高校に進学した人のなかには、さまざま事情により途中で退学する人もいます。しかし残念なことですが、現代の日本において、高校を卒業しているかどうかは将来の選択肢にも大きな影響を及ぼしかねません。高校を中退した人のなかには、就職面などで苦労し、中退を後悔している人もいることでしょう。
しかし、高校を中退したからといって諦めるのは少々気が早いといえます。なぜなら高校は再入学できるからです。そこで今回は、高校を中退してしまった人が高校に再入学する方法と、できれば再入学した方が良い理由について解説します。
転入・編入と再入学の違いを理解しておこう
まず前提知識として、「転入」と「編入」、「再入学」の違いを把握しておきましょう。
「転入」とは、空白期間を設けずに、在籍していた高校と別の高校に転籍することです。つまり、退学をせずに別の高校に移ることをいいます。
一度高校を退学し、一定の期間が空いた状態で、別の高校に途中から入学する場合は「編入」。
そして、一度退学した学校に再度入学することを「再入学」と言います。
退学前に取得できていた単位は、「編入」でも「再入学」でも引き継ぐことが可能となる場合が多いです。※学習指導要領の変更などで単位が引き継げない場合もあります。
なお、「転入」の場合は空白期間がないため、同学年の生徒と同じ年度で卒業が可能ですが、空白期間がある「編入」「再入学」の場合は、同学年の生徒と同じ年度での卒業は難しくなってしまいます。
現在、高校に在学中で別の高校へ移ることを検討している人は「転入」、すでに退学している人は「編入」「再入学」での入学準備を進めることになります。
高校中退後に再入学する方法
日本には次の3種類の高等学校があり、どの学校にも再入学が可能です。
再入学を行うには、以前在学していた学校が受け入れているかが重要になります。
学校が受け入れていたとしても、退学後1~4年以内などの制限がある場合もあるため、再入学は早い方がいいでしょう。
また、学校が受け入れている場合は、1度合格しているということから面接と作文などで入学できる場合が多いようです。
ただし、過去に在籍していた学校が再入学を受け入れていない場合や、期限が切れている場合などで入れない場合は、別の学校への入学・編入を目指すことになります。
高校中退後に再入学が難しい場合の選択肢
過去に通っていた高校への再入学が難しかった場合、別の高校で卒業を目指すという方法もあります。
- 通信制高校(オススメ!)
- 全日制高校
- 定時制高校
それぞれの高校課程ごとに、特徴や入学方法・メリットなどを紹介します。
方法①通信制高校へ編入する(オススメ!)
1度高校を中退している人にオススメの入学先は通信制高校です。
通信制高校の特徴は、登校日数が少なく、学年制度がないこと。必要な登校日数は年間5回~30回程度なので、体調を崩しやすい人や登校が苦手な人、忙しい人にとって、通信制高校は通いやすいといえるでしょう。
また、通信制高校の場合は単位制を採用しているため、全日制や定時制のように決まった年数通う必要はありません。必要な単位を取得すれば卒業が可能です。
そのため、通信制高校は、定時制と同じく働きながら高校卒業資格を取得したい人や、登校に苦手意識を持つ人に向いています。
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方法②全日制高校を再受験する
全日制高校のなかには、中退者を対象に入学の募集をかける高校もあります。しかし、すべての高校で募集しているわけではなく、その数はあまり多くありません。
また、全日制高校を受験する場合は、学力テストなどに合格しなければいけません。なお編入試験は、通常の入学試験より難易度を高く設定している学校が多いため、勉強が苦手な人や中退後に長いブランクがある人にとっては、編入はかなりハードルが高いといえるでしょう。
ここで、都立高校で実施した補欠募集の試験結果を見てみましょう。
学年 | 募集人員 | 受験人数 | 合格人数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
第1学年 | 1,535人 | 135人 | 67人 | 49.6% |
