動画クリエイター・はーちゃんが語る 「通信制高校」という選択
生徒・先生の声
通信制高校
2020/05/15
2015年9月、12歳の頃からかわいい手作り雑貨などの紹介をYouTubeで動画投稿し始めたはーちゃん。
2017年には有名動画クリエイターたちが名を連ねる大手事務所UUUM(ウーム)に所属し、2019年からは現役高校生動画クリエイターとしてYouTubeで活動を続け、注目度は年々アップしています。
現在はメイクやファッションなどでも注目を浴び、そのチャンネル登録数は約4万3000人、動画再生回数は約4000万回と、絶大なる人気ぶりです。
はーちゃんの人気のヒミツは、「ファッションや持ち物がかわいい」というだけでなく、過去のつらかった出来事や今でもつらくて苦手なこと、また学校に行けなくなった経験を赤裸々に語り、同じような思いをしている同世代の子たちに寄り添っているところ。
「ムリをしなくてもいいんだよ」「一人で抱え込まなくても大丈夫」とメッセージを送ることで、たくさんの同世代から共感を集めているのです。
そんなはーちゃんが進学先として選んだのが、通信制高校。
今回は、どうやって高校を選んだのか、またどんな高校生活を送っているのか、詳しく聞いてみました。
体調への不安や仕事があっても、通信制高校だから安心
――2019年から通信制高校に通っているということですが、最初から通信制に行こうと思っていたんですか?
はーちゃん:はい。私は電車に乗ったり外で食事をしたりすると体調が悪くなりやすく、毎日学校に通う生活には不安があったので、最初から通信制高校以外の選択肢は考えていませんでした。通信制なら突然具合が悪くなったらどうしようという不安を感じることなく通えると思ったんです。また、YouTubeでの動画クリエイターとしての活動と勉強の両立もしやすいと考えました。
――学校選びはどのようにしましたか?
はーちゃん: 私の場合はまず、いいなと思う学校を2校に絞り込んでから、実際に見学に行きました。最初に行った学校は、先生たちが職員室で話している様子や、生徒たちと話している様子を見たら、あまりイメージがよくなくて……。でももう1校のほうは、にこにこと優しく話してくださる先生たちが多く、ここにしようと思いました。決めた学校には、同じ学年の友達も行くと言っていたので、そういう安心感もありました。
通信制といってもスクーリングはありますし、自分に合う学校を選ぶことは大切だと思いますね。
――入学するまでの準備期間はどれくらいだったんですか?
はーちゃん: 私は早い段階から通信制高校に行くことは決めていたので、周りの子たちが全日制高校を目指して受験勉強をする中でもプレッシャーを感じることなく進路を考えることができました。最終的に進学先を決めたのは中3の終わり頃。ギリギリだったのですが、受験は面接だけで、それをクリアして入学することができましたね。
――受験戦争で消耗することなく、中学3年生の間も自分のやりたいことと両立させながら自分のペースで勉強していけるのは、通信制高校を進路に選ぶメリットかもしれませんね。
授業や行事への参加が「自分次第」なのが嬉しい
――通信制高校に通ってみて、良かったと思うことは何でしょう?
はーちゃん: 自分で授業の時間割を組み立てて、その時間割を見ながら登校する日を決められるところです。科目ごとに必要な出席数が決められているのですが、自分でスケジュールを立てられるのがいいですね。1、2時間目の授業に出席して、3時間目は休憩して、また4時間目に出ようというように、自分のペースに合わせて登校できます。だから、体調に不安を抱えていても安心して通えるんです。
――クラスメイトと話したりすることもあるんですか?
はーちゃん: ありますよ。でも、登校するスケジュールをみんなそれぞれ自分で決めているので、教室では同じクラスの人といつも一緒になるわけではなく、その日に通ってきた生徒たちと会う形になります。クラス全員で集まるのは、月1回のロングホームルームだけです。クラス単位でいつも一緒というわけではないので、私は仲のいい子たちとだけ話して帰ってくるという感じです。
――クラスの輪とか、集団行動を強いられることが苦手な子でも通いやすそうですね。学校行事についてはどうですか?
はーちゃん: 学園祭などのイベントも、参加するかどうかは自分で決められるんです。私は勉強するのがいちばんの目的ですし、お仕事もあるのでイベントの準備などに参加する時間もなかなかとれないため、参加していません。でも、参加して楽しかったという子たちもたくさんいますよ。イベントに参加していなくても、学校で気の合う友達はできますし、芸能関係の仕事をしている友達もできたので、学校生活は楽しいです。
――修学旅行も自由参加ですか?
はーちゃん: はい。私はバスや電車などの乗り物に乗ったり、泊まりに行ったりすると体調が悪くなりやすいので、修学旅行は小学校から行っていないんです。だから、行っても行かなくてもどちらでもいいというのはよかったです。でも、いろいろなことを体験する機会は授業の中にもあるんですよ。工芸などのモノ作りの授業には、楽しく出席しています。
――モノ作りははーちゃんの特技ですから、楽しそうな光景が目に浮かびます。では逆に、通信制高校にデメリットを感じることはありますか?
