢が「高校中退した人」で、30代以上では半数以上の人が選択しています。一方、年代によってそれほど差がなく選ばれていたのが「不登校経験がある人」となりました。
「高校中退した人」の年代別割合
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「不登校経験がある人」の年代別割合
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また、4年連続で選択する人が増えているのが、「やりたいことに時間を使いたい人」(30%)です。調査開始の2021年からは約10%増えており、世代間での大きな差も見られませんでした。高校生が学業だけでなくさまざまなことにチャレンジすることが、社会の中で認められてきているのかもしれません。
「やりたいことに時間を使いたい人」の年代別割合(過去比較)
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マイペースで学べる一方、自分で勉強するのは大変そう
Q4では「通信制高校のイメージ」についてあてはまるものを選択してもらいました。
回答数で最も多かったのは、前年までと同様に「働きながら学べそう」(43%)となりました。こちらも年代が高くなるほど回答率が高くなっており、Q3の「仕事やアルバイトをしている」生徒が多いというイメージを持っている人が多いからだと考えられます。
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「働きながら学べそう」の年代別割合
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次に多かったのが「自分のペースで学べそう」(38.67%)で、10代では54%が選択しています。3番目に多かった「入学するのが簡単そう」(24%)でも、10代が38%と最も多く回答しています。
「自分のペースで学べそう」の年代別割合
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「入学するのが簡単そう」の年代別割合
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その他、10代の回答が最も多かったポジティブな選択肢には、「やりたいことに時間を使えそう」(全体で19.33%、10代では34%)、「高卒資格が楽にとれそう」(全体で8.67%、10代では12%)、「新しいことが学べそう」(全体で5%、10代では12%)などがありました。
ネガティブなイメージとしては「自分で勉強するのが大変そう」(21.67%)が最も多かったのですが、全体の中でも10代がとりわけ多く選んでいたのが「「学費が高そう」(全体で7.33%、10代は18%)、「高校生活を楽しめなさそう」(全体で11%、10代は22%)などでした。
「学費が高そう」の年代別割合
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「高校生活を楽しめなさそう」の年代別割合
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学習をどのようにサポートしてもらえるのかといった指導内容、また学費、通学スタイルは学校によってさまざまとなっていますが、具体的にイメージできずに不安を抱いている人もいるのかもしれません。各関係者は今後、より具体的に情報発信していくことも必要でしょう。
メリットの認知が広がるものの、不安の声もまだ少なくない
今回のアンケート調査では、身近に通信制高校生がいるという10代が2021年以降初めて半数を超える結果となりました。
実際、冒頭に示したとおり通信制高校の生徒は年々増えており、今や30〜40人の学級であれば3人が通信制高校に進学する割合となっています。2025年に新設が決まっている通信制高校も複数あり、今後も学校数・生徒数ともに増えていく流れとなっています。
通信制高校の生徒に対する具体的なイメージについては、今回のアンケート結果でも年代によって差が見られました。
一方、全体として年を追うごとに増えている回答には「やりたいことに時間を使いたい人」が上げられ、高校生活の送り方にも多様性が受け入れられてきていることがうかがえます。
通信制高校自体のイメージについても、中高年を中心とした「働きながら学べそう」の次に「自分のペースで学べそう」が選ばれており、ポジティブなイメージを持つ人が多い結果となっています。
ただし、「自分で勉強するのが大変そう」と回答した人も5人に1人となっており、各校、カリキュラムや学習面でのサポート内容は具体的に情報提供していくとよさそうです。
ひと言で通信制高校といっても、学べることも通学スタイルも雰囲気も多様化が進んでいる今。生徒たちがさまざまな選択肢を比較しながら進学先を検討できるように、当社でも引き続き情報発信を進めていきたいと思います。
「通信制高校のイメージ調査」概要
- 調査対象:全国の15歳以上、69歳以下の300名(10代~60代まで各年代50名ずつ)
- 調査期間:2024年12月23日
- 調査方法:インターネットでのアンケート調査
※アンケート結果、またグラフなどのデータはすべて「通信制高校ナビ」が権利を持ちます。転載をされる際は、必ず「出典:通信制高校ナビ」という表記と、当サイトへのリンクをお願いいたします。
この記事を書いたのは
通信制高校ナビ編集部
「一人ひとりに最適な学校探し」をテーマに、さまざまな進路選択を考える生徒さん、親御さんに向けて、よりたくさんの選択肢を提供できるよう、通信制高校、サポート校に関連する情報を発信しています。