2024年度には全国の在籍生徒数が約29万人にのぼり、高校生の11人に1人が通っている通信制高校。中学卒業後の進学先として身近になってきていますが、カリキュラムや通学のシステム、専門的に学べる学科などは多種多様で、どのように選んだらよいか迷う人も多いかもしれません。
また、急速に進化が進み、新設校も増えていく中で、学校生活のイメージがわかず不安を感じる人もいるでしょう。
今回は、通信制高校への進学、転学・編入を考えている人やその保護者たちが、実際にどのようなことに期待し、どのような不安や疑問を持っているのか、通信制高校ナビをご利用されている591人に尋ねました。
アンケート調査の結果、現状ではどんな情報が足りていないのか、通信制高校にどのようなニーズがあるのかなどが見えてきました。
【アンケート調査・2024年】通信制高校ナビ利用者に聞く 通信制高校に期待すること、不安なこと
【アンケート調査・2023年】通信制高校ナビ利用者に聞く 通信制高校に期待すること、不安なこと
【アンケート調査・2022年】通信制高校ナビ利用者に聞く 通信制高校に期待すること、不安なこと
調査サマリー
- 通信制高校を卒業した後を不安視する人が親子ともに多い
- 入学者本人は高校と自由時間の両立を、保護者は社会に出るための教育を期待
- 費用面での不安は例年通りトップに、通信制高校の仕組みがわからない人も多数
回答者の属性について

アンケートの回答者は、通信制高校を検討している親・保護者が69%、入学者本人が31%。
人数はそれぞれ以下の通りです。
- 親・保護者:406名
- 入学者本人:185名
- 合計:591名
高校卒業後の進路について不安に感じる人が多数

Q1は「通信制高校について不安な点があれば教えて下さい(複数選択可)」。入学した場合、どんな点に不安を感じているか、事前に知っておきたいことを聞いてみました。
結果、入学者本人の回答としては「その先の進学に影響がないか」が最も多く(12.5%)、高校卒業後に進学を考えている場合、通信制高校がデメリットにならないかと考えている人が多いことがわかりました。
次いで多かったのが「学校に馴染めるか」(11.2%)、「全日制高校と同じ高校卒業資格が取れるか」(10.9%)となっています。
親・保護者についても「全日制高校と同じ高校卒業資格が取れるか」(11.4%)を選択した人は多く、通信制高校の仕組みがあまり知られていない可能性があります。2024年以前のアンケート調査でもこの項目を選択した人が多く、通信制高校の基本的な知識については今後もしっかり周知していく必要がありそうです。
さらに親・保護者の回答としては「将来の目標ややりたいことを見つけられるか」(11.5%)、「学校に馴染めるか」(9.7%)と、学校生活の充実を心配する人も多く見られました。
「その他」の回答としては、学費について不安を感じる人が、親・保護者で8名となっており、入学金や授業料など学費についての情報がわかりづらいと感じるケースもあるようです。また、「スクーリングに行けるか」「遠いのでスクーリングが心配」と、通学を不安視する親・保護者も見られました。
入学者本人の「その他」回答では、学費についての不安を挙げた人が2名いたほか、「単位の引き継ぎができるか不安」「帰国子女枠で転入することは可能なのか」など、転学・編入に関して不安や疑問のある人も6名。新入学だけでなく転編入を考えている人も多いようで、よりわかりやすい説明があるとよさそうです。
本人は在学中の充実度を、親は社会に出るための教育を期待