はーちゃん: 基本的には教材を見ながら自力で勉強をして、わからないときに先生に聞くというシステムになっているので、そこがちょっとキツイと感じることはあります。私は中学まで学校に行けないことが多かったので、少し勉強が遅れてしまっていて、ついていくのが大変だなと思うことが多いですね。教科書に書いてあることを覚えていくような勉強は大丈夫なんですけど、数学はちょっと苦手です。
――そんな苦手に感じることもある勉強を、自力できちんと進めていくコツは?
はーちゃん: 私の場合は、提出日ギリギリになってから一気にやるのは嫌なので、ある程度時間に余裕のあるときに、集中して勉強するようにしています。最初は自力で解けそうな問題から手をつけて、パッと終わらせるようにしていますね。それから、全日制の高校に通っている友達と一緒に勉強をして、わからない問題があったら教えてもらったりもしています。他の学校に通う友達とLINEで「もうすぐテストだね」「頑張ろうね」なんてやりとりをしていると、励まされますね。
――自分一人だけで勉強するのはつらいかもしれないですが、友達と一緒ならやる気も出ますね。LINEなどSNSで同世代の子たちとつながるというのは、勉強を進めるポイントかもしれません。
通信制でも特色は色々、自分に合う学校かきちんと確かめよう
――はーちゃんファンの中にも、通信制高校に通っている生徒さんはいるんですか?
はーちゃん: はい、私のYouTubeを見て、通信制高校を選んだという子もいますよ。進路を決めるときに、「通信制高校のことを教えてください」って相談してくれた子もいます。通信制高校って、まだマイナスなイメージもあると思うんですけど、私は隠さずにYouTubeで話して良かったなと思います。「通信制高校のイメージを、はーちゃんが変えてくれた」と言ってくれる人もいて、嬉しいです。「批判的な気持ちで見てみたけれど、実際に動画を見たら応援したくなった」と言う方や、「励まされました」って言ってくれたりする人もいるんです。
――それは嬉しいですね! はーちゃんが伝えているメッセージで、選択肢が広がったという子たちも多いわけですね。
はーちゃん: だから、ちゃんと勉強して、もっといいイメージを与えられるようにしたいなと思っています。全日制の高校に通う子たちからも、「同じ教科書を使ってるんだ!」なんて言ってもらえることもあって、もっと通信制高校のことを知ってもらいたいなと思います。
――これから進路を決めるうえで「通信制高校はどうかな」と思っている中学生たちに、伝えたいことはありますか?
はーちゃん: やりたいことがある人には、通信制高校はおすすめだと思います。私もお仕事をしながらでも勉強ができているので、本当によかったと思っています。提出物をただこなすだけでなく、テストもあるので、ちゃんと学校生活を送っているという実感もありますよ。学校を選ぶときには、たくさん資料を取り寄せて、どこが自分に合うかを真剣に考えてほしいと思います。実際に学校に見学に行くのも大切です。
――たしかに、「毎日通うわけではないからどの学校でも一緒」ではないですよね。はーちゃんは先生たちの様子がいちばんの決め手だったようですが、他にも見学の際のポイントはありましたか?
はーちゃん: 先生同士の会話が楽しそうだったり、見学に来た子たちへの説明の仕方が丁寧だったりすると、安心して通えるなって思います。あとは、自分が不安に思っている点は見学のときに質問したほうがいいです。パンフレットに載っていないこともありますよ。私も「保健室はちゃんとありますか?」など質問をしました。疑問に思ったことを解決できないまま、モヤモヤした気持ちで進路を決定しないで、思い切って聞いてみてください。
――それで疑問が解決されなかったり、不親切な対応だったりしたら、また別の学校を見学に行って、安心できるところを選ぶということもできますしね。
はーちゃん: はい。何となくではなく、自分が納得して学校を選んでもらえたらいいなと思います。中学3年生のみなさん、今は大変な時期ですが、進路選択は焦らずじっくり考えてみてくださいね。
――本当に選択肢はたくさんあるので、自分が通いやすい学校、頑張れる学校を見つけてもらえるといいですね。今日はありがとうございました。
取材協力
はーちゃん/ha-chan
2003年生まれ、通信制高校に通いながらYouTubeで動画クリエイターとして活躍中。2015年にYouTubeに動画を初投稿し、2017年よりUUUMに所属。話すことやピンク色のもの、スイーツが大好き。YouTubeでは、かわいいものが好きな女の子に向けていろいろな紹介動画を発信。
<取材・文/大西桃子 >
この記事を書いたのは
ライター、編集者。出版社3社の勤務を経て2012年フリーに。月刊誌、夕刊紙、単行本などの編集・執筆を行う。本業の傍ら、低所得世帯の中学生を対象にした無料塾を2014年より運営。