【アンケート調査】通信制高校のイメージは? 年代別に調査(2022年版)
通信制高校
2023/02/07
文部科学省「学校基本調査」によると、2022年(令和4年)の通信制高校に通う生徒の割合は高校生全体の約7.5%。つまり、約13人に1人が通信制高校を選ぶ時代となっているのです。
2010年と2022年を比較すると、この12年間で生徒数は127%に増加。学校数も131%に増加しました。さらには、コロナ禍において、テレワークやオンライン授業など、社会全体でデジタル化が進んだことで、学校に通って学ぶという従来のスタイルでなくても学びを継続できることが分かってきました。
このような動きがある中、通信制高校のイメージはどのようになっているのでしょうか。2021年調査の続編として、全国の15歳以上、69歳以下の300名(10代~60代まで各年代50名ずつ)を対象にアンケートをとりました。
【アンケート調査】通信制高校のイメージは? 年代別に調査(2021年版)
調査サマリー
- 20代以下の35%が身近に通信制高校へ通う生徒がいる
- 20代以下は通信制高校に対して良い印象がやや多い傾向を維持
- 50代以上の通信制高校に対する印象が好転
- 通信制高校はやりたいことに時間を使う生徒がいる印象が増加傾向
- 通信制高校の学習面・進路などに対して不安視する声も多い
20代以下の35%が通信制高校に通っている人が身近にいると回答
Q1「あなた自身やあなたの周りに通信制高校に通っている・通っていた人はいますか?」という質問に対して全体の回答では「いる」(18.33%)、「いない」(81.67%)という結果でしたが、20代以下では「いる」が平均35%となりました。
30代以上の「いる」が平均10%なのに比べて、若年層では高い割合で身近に通信制高校へ通う・通っていた生徒がいることがわかります。
通信制高校に通っている・通っていた人が「いる」の年代別割合
前出の通信制高校の生徒数が増加傾向にある中で生徒世代にあたる10代20代では「いる」が多く、これらの保護者世代にあたる40代でも少し多い傾向が見られます。
20代以下はポジティブな印象が多い傾向を維持、50代以上もイメージが好転
Q2の通信制高校のイメージについて尋ねる質問では、「とても良い」「良い」が45%、「あまり良くない」「良くない」が55%と、ほぼ半々となっています。
年代別で「とても良い」「良い」の割合を見てみると、身近に通信制高校へ通う・通っていた生徒がいる20代以下の割合は前回調査からやや減少はしているものの大きく変わっておらず、50代以上の割合が大きく伸びていました。年代での変化は見られましたが、全体としては昨年とほぼ変わっていないことがわかります。
通信制高校のイメージが「とても良い」・「良い」の年代別割合(前回比較)
やりたいことに時間を使う生徒のイメージが増加
Q3「通信制高校にはどんな生徒がいるイメージですか?(複数回答可)」という質問では、「仕事やアルバイトをしている」と回答した人が最も多く56%でしたが、前回の61.33%よりは減少しました。
一方、前回から最も増加した回答は、「やりたいことに時間を使いたい人」(28.67%)でした。
「仕事やアルバイトをしている」の年代別割合(前回比較)
「やりたいことに時間を使いたい人」の年代別割合(前回比較)
通信制高校が働きながら学ぶ生徒のイメージから、やりたいことや芸能活動など目標や夢にチャレンジする生徒のイメージへと少しずつ変わってきていると言えるかもしれません。
年代別での特徴では、30代以上は高校中退のイメージが強い傾向にあり、10代50代60代の半数以上が不登校のイメージを強く持っていることもわかりました。
「高校中退した人」の年代別割合
「不登校経験がある人」の年代別割合
自由度を評価する一方、学習面に不安の声も
Q4「あなたが思う通信制高校のイメージとして当てはまるものをすべて選んでください(複数回答可)」では、良い印象と良くない印象をそれぞれ9問ずつ設定し、回答してもらいました。
結果、全年代共通で「働きながら学べそう(37.33%)」、「自分のペースで学べそう(31%)」という印象を持っている人が多いという結果となりました。この2つは前回調査でも上位であり、「働きながら学べそう(34.33%)」、「自分のペースで学べそう(31.33%)」と、割合にも大きな変化は見られませんでした。
ほかには「入学するのが簡単そう(19.67%)」、「やりたいことに時間を使えそう(17.67%)」、「学費が安そう(17%)」という回答が多くなっています。
一方、ネガティブな印象のものでは「自分で勉強するのが大変そう(21.33%)」「進学するのが難しそう(17.67%)」といったものが多くなっており、通信制高校の入学のしやすさや自由度を評価する反面、学習に関連する部分において不安視する声が多いことがわかりました。
多様化するニーズに合わせた学びを提供する私立の通信制高校が年々増加傾向に
ここまで、通信制高校へのイメージを年代別に見てきました。前回調査から引き続き、若年層は身近に通信制高校を利用する生徒がいる割合が多く、他世代に比べても良いイメージを維持していることがわかりました。また今回新たに、50代以上の年齢層において、イメージの好転が見られました。
通信制高校ならではの自由度に期待する声が多い反面、どのように学習を進めてその先の進学につなげるのかがイメージしづらいことが数字から読み取れました。学校のシステムをより明確に伝えることができれば、通信制高校への関心度はさらに高まるかもしれません。
文部科学省のデータでは、2010年から2022年の12年間で全日・定時制高校の数は減少が続き、生徒数も約41万人減少しました。一方で、通信制高校は学校数・生徒数ともに増加傾向を維持しています。
現在、通信制高校では、アバターで登校可能なメタバースの学校が誕生したり、生徒一人一人の興味を尊重した学びや、多彩な教育を提供する学校が続々と増えています。大学進学はもちろん、芸能の分野を目指したり、ゲーム、アニメ、イラスト、ビューティーなどの自分がやりたいことを追求できる教育、一人一人に合った学びを展開するなど、今後の通信制高校はさらに生徒数が伸びていくことが予想されます。各学校は他校との違いやメリット、学校のシステムをより明確にしていくことが求められるでしょう。
保護者世代も生徒世代も「高校=全日制高校」というイメージにとらわれすぎず、将来の可能性を広げるきっかけとして、高校進学の選択肢のひとつに通信制高校も検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料)高等学校通信教育の現状について
参考ページ
- 【変わる受験・学びの場】2022年開校の通信制高校・サポート校がすごかった
- 紺野ぶるま「通信制高校に通ったことは、美談にはできない」それでも選択肢のひとつとして薦める理由
- 学校もメダルも!オリンピアを育てる通信制高校という選択肢
- 通信制高校の今を調査したら高校教育の課題が見えてきた。文科省の会議メンバーに調査結果を聞く
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「通信制高校のイメージ調査」概要
- 調査対象:全国の15歳以上、69歳以下の300名(10代~60代まで各年代50名ずつ)
- 調査期間:2022年12月19日
- 調査方法:インターネットでのアンケート調査
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この記事を書いたのは
通信制高校ナビ編集部