Q2は「通信制高校に期待すること(複数選択)」について尋ねました。
本人、親・保護者ともに最も多く回答されたのが「高校卒業資格を確実に取得できる」(本人19.0%、親・保護者20.7%)でしたが、その他では親子間に大きなばらつきが見られました。
本人の回答としては「自由な時間を作る」が18.5%と2番目に多い回答でしたが、親・保護者では4.7%と低め。親・保護者で2番目に多かったのは「目標に向けた勉強ややりたいことができる」で12.5%でしたが、本人では9.8%と差が出ています。
その他、本人回答よりも親・保護者回答のほうが大きく上回った項目には「社会のマナーやルールを身につけられる」や「社会に出る前に人間関係を学べる」などがありました。
親・保護者としては社会に出るためのステップとして高校生活を送ってほしいと考える人が多い一方で、本人はまず高校生活を充実させることが最優先となっているようです。
この親子間のギャップは昨年以降のアンケート調査でも同様に見られており、どのような高校生活をイメージしているのか、新入学や転編入前によく話し合っておいたほうがよいかもしれません。
「自由な時間を作る」と回答した割合

疑問点は費用のほか、基礎的な仕組みについても多数
Q3では、「通信制高校についての疑問点」について、自由に回答してもらいました。
この質問の回答者50名の中で、最も多かったのは費用面に関する疑問で、次のような回答がありました。
- 費用は一般的な私立高校と比べてどうなのか
- 学費が高いコースも多そうなのが不安
- 学費の援助はあるのか
- 高校の授業料無償化の対象になるのか
また、通信制高校の仕組みそのものがよくわからないという人も多いようで、次のような回答もありました。
- 決められた日数、登校すれば卒業できるのか
- 高校卒業資格は必ず取得できるのか
- 通信制高校を出ても中卒扱いになる学校もあるのか
- 高校2年から転入した場合も、転入後に3年間通わなければいけないのか
- 仕組みがまったくわからず不安です
通信制高校が国に認定された「高校」であること自体や、サポート校との違いなど、基礎的な仕組みがよく知られていないケースも見られ、よりわかりやすい情報をしっかり周知していくことが必要だと考えられます。
その他、親・保護者に関しては、子どもの不登校や発達障がいなどに対してどれだけサポートがあるのか気になるという人も多くいました。
- 発達障がいの子でも通えるのか
- 不登校気味の生徒に対してメンタル面でのサポートはあるのか
- 通い続けられるようにサポートしてくれるのか
こうしたサポートについては各学校で内容が変わってきますが、学校説明会などで丁寧に伝えるとよさそうです。
通信制高校の仕組みを押さえたうえで、ニーズに応じた学校選びを
今回のアンケート結果からは、通信制高校が選択肢として身近になった昨今でも、まだ基礎的な仕組みに関しての理解が進んでいないことがうかがえました。通信制高校とはどのような学校なのか、各学校や行政、当サイトをはじめとしたメディアがしっかり伝えていく必要がありそうです。
昨年までと同様に費用面に関しての不安や疑問も多く、各通信制高校においては丁寧かつ具体的に情報公開をしていくことが求められるでしょう。
また、どの質問項目についても、転編入について記載する人が昨年までと比べて増えており、高校生活をやり直したい人、それまでに通っていた高校が合わないと感じている人が増えている可能性もあります。
各家庭においては、Q2で親子間ギャップが見られたことから、「なぜ通信制高校に行きたいのか」「どのような高校生活を送りたいのか」を話し合いながら、学校選択をするとよさそうです。
通信制高校の多様化が進む中、スクーリング回数、授業の内容、学校の雰囲気、学校行事、卒業後の進路サポートなどは、学校によってさまざまとなっています。基礎的な知識を押さえたうえで、資料や学校見学・説明会などで各校の特徴を確認し、本人に合った学校を選ぶようにしてください。
「通信制高校ナビ利用者アンケート調査」概要
- 調査対象:通信制高校ナビの利用者591名(親・保護者:406名、入学者本人:185名)
- 調査期間:2024年12月1日〜2025年2月28日
- 調査方法:通信制高校ナビ利用者対象アンケートフォーム
※アンケート結果、またグラフなどのデータはすべて「通信制高校ナビ」が権利を持ちます。転載をされる際は、必ず「出典:通信制高校ナビ」という表記と、当サイトへのリンクをお願いいたします。
この記事を書いたのは
通信制高校ナビ編集部