【変わる受験・学びの場】2022年開校の通信制高校・サポート校がすごかった
通信制高校
2022/03/16
入試シーズンもまもなく終了ですが、ここ数年で大学入試は大きく変化しているのはご存知でしょうか?
大学入試を20年前と比較すると、定番である一般入試での入学は約65%から約53%にまで減少。一方で、推薦入試は約32%→約37%、AO入試は約1%→約10%まで増加しています(※文部科学省の調査より)。
つまり、一般入試だけが大学進学の方法ではなくなってきているのです。
そんな中で、注目を集めるのが通信制高校や通信制サポート校です。
大学受験の勉強や、いろいろな体験をするために時間を割ける通信制高校は、大学のAO入試にも強く、進学塾などとも相性が良いため、塾や企業が通信制高校の開校に乗り出す事例が増えています。
それでは2022年4月に新規開設される通信制高校・通信制サポート校の中から特徴的な4校について、紹介していきましょう。
※文科省の公表資料はこちら
大学進学から起業まで!どんな進路にも役立つ力を学べるサポート校
サイル学院高等部(以降、サイル)は、コンサルティング事業を行う株式会社才流が開校するオンラインの通信制サポート校です。
全国から通える大学附属の通信制高校(八洲学園大学国際高等学校)や進学実績豊富な個別指導塾(モチベーションアカデミア)と提携していて、中学の学び直しから高校卒業、大学受験まで個別のサポートが受けられます。また、ポータブルスキル(コミュニケーション力や課題解決力、自己管理力などの総称)や起業のやり方を学べる集団授業もあるそう。
学院長の松下雅征さんはサイルの開校理由を「これまでの集団一斉型に代わる個別最適型の学校教育を届けるため」と言います。
小・中学校の不登校生徒数は現在24万人超(2021年)で過去最多となり、高等学校でも2015年以来、不登校の生徒数が増えています。文部科学省の資料によると、不登校の半数以上は「無気力、不安」が原因ですが、私は日常生活と学校生活のズレが根本的な原因だと考えています。
私たちの生活は個別最適型に変わってきていますが、学校教育はまだ集団一斉型です。そんな中、無理に合わせようとしてもうまくいかず「どうせ自分は……」と無気力になってしまったり、そもそも合わせたくはないけれど、まわりと自分が違うことに対して不安を抱く方が多いのだと思います。
そこで、新しいオンラインによる学校教育を若い世代に届けることを目指して、サイル学院中等部・高等部を開校しました。
オンラインといえども、スクール内のコミュニケーションは、テレビ電話やチャットツールを使って生徒同士おしゃべりしたり、議論したりする機会もたくさんあるそう。
「やりたいことや好きなことはわからなくても、『自分で決めた人生を歩きたい』という意志のある人に、ぜひ来てほしいです」と松下学院長。
入学試験は面談だけ。受験勉強なしで、何年生でも何月でも転入学できるとのことです。
※2023年4月24日
サイル学院高等部の提供内容が変わったため、一部内容を変更しました
大学進学に特化したサポート校で、戦略的に志望校を目指す
次は七色高等学院です。こちらは進学塾・予備校の分野で実績のある株式会社シルヴァンブリーズが設立する、大学進学に特化した通信制サポート校です。
中京高等学校(岐阜県)と提携しながら、生徒それぞれの志望に沿って、戦略的、効率的に大学受験に備えるというのが最大の目的です。
現在、20万人近い子供が通信制高校に通い、そのうちの約2割が大学に進学しています。
その中で大学受験に強い通信制への要望が増えていて、私たちが提携する中京高校にもそういった問い合わせが実際に増えています。
進学校から通信制に転入する生徒も増えていることから、あれもこれもと盛り込んだものではなく、大学進学サポートに特化した学校へのニーズを強く感じ、立ち上げに至りました。
コロナ禍で学校に通う意味がわからなくなってきている生徒も多く、また世の中でも多様性が重視されるようになって、大学進学についてもいろいろな形が認められるようになってきました。
全日制に行かなければ大学受験できないといった従来の形から、自分の志望に沿った戦略的なやり方で進学を目指すという方向に変わっていくことで、自分の時間を有効活用して個性も伸ばしていくことができると思っています。
と、代表の高木悦夫さんは話します。
七色高等学校では生徒一人一人に合わせた学習計画を立て、学習コンサルタントが毎週必ず進捗状況をチェック。目標の大学と日々の状況を加味しながら、学習計画の管理も教科指導もマンツーマンで行われ、その子の希望と能力に合わせた形で大学を目指せる点が魅力的ですね。