第2学年 | 1,731人 | 35人 | 21人 | 60.0% |
第3学年 | 2,960人 | 1人 | 1人 | 100% |
たとえば1学年の募集人員は1,535人ですが、実際に受験した人数は135人。そのうち、合格者は60人で合格率は49.6%に留まります。
募集人数は多いものの、合格基準を満たす必要があるため合格率が高いわけではないことがわかります。
つまり、高校中退後、全日制高校に戻るのはかなり難易度が高いということ。しかし、「編入」ではなく、再度入学試験を受け直す「新入学」の場合は、合格の可能性が高まります。ただしその場合、中退したときの学年が2年生であっても3年生であっても、1年生からやり直すことになります。
方法③定時制高校へ編入する
3つ目の方法は、定時制高校への編入です。定時制高校の特徴は、1日あたりの授業時間が短く、授業の時間帯が違うことです。全日制高校の授業時間が1日5~6時間に対し、定時制高校は4時間程度。なかには朝や昼に授業を行っている高校もありますが、夕方から夜にかけて授業が行われることが一般的です。入学には全日制高校のような難しい学力テストもありません。
年間約3万円~35万円程度の学費がかかりますが、就学支援金という制度もあり、家庭の経済状況によっては、国からの補助を受けられます。定時制高校を卒業したあとに大学進学を選択する人は約1割程度と少数派です。
授業時間の長さや通学の時間帯などの特徴から、定時制高校は、仕事をしながら通う人や就職のために高校卒業の資格を取得したい人におすすめです。
定時制・通信制へ編入・入学するメリット
高校中退した人にとって、定時制・通信制高校への編入・入学のメリットは以下の3つがあります。
- 高校中退者を受け入れる体制がある
- 中退した前の高校の単位を引き継げる
- 仕事ややりたいことと勉強を両立できる
それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
メリット①高校中退者を受け入れる体制がある
高校中退者にとって、全日制高校への編入はハードルが高く、門戸が狭いのが現実です。再度高校へ入学する場合も、入学試験のための勉強が欠かせません。
一方、通信制高校や定時制高校は編入・入学において難しい学力テストがない学校が多いため、ハードルが低く、高校中退者の在校生が多くいます。
中退者の母数が多いことから、学校の中で浮くということもあまりありません。
同じ境遇の人も多いので、全日制高校では上手く人間関係を築けなかった人でも、通信制高校や定時制高校では多くの友達ができ、学校に通うのが楽しくなる、といったケースが多く見られます。
メリット②中退した前の高校の単位を引き継げる
定時制高校や通信制高校に編入するときは、現役時代に在籍していた高校で取得した単位を引き継ぐことが可能です。
新たに入学する場合と比較すると、卒業までの期間を短縮できるため、学費もおさえられます。ただし、単位を引き継ぐには「単位修得証明書」が必要です。「単位修得証明書」は、在籍していた高校に申請すれば発行してもらえます。
学年制の学校から単位制の定時制高校へ編入する場合、3年生のときに中退したら2年生修了時の単位数を、2年生で中退した場合は、1年生修了時の単位を引き継げます。しかし、1年生で中退した場合は、すべての単位が未修得になり、再度1年生からやり直しとなるので注意しましょう。
メリット③仕事ややりたいことと勉強を両立できる
全日制高校の場合は、日中に授業があるため、昼間に仕事をしている人は退職することになります。その点、夜間にも授業がある定時制高校や、自宅学習がメインの通信制高校であれば、仕事を辞めることなく高校で学ぶことが可能です。
また、定時制高校の場合は、朝や昼に授業を行っているところもあるため、生活スタイルに合わせて通学することが可能です。
通信制高校の場合は、自宅学習が基本で年に数回のみ登校すれば良いという学校もあるため、より仕事と勉強を両立しやすい環境が整っています。
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編入できるのはいつ?
