自分や自分の子どもが通信制高校へ入学・転入することを、「人生終わり」と感じますか?
― 通信制高校に入る、と伝えたら、友達や親、先生などから「通信制高校に行くなんて甘え」「やめとけ」などと言われ、止められてしまった。
― 誰かに責められたわけではないけれど、世間の目が気になる…。
そんな人もいるかもしれません。
また、通信制高校が、全日制や定時制よりも比較的入学しやすい環境であることから、就職や進学が難しいのではないかと将来を不安に感じて、「人生終わり」と感じる人もいるかもしれません。
ここでは、通信制高校に入学したら人生終わりなのか、事実やデータをもとに考えてみたいと思います。
(動画は2022年発表データを元に作成しています)
近年の通信制高校状況
通信制高校を選択する人は2024年時点で、高校生のうち12人に1人の割合で存在します。また、通信制の生徒数、そして学校数も増加傾向となっています。
通信制高校の生徒数
高等学校の生徒数は、以下の通りです。
課程 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
全日制課程 | 2,847,948人 | 89.5% |
定時制課程 | 70,553人 | 2.2% |
通信制課程 | 264,974人 | 8.3% |
通信制にも公立・私立がありますが、私立通信制の生徒数が大きく増加している一方、公立通信制の生徒数は徐々に減少してきています。
(出典)文部科学省「学校基本調査」
現在の日本では、約320万人が高校へ進学していますが、その中で通信制高校に通う生徒の数は約26.5万人です。40人学級の中学校なら1クラスに3人は通信制高校へ進学していることがわかります。
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通信制高校の学校数
2023年度における、高等学校の学校数は以下の通りです。
課程 | 学校数 | 割合 |
---|---|---|
全日制課程 | 4,170 | 90.2% |
定時制課程 | 173 | 3.7% |
通信制課程 | 282 | 6.1% |
学校数でも、全日制高校が9割以上となっています。
しかし、学校数の推移を見てみると、全日制・定時制課程は全体として減少傾向であるものの、通信制課程では増加傾向となってきています。
(出典)文部科学省「学校基本調査」
通信制高校卒業後の進路状況
通信制高校を卒業後の進路については、以下の通りです。
通信制課程の卒業後の状況(2022年度間) | ||
---|---|---|
大学等進学 | 24.1% | |
専修学校(専門課程)進学 | 22.7% | |
就職 | 14.9% |
(出典)文部科学省「学校基本調査」
大学・専修学校(専門学校)などへ進学している人が約半数、就職するのが約1.5割という結果になっています。全日制・定時制高校卒業者が就職する割合は、14.7%となっているので、通信制の就職率とほぼ変わらない状況です。
また、進学・就職をしない人が4割存在します。
通信制を選択する人の中には、芸能活動やアスリート・アーティスト活動といった進学・就職に結びつかない活動をする人も少なくないため、こういった人がこの4割に含まれると考えられます。
なお、通信制高校でなんとか高校は卒業したものの、その後のことを十分に考えられず進路が決められなかったという人も当然ここに含まれます。
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通信制高校が増えている理由は?
以前は通信制高校では進学や就職に不利なのではないか、不登校で行ける高校がないから…といったネガティブな理由から通信制高校を選択する人もいましたが、現在では全日制・定時制と比較して、自ら通信制高校を選択する人も増えています。
それは一体なぜなのでしょうか?
便利なオンライン授業で学べる
通信制高校、特に私立の通信制高校ではオンラインでの授業が充実しています。
いまやインターネットが使える家庭も増えており、ネットさえあれば自宅で勉強したりレポートを作成することが可能です。
体調が悪い、昼間は行きたい場所がある、やりたいことがある、といったときにも通学せずに自分の都合に合わせてオンライン学習ができることで、時間や場所の制限がなくなります。
豊富な専門コースがある
通信制高校では、一般的な高校では学べないような専門コースを用意している学校がたくさんあります。例えば美容師やトリマー、調理師などの資格を取ったり、演技やダンスを学べるコースなどが挙げられます。
都会では通える範囲の高校の中でも選択肢は多いですが、地方在住の場合、全日制・定時制では選択肢が限られますが、通信制高校であれば自分の学びたいことで高校を選ぶことができます。
進学に強い高校もある
国公立などの難関大学を目指すためのコースを用意している通信制高校もあります。
通信制高校では、柔軟に時間を使うことができるため、得意科目ではなく苦手分野だけを重点的に勉強することも可能です。
そのため、大学進学を目標に通信制高校に入学する生徒も近年は増加しています。
全日制にはない自由度の高さ
通信制高校は、登校頻度を変えることができたり、登校時間も遅めの学校が多いため、不登校や体調に不安を抱えている方でも安心して通うことができます。
校則も厳しくない学校が多いので、空いた時間にアルバイトをしたり、自由に自分のペースでスクールライフを楽しめます。
充実のサポート体制
通信制高校では、色々な活動をしたい、という意欲ある生徒を応援する仕組みがある一方で、事情があり全日制・定時制を退学したり発達障害のある生徒への対応も充実しています。
生徒が無事卒業できるよう、先生が心理系の資格を取得していたり、カウンセラーを常駐させたりして、悩みをすぐにキャッチできるようなサポート体制を作っている学校が多くなっています。
担任の先生以外も生徒と話す機会も多く、全日制高校から転入した生徒は、「先生たちがよく話かけてくれる」といった印象を持つようです。
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通信制高校に対する根深いネガティブなイメージ
通信制高校には良い点もたくさんありますが、まだネガティブなイメージを持つ人がいるのも事実です。それは一体なぜなのでしょうか?
全日制高校生と比較してしまいがち
小学校・中学校と同じような仕組みであり、大多数の人が通う「全日制高校」と通信制高校を比較してしまう人は多いかもしれません。
みんなで一緒に授業を受けて、同じ勉強をするということができないことで「自分はできないやつだ」と感じてしまうこともあるかもしれません。しかし、人には苦手なこともあり、みんなに合わせることができないからといって、それが悪いことではありません。
みんなと同じようにできないからこそ、できることもたくさんあるはずです。
「普通」じゃないと思いがち
通信制高校に行くことを普通じゃないと感じることで、普通でなくなる=人生終わりと感じる人もいるでしょう。
たしかに最もメジャーな選択肢ではないかもしれませんが、通信制高校へ進学しても大学進学や就職といったメジャー(普通)な道を選択することは可能です。
「普通」なら幸せとも言い切れませんので、その時取れる最善の選択肢が通信制高校だったと考えてもいいかもしれません。
卒業後の進学・就職に不利と思われがち
通信制高校の卒業資格は、全日制や定時制の卒業資格と全く差はありません。履歴書にも通信制課程と記載する必要はありませんので、通信制高校だからといって不利ということはありません。
通信制高校生が大事にすべきこと
全日制や定時制とは違い、自由なことが多い分、自主自立に気をつける必要がある通信制高校。具体的にはどんな点を大事にしたらよいのでしょうか。
自己管理を怠らない
中学校や全日制高校では、学校側や先生がすべての単位を管理し、日々の時間割も作成してくれます。しかし通信制高校では登校回数が少ない分、自分で勉強を進め、レポートの提出やテスト勉強をしなければなりません。
自分で締め切りに間に合うようにペース配分をしたり、学習時間を確保しなければならないため、自分のやりたいこととやるべきことを調整するスキルが求められます。
しかしこういった自己管理能力は、大学に行ってからも就職してからも役に立つはず。通信制高校といった先生のサポートが厚いうちに自分で管理するのは、良い経験になるでしょう。
目標を見つける
自己管理を行うのにも、高校卒業後の目標があるとモチベーションに繋がります。
通信制高校では自由に使える時間が多いですが、自分の目標に向かって努力する時間にもできますし、何もせずに過ごしてしまうこともできます。
いま何も目標がない、やりたいことが見つからないという人は、高校3年間を使って目標を定めることを目標にしてもよいでしょう。そのために色々なことを試したり体験してみることで自分が将来何がしたいのか、どんな仕事がしたいのかが見えてくるかもしれません。
高校卒業をあきらめない
就職の条件として「高校卒業」を求める企業はまだまだ多く、中卒は不利な状況です。
専門技能がなく社会経験がない未経験者という点では同じなのに、中卒と高卒ではなにが違うの?と思うかもしれませんが、仕事を覚えるにあたって、ある程度の学力が必要だと考える企業が多いことが理由と言われています。
また、大学や専門学校に行きたいという気持ちが今はなかったとしても、今後行きたいと考えるようになるかもしれません。しかし、中卒では大学も専門学校も受験することすらできないのが現実です。
就職をするにしても、進学を検討するにしても、高校卒業資格を取得しておけば将来の可能性を広げることに繋がります。
まとめ
人の経歴というのは、どんどん多様化しています。
転職や妊娠出産後に仕事復帰をする人も当たり前にいますし、仕事をやめて起業したり海外を旅したり留学する人など、色々な選択肢があり、そのときに必要な選択をしていくものです。
中学生・高校生はそこまで大体の人が同じルートを歩むため、全日制ではなく通信制高校といった最もメジャーとは言えない選択をすることが「普通ではない」、「人生終わり」などと感じてしまうかもしれませんが、長い人生で考えればたった3年間程度の違いです。
だからこそ、そのあと続く長い人生のために、通信制高校に通うということもひとつの選択ではないでしょうか。その選択こそが個性のひとつと言ってもいいでしょう。
それでも不安だという人は、通信制高校のことを実際に調べてみたり、学校にいる生徒や先生を自分の目で見てみることで不安や恐れも薄らいでいくかもしれません。
ぜひ資料請求をして、気になる学校には実際に足を運んでみてくださいね。
この記事を書いたのは
通信制高校ナビ編集部
「一人ひとりに最適な学校探し」をテーマに、さまざまな進路選択を考える生徒さん、親御さんに向けて、よりたくさんの選択肢を提供できるよう、通信制高校、サポート校に関連する情報を発信しています。