状況や目標に合わせてコースを選べる通信制高校
やまと高等学校は、2022年4月に開校する広域通信制高校です。
運営会社であるエネルギープロダクト株式会社は、再生可能エネルギーや資源循環型スマートコミュニティーなどの開発を通して地域創生に取り組む企業です。
この取り組みをさらに一歩先へ進めるために、学校を設立したとのこと。
校長である西泰弘さんは学校の魅力をこう説明してくれました。
本校は熊本県山都町にあり、豊かな自然に恵まれています。
歴史と伝統ある山都町をフィールドとした『総合的な探究の時間』や、ライフスキルを高めることが期待される『自立活動』、体育の専門科目、学校設定科目『文化・芸術』など、魅力あふれるカリキュラムと実力ある教師が特徴です。
さらに、熊本市、福岡市、鹿児島市にある学習等支援施設『そよ風学舎』と連携して、生徒一人一人の目標達成を支援します。 スクーリングは、山都町にある本校で実施するのですが、本校近くで本社が運営する『そよ風パーク』を宿舎として利用しますので、快適で、しかも低価格で充実した体験になると思います。
これならスクーリングも楽しみになりそうですね。
コースは、まずは高校卒業を目指す「ベーシックコース」、特技を磨く時間がたっぷりとれる「クエストコース」、大学進学を目指す「アドバンスコース」という3コースを設けて、個に応じた履修計画を立てられるとのこと。
eスポーツに特化した通信制高校も誕生!
最後に紹介するのは、渋谷に誕生するeスポーツ高等学院です。
eスポーツに特化した通信制サポート高で、NTT e-Sports、TOKYO VERDY E-SPORTSとの提携により最強のゲーム環境を整えた「シブヤeスタジアム」が本校です。
ゲーマーだけでなくプログラマーや実況解説者、ライターやデザイナーなどeスポーツ、ゲームに関連したすべての職種への道をサポートするとのこと。
eスポーツ高等学院は、産業界と学校の協力で作られた、日本初のeスポーツ専門の高校です。
ですが、入学する際にゲームやプログラムの知識などは一切必要ありません。eスポーツやゲームが好きで興味がある人ならどなたでも大丈夫です。ゲームが大好きな子に集まってほしいと思っています。
ゲームをきっかけにまた学校に通えるようになりたいという生徒さんもいますし、eスポーツをひとつのきっかけとして、新たな道を見つけてもらえればと思っています。
また、いろいろと専門的な知識がつくプログラムも用意していますので、大学への進学も可能で、ゲームだけではなく勉強もできる環境の中、メリハリをつけて指導していきます。
と、入学相談室の石原綾さんは話します。
カリキュラムは、週のうち3日間はeスポーツに特化した授業を受け、残りの2日は通信制高校を卒業するための勉強をする形。その中でプロゲーマーを目指す生徒もいれば、ゲームを巡るさまざまな職種を志望する生徒もいるという形になるとのこと。
ゲームやeスポーツを中心にいろいろな体験をして、やりたいことを見つけていくのもよさそうです。
これまでとは違った仕事・違ったビジネスが生まれていく
最後に通信制高校ナビ編集長の北澤はこう言います。
ここ数年で、子どものなりたい職業ランキングではYouTuberが上位に入るようになり、企業に属して働くこと以外にも選択肢が広がってきています。働き方が多様化する中で、起業やeスポーツ選手を目指す子どもに対して、今までは受け皿が追いついていませんでした。
しかし今、学校という形でそうした子どもたちの受け皿となっているのが、eスポーツ高等学院やサイルビジネス学院高等部のような通信制高校やサポート校と言えるでしょう。
このような学び方やサポート方法がある一方で、「新規校は学校運営歴が短いため不備が起きやすいのでは?」と心配される方もいるかもしれません。そこは事前にシステム面や入学状況などを学校に直接確認し、他の学校とも比較しながら、自分が安心できる学校かどうかを確かめることで、納得した学校選びができるのではないでしょうか。
来年2023年4月に新たな学校が開設されるというニュースも続々報道されています。
それぞれに個性を持った通信制高校・通信制サポート校が誕生している中、自分の希望に添った学校を探してみてください。
<取材・文/高崎計三>
この記事を書いたのは
高崎計三
1970年、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年に有限会社ソリタリオを設立。編集・ライターとして幅広い分野で活動中。