基本的に学期の切れ目に編入することになります。通信制高校は4月始まりと10月始まりの二学期制を採用している学校が多いため、ほとんどのケースで4月、10月入学となるでしょう。募集期間は、4月入学の場合は1~3月、10月入学の場合は7~9月が一般的です。
高校中退しても編入・再入学をする方が良い理由
高校中退後は次のような理由から、できれば高校を卒業することをおすすめします。
- 最終学歴が「中卒」ではなくなる
- 進学先の選択肢が広がる
- 就職先の選択肢が増え、収入が増える
これらの理由について、詳しく解説していきます。
最終学歴が「中卒」ではなくなる
文部科学省によると、高校進学率は97%以上。そのうち中退する人もいるにはいますが、ほとんどの人が高卒以上の学歴を持っていることになります。このことから、最終学歴が「中卒」の人は少数派であることがわかります。
良くないことではありますが、未だに学歴による偏見が横行しているため、中卒だと気分を害す場面に遭遇することも考えられるでしょう。このことから、中卒であることにコンプレックスを持っている人も珍しくありません。
しかし、高校に編入・再入学して卒業すれば最終学歴が「高卒」になります。偏見やコンプレックスから解放され、社会での生きやすさも違ってくるため、中退した場合でも高校卒業しておくに越したことはありません。
進学先の選択肢が広がる
基本的に、短大・大学・専門学校に進学するためには高校卒業資格が必要です。大学や短大、専門学校などではより高度な知識やスキルを身につけられるため、就職においても選択肢が増えます。また学業だけでなく、進学先が選べることによって、視野が広がることも考えられるでしょう。
ちなみに高校に再び入学しなくても、高卒認定試験に合格すれば高校卒業と同等の資格をもらえるので、短大・大学・専門学校への進学は叶います。高卒認定試験に関しては後述しているので、そのまま読み進めてください。
就職先の選択肢が増え、収入が増える
ほとんどの求人では、学歴が「高卒以上」に限定されています。中卒にはそもそもチャレンジ権が少ないうえに、中卒を採用してくれる企業は限定的。さらに正社員で採用してくれるところも少ないため、給料が低い傾向にあります。
しかし、高卒資格を取得することによって、応募できる職種、業種、企業の幅が広がります。その結果、収入が増えることも期待できるでしょう。
現代の日本において、「給料・キャリア・福利厚生などその他の待遇」など、総合的に見ても非正規雇用よりも正規雇用が優遇される傾向にあるので、正社員採用の可能性が高い高校卒業の資格は取得した方が良いと言えるでしょう。
高卒認定試験という方法もある
高校中退後、「高卒認定試験」に合格すれば、高校卒業と同等の資格をもらえるため、わざわざ高校へ編入・再入学をせずとも大学や専門学校を目指せます。「高卒認定試験」とは、高校卒業の者と同等以上の学力があると認定される試験のことで、一般的には何らかの事情により高校を卒業できなかった方のために行われる試験です。
ただし、試験に合格しても「高校卒業資格」を得ることはできず、最終学歴は「中卒」のままです。履歴書には「高卒認定試験合格」と記載することになります。
高卒認定試験に合格することで、大学や専門学校の受験資格を得られるので、高校に編入・再入学はしたくないけれど、大学や専門学校に進学したい人にはこの「高卒認定試験」がおすすめです。ちなみに、高卒認定試験は各科目で100点満点中40点を取得すれば合格できるので、勉強が苦手な人でも比較的合格しやすいでしょう。
まとめ
高校中退後は、高校に編入・再入学する方法を紹介しました。
自分が在学していた高校に再入学することは可能ですが、学校側の受け入れ状況、募集期限などのハードルがあります。
全日制高校は、中退者への再募集を行っている学校は一部であり、学力テストも難しいのでこちらもかなり高いハードルを越える必要があります。
これに対して、定時制高校・通信制高校は入学テストの難易度も低く、高校中退経験者も多いため、編入や再度の新入学もしやすいといえるでしょう。ただし、定時制高校の場合は募集人員が少ないうえに学校によっては夜間に通うことになる点には注意が必要です。
また、学校に行きたくない人には「高卒資格」と同等の資格を得られる「高卒認定試験」を受けるのも手です。高校中退後もさまざまな選択肢があるので、自分に合った方法や学校を見つけて、高卒資格の取得にチャレンジしてみてください。
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この記事を書いたのは
通信制高校ナビ編集部
「一人ひとりに最適な学校探し」をテーマに、さまざまな進路選択を考える生徒さん、親御さんに向けて、よりたくさんの選択肢を提供できるよう、通信制高校、サポート校に関連する情報を発信